究極リサイクル 排泄物からおいしい水 「夢の装置」ビル・ゲイツ氏が普及に尽力
新型の廃棄物処理装置「オムニプロセッサー」を使い、人糞から作った飲料水を飲み干すビル・ゲイツ氏。人類の環境・衛生問題が一気に解決されるかも知れない…
米マイクロソフト(MS)の創業者で慈善事業に力を入れているビル・ゲイツ氏(59)が、人の排泄(はいせつ)物(糞(ふん))から飲料水や電力を生み出す廃棄物処理装置の普及に乗り出した。装置を開発した米シアトルの企業に出資するなど全面的にバックアップ。この処理装置で実際に作った水をおいしそうに飲み干すパフォーマンスも行い、PRに努めている。今年後半には世界最貧国のひとつである西アフリカのセネガルで試験運転を始めるという。途上国で環境・衛生面で深刻な問題となっている排泄物の処理と、不足している安全な飲料水の確保を一挙に解決する夢の装置として大きな期待を集めている。
電力も生み出す
「ペットボトルの水と同じくらいおいしい。私なら毎日、喜んで飲みますよ。安全ですしね」
ゲイツ氏は自らのブログに、排泄物から作られた水をおいしそうに飲み干し、こうコメントする映像を公開。ブログに、「ベルトコンベヤーに乗った排泄物の山が巨大な瓶に落ちていくのが見えた。それらは機械の中を通り加熱処理され、数分後、私は1杯のおいしい水を味わった」とつづった。
「オムニプロセッサー」と名付けられたこの装置を開発したのは、シアトルにあるエンジニアリング会社「ジャニッキ・バイオエナジー」。
米CNNテレビなどによると、この装置は1000度の超高温で排泄物を焼却処理し、水と電力を作り出すことができる。しかも焼却時の熱を利用した蒸気エンジンが装置自体の動力源になっている。
ゲイツ氏は「次世代モデルはさらに先進的で、10万人の排泄物から8万6000リットルの水と250キロワットの電力を生み出すことができる」と説明した。
年内に試験運転
ゲイツ氏によると、貧困国を中心に全世界で20億人が衛生的なトイレを利用できず、衛生面での問題から毎年70万人の子供が死亡している。
そこで、「こうした問題は西洋式のトイレの導入では解決できない。途上国では下水の処理プラントや大規模なインフラ整備が必要だからだ。そのためわれわれは数年前から全く新しい解決法の構築に取り組んできた」という。
1994年に自身と妻らで設立した「ビル&メリンダ・ゲイツ財団」がジャニッキ社に出資するなどで全面的なバックアップを続け、実用化にこぎ着けた。
今年後半には、セネガルの首都ダカールで試験運転を開始する。軌道に乗れば他の途上国でもパートナーを探し、普及させたい考えだ。装置の部品の製造・供給を担う企業も発掘していきたいという。
「暮らし豊かに」
米経済誌フォーブスが発表している長者番付で、2014年も純資産が760億ドル(約9兆円)でトップに立ったゲイツ氏は、この装置で人々の暮らしを豊かにすることをライフワークと位置づけている。
ゲイツ氏はブログにこう記した。
「普及するまで何年もかかるかもしれないが、この装置は人間の排泄物を真に市場価値ある商品に作り変えることができる。まさに『ある人にとってはゴミだが、別の人にとって宝である(捨てる神あれば、拾う神あり)』という古い例えの究極例だ」2015.1.10 11:30 産経
0 件のコメント:
コメントを投稿