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2020年9月2日水曜日

神経機能を回復

 人工的なたんぱく質を注射で神経機能を回復 マウス実験で成功

人工的に作り出したたんぱく質を注射することで、切れてしまった神経の機能を回復させることに、慶應義塾大学などのグループが、マウスを使った実験で成功したと発表しました。グループでは「安全性や効果についての確認をさらに進め、脊髄損傷やアルツハイマー病などの治療薬開発につなげたい」と話しています。

 

この研究は、慶應義塾大学の柚崎通介教授と愛知医科大学などのグループが行ったものです。

グループは、神経細胞が情報を伝達する「シナプス」と呼ばれる部分で、神経細胞どうしを結び付ける特殊な分子に注目し、この分子を元に「CPTX」という人工的なたんぱく質を合成しました。

 

そして、脊髄損傷のため後ろ足がまひして歩けなくなったマウスに、このたんぱく質を注射したところ、2か月ほどで、まひしていた後ろ足の動きが、正常なマウスの8割程度まで改善し、歩けるようになったということです。

 

また、脳の神経が損傷するアルツハイマー病を再現したマウスの脳に、このたんぱく質を注射したところ、記憶力が改善することも分かったということです。

グループでは、このたんぱく質は、けがや病気などで損傷した神経の情報伝達の回路を回復させる働きがあるとしています。

研究を行った柚崎教授は「今後、安全性や効果をさらに確認したうえで、治療が難しい脊髄損傷やアルツハイマー病など、人の治療につなげていきたい」と話しています。2020年9月2日 3時48分 NHK 

2020年7月18日土曜日

金属「食べる」細菌

金属「食べる」細菌、米研究者が偶然見つける 長年の仮説を裏付け
*新たに見つかった細菌によって作られた酸化マンガンのノジュール(団塊)/Hang Yu/Caltech
(CNN) 米国の細菌学者らがこのほど、金属のマンガンを「食べて」カロリーを得ている細菌を偶然発見した。そのような細菌が存在するのではないかという説は100年以上にわたり唱えられてきたが、これまで証明されたことはなかった。

米カリフォルニア工科大学で環境細菌学を専攻するジャレッド・リードベター教授は、ある実験のため粉末状になった金属元素のマンガンを使用した。実験の後、同教授はマンガンにまみれたガラス容器を水道水で満たし、研究室のシンク内に放置。そのまま学外での活動に出かけて数カ月戻らなかった。
数カ月ぶりに研究室に戻ったリードベター教授は、ガラス容器が黒ずんだ物質に覆われているのに気が付いた。最初はそれが何なのか見当もつかなかったが、かねてから探し求めていた細菌によるものかもしれないと思い、系統立ったテストをして確かめることにしたという。

その結果、容器を覆った黒ずんだものは酸化マンガンで、新たに見つかった細菌によって作り出されていたことが分かった。この細菌は、現地の帯水層からくみ上げた水道水の中にいた公算が大きいという。
研究者らはこの細菌について、14日刊行のネイチャー誌の中で、マンガンをエネルギー源として利用することが確認された初めての細菌だと説明。自然界の細菌はたとえ金属のような物質であってもこれを新陳代謝させ、細胞に必要なエネルギーを引き出すことができるとの見解を示した。

新たな研究では、この細菌がマンガンを使って化学合成を行えることを突き止めた。化学合成とは、細菌類が無機物の酸化により生じるエネルギーを用いて二酸化炭素から有機物を合成する働きを指す。
さらにリードベター教授は、酸化マンガンが水道管を詰まらせる環境工学上の問題にも言及。これまで細菌の活動が原因と考える研究者は多かったが、その裏付けとなる証拠は得られていなかったと述べた。2020.07.17 Fri posted at 18:28 JST CNN

2020年6月6日土曜日

巨大ウイルス出現、揺らぐ常識 新生命体へ進化?

巨大ウイルス出現、揺らぐ常識 新生命体へ進化?
ウイルスは小さくて単純――。こんなウイルスの定義が揺らいでいる。21世紀に入り、ケタ違いに大きく複雑な構造を持つ「巨大ウイルス」が相次ぎ見つかったためだ。微生物の細菌をはるかにしのぐ巨体に、生物の細胞だけにあるはずの膜や多数の遺伝子を持つ。常識を覆す異形ぶりに研究者は困惑気味だ。巨大ウイルスが進化すれば、やがて想像を超えた生命体が誕生するとの見方も出ている。
1992年、英国の病院で捕らえたアメーバに何かが感染していた。ありふれた顕微鏡で見ると、大きさは750ナノ(ナノは10億分の1)メートル。「細菌だね」。研究者は地名からブラッドフォード球菌と名付けた。

状況が一変したのは2003年だ。さらに細かく見える電子顕微鏡での解析が進むとウイルスに形が似ており、「正20面体」をしていた。国際科学誌に「ウイルスだった」とする論文が載った。細菌と見間違えるくらいの大きさだったので、英語の「ミミック(似る)」にちなんで「ミミウイルス」と名前がついた。

従来のウイルスは大きくても200ナノメートル程度だった。小さいが故に自活できず、細菌のような生物とはみなされなかった。巨大なミミウイルスは、「無生物」のウイルスと、生物の境界を揺るがした。
大きいだけでなぜ騒ぐのか。クジラやゾウは体格が良くても「生物とは違う」とはならない。ウイルスで大きさが重要なのは、大きすぎると「定義」に反するためだ。

ウイルスは1890年代、細菌が通れない「ろ過器」の穴をすり抜ける謎の病原体として見つかった。正体はタバコやウシに感染するウイルスだった。
電子顕微鏡でウイルスを詳しく観察できたのは1930年代。ウイルスは「小さい」が代名詞であり、ミミウイルスの大きさは規格外だ。

さらに研究者に衝撃を与えたのが、その異形ぶりだ。遺伝物質のDNAを脂質の膜で包み、外側を3重の殻で覆う。表面に繊維まで生えていた。ふつうのウイルスは遺伝物質を殻で包んでいるだけだ。
神戸大学の中屋敷均教授は「ゲノム(全遺伝情報)や遺伝子の数でも一部の細菌を上回る」と話す。遺伝情報量は約120万塩基対と、「マイコプラズマ」という小ぶりな細菌の2倍もある。

*巨大ウイルスの「パンドラウイルス」(東京理科大学提供)

13年に楕円の一方が1000ナノメートルの「パンドラウイルス」、14年に1500ナノメートルもある「ピソウイルス」と巨大ウイルスの発見が続いた。パンドラウイルスの遺伝情報量は約250万塩基対と、ついに細胞に核を持つ「真核生物」で最も小さな種を上回った。

遺伝情報量の多さがどんな能力に関わっているかは不明だが、一部は生物に肉薄している。ウイルスは自力で増殖できない。生物との差がそこにある。だが、増殖に役立つ20種類の遺伝子を全て備えた巨大ウイルスも見つかった。
「免疫」を持つ種類もいた。「バイロファージ」という外敵のDNAの一部を取り込み、再び寄生してくるとそのDNAを切って退治しているようだ。細菌や古細菌が持つ免疫の仕組みにそっくりだ。
東京理科大学の武村政春教授は「たんぱく質合成の場になる遺伝子さえ持てば、巨大ウイルスは新たな生物になるかもしれない」と語る。
それにしても巨大ウイルスはどう生まれたのか。武村教授は「感染した生物から、遺伝子を次々と奪ってきたとする見方が多い」と話す。生物の細胞で自らを増やす際、生物のDNAを取り込んで巨大化したという説だ。謎も残る。武村教授が発見した巨大ウイルスに「メドゥーサウイルス」がいる。ウイルスなのに、複雑なDNAを折り畳むためのたんぱく質を作れる。ヒトなど真核生物にも同様のしくみはあるが、ウイルスが先に「発明」した可能性も指摘されている。

巨大ウイルスは既に100種類以上が知られる。その発見は「ウイルスを生物として認めるべきだ」という論争を巻き起こした。支持派は大きさや複雑さを強調し、反対派は「自力で増えず、生命を維持する化学反応も起こせない」と反論する。中屋敷教授は「ウイルスも子孫を残し、進化する。生物のような細胞を持たなくても、『生命』と呼べるのではないか」と話す。生物とそれ以外の境界線をどこに引くか。巨大ウイルスが生物の再定義を迫っている。(草塩拓郎)2020/6/6 2:00日本経済新聞 電子版

2020年2月28日金曜日

宇宙観測史上最大の爆発を確認


宇宙観測史上最大の爆発を確認、巨大ブラックホールが原因と天文学者

*ブラックホールによるものとみられる観測史上最大規模の爆発が起きたことがわかった/S. Giacintucci, et al./NRL/CXC/NASA
(CNN) 地球から3億9000万光年離れた宇宙で、ブラックホールによるものとみられる観測史上最大規模の爆発が起きたことがこのほど明らかになった。
爆発により、当該の空間に存在する高温のガスには火山の噴火に伴うクレーターに相当する痕跡が出現した。米海軍調査研究所の天文学者によれば、宇宙最大の爆発で生まれたこの「クレーター」は、天の川銀河15個分の大きさだという。
爆発は、へびつかい座銀河団の中心で発生した。銀河団は宇宙で確認されている中で最も大きい構成単位であり、そこでは重力の影響によって数千個に及ぶ銀河の集団が形成されている。

天文学者らは、ある大型の銀河の中心部分に位置する超大質量ブラックホールが今回の爆発を引き起こしたとみている。この銀河は、銀河団全体の中心付近に存在しているという。
ブラックホールには物質をのみこむだけでなく、それらを吹き飛ばす働きもある。通常それは、物質の噴出や放射という形態をとる。今回の爆発の規模は、これまで最大にして最も強力とされていた爆発の5倍に達したとみられる。

天文学者らは、NASAのチャンドラX線観測衛星やオーストラリアの電波望遠鏡MWAなど、地上と宇宙で運用する複数の望遠鏡を駆使して爆発を観測した。
2016年にもチャンドラX線観測衛星を使った観測で、同じブラックホールからの物質の噴出でできたとみられる「空洞」が見つかっていた。しかしこの時は、空洞のあまりの大きさから、ブラックホールが原因とは考えにくいとする結論が出ていた。2020.02.28 Fri posted at 12:30 JST

2020年2月14日金曜日

探査機史上最も遠い天体


探査機史上最も遠い天体、観測データを公開 太陽系の起源に迫る
*天体「アロコス」の詳しい観測データが発表された/NASA/Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory/Southwest Research Institute/Roman Tkachenko
(CNN) 人類が宇宙探査機で到達した中で最も遠くにある天体について、詳しい観測データが13日に開かれた米科学振興協会の年次会合で明らかにされた。データの詳細な分析を通して太陽系の起源に関する知見が深まると研究者らは期待を寄せている。
この天体は地球から約64億キロ離れた冥王星以遠のカイパーベルト天体内に位置する。昨年1月、米航空宇宙局(NASA)の無人探査機「ニューホライズンズ」が天体へのフライバイ(接近通過)に成功した。
当初は「ウルティマトゥーレ」と呼ばれたこの天体だが、昨年11月に「アロコス」と改名されていた。NASAによれば「アロコス」という語は、ネイティブアメリカンの複数の部族の言葉で「空」を意味する。

別々に形成された2つの天体が1つに合わさった形状のアロコスは、惑星の形成過程でできる「微惑星」と呼ばれる小天体に属する。探査機から送られた画像はそれぞれの天体がパンケーキのように平べったいことを示しているが、見方によってはピーナッツや雪だるまにも似ている。大きさは米国のシアトルの面積と同程度で、数十億年を経てもその姿はほとんど変わっていないとみられる。
研究者らによると、アロコスの表面は凍結したメタノールと特定できない複雑な有機分子に覆われている。赤茶けた色をしているのは、これらの有機分子が原因である公算が大きい。他の天体が衝突した跡とみられるクレーターも数多く見つかっており、このうち最大のものは直径が約6.9キロある。
ニューホライズンズの調査員を務めるウィリアム・マッキノン氏はアロコスについて、上記の2つの天体が「激しく衝突して現在の形状になったというよりは、むしろ複雑なダンスを踊るように互いの周りをゆっくりと回りながら一体化していったようだ」と指摘する。今回入手できたデータの分析により、そうした天体の成り立ちを想定することも可能になったという。2020.02.14 Fri posted at 14:55 JST

太古の西アフリカに「幻の人類」


太古の西アフリカに「幻の人類」、証拠見つかる 現代人のDNAにも痕跡
*「幻の人類」がアフリカ西部に住んでいたとする調査結果が発表された/Getty Images
(CNN) 進化の系統から枝分かれした「幻の人類」に関して、かつてアフリカ西部に暮らしていたことを示す証拠がこのほど明らかになった。謎に包まれたこの人類は現生人類とも交流し、その遺伝子の一部は現代のアフリカ人に受け継がれているという。

学術誌「サイエンス・アンド・アドバンシーズ」に掲載された調査結果によると、この「幻の人類」はネアンデルタール人よりも早い時期に現生人類の系統樹から枝分かれしたとみられる。米カリフォルニア大学の研究者らは、枝分かれの時期を36万~100万年前としている。
アフリカ西部に住んだこれらの人類は現代のアフリカ人の祖先と交流し、子孫を残していた。ちょうどネアンデルタール人が現代の欧州人の祖先との間で子孫を残していたのと同じ状況だったと考えられる。
遺伝学者がコンピューター技術を使って現代人のDNAを解析したところ、現代の西アフリカ人につながる祖先の遺伝子のうち2~19%はこの人類のものが占めていることがわかったという。

英リバプール・ジョン・ムーアズ大学のジョエル・アイリッシュ教授はCNNの取材に答え、当時は異なる遺伝的特徴を持つ人類が数多く存在していた可能性があると指摘。「どの人類も互いに交わろうとする傾向がある。こうした『幻の人類』は今後も次々に見つかると考えられる」と述べた。
欧州、アジア、米州では、人類の祖先がネアンデルタール人との間に子どもをもうけていたという証拠が2010年に初めて提示された。先月には、アフリカ人のDNAにもネアンデルタール人の痕跡が残っているとする研究論文が学術誌に掲載されていた。2020.02.14 Fri posted at 12:00 JST

2020年2月12日水曜日

宇宙から届く謎の電波信号


宇宙から届く謎の電波信号、16日周期で反復と研究者
*5億光年の宇宙から反復して届く電波信号に16日間の周期性があることが分かった/Courtesy CHIME

(CNN) 5億光年離れた宇宙から地球に放射される高速電波バースト(FRB)について、研究者らがこのほど、約16日間の周期で繰り返し起きていることを突き止めた。単発で終わらず反復するFRBの存在はこれまでにも知られていたが、研究者が周期のパターンを明らかにしたのは初めて。

FRBは1000分の1秒単位の非常に短い時間で電波が銀河系外から放出される現象。今回研究者らがカナダにある電波望遠鏡「CHIME」を使って2018年9月16日から19年10月30日まであるFRBのパターンを観測したところ、16.35日の頻度で発生していることがわかった。
観測データによると、この発生源は4日の間1時間に1~2回電波を放射した後、12日間の沈黙を経て再び信号を発する。この16日間の動きに周期性が認められるという。

FRB 180916.J0158+65と呼ばれるこの信号は、同プロジェクトが昨年観測した反復するFRBの発生源8つのうちの1つ。研究者らはこれらの発生源をたどることでFRBという現象のメカニズムを明らかにしたいとしているが、ここまでの観測では共通の発生源が確認されておらず、謎は深まるばかりだ。

反復するFRBで初めて観測された FRB 121102は、矮小(わいしょう)銀河の1つを発生源として特定したが、今回のFRB 180916は、天の川銀河に似た別の銀河の腕を発生源にしているとみられる。
研究者らは複数の論文の中でFRB発生のメカニズムについて、恒星による軌道運動や、中性子星とペアになるOB型恒星の相互作用に起因する可能性を示唆する。超新星爆発の後に残る中性子星は宇宙で最小の天体ながら、太陽よりも大きい質量を有する。一方のOB型星は高温かつ巨大な、寿命の短い恒星で、この星から発せられる恒星風がFRBの持つ周期性の要因とも考えられるという。2020.02.12 Wed posted at 16:00 JST

2020年1月15日水曜日

隕石の中から50億年前の物質


隕石の中から50億年前の物質、地球上で見つかった固体で最古
(CNN) 50年前にオーストラリアに落下した隕石(いんせき)を調べていた米国の研究チームが、隕石の中から50億年~70億年前の宇宙で形成された物質を発見したと発表した。地球上で見つかった固体の中では最古の物質になるとしている。
太陽が誕生したのは46億年前とされ、今回見つかった物質は太陽や太陽系よりも古くから存在していたと推定される。こうした物質はプレソーラー粒子と呼ばれる。

隕石はスターダストなどの物質を閉じ込めるタイムカプセルの役割を果たすことがある。地球に落下した隕石のうち、プレソーラー粒子が含まれるのはわずか5%にとどまる。
この研究結果は米シカゴのフィールド博物館が、13日の米科学アカデミー紀要に発表した。
同博物館学芸員のフィリッピ・ヘック氏は今回見つかった物質について、「銀河系の星々がどのように形成されたのかを物語る」と解説する。
*プレソーラー粒子の拡大像。大きさは約8マイクロメートルだった/Courtesy Janaína N. Ávila

隕石は1969年に採集されたもので、研究チームはこの隕石からプレソーラー粒子を分離することに成功した。粒子の大きさはおよそ8マイクロメートルと極小で、年代は46億年~49億年前のものが多数を占め、一部は55億年以上前のものだった。

「我々の仮説では、こうした46億年~49億年前のプレソーラー粒子の大部分は、恒星の誕生が盛んだった時期に形成された。太陽系の創生前に、普通よりも多くの恒星が誕生した時代があった」(ヘック氏)
専門家の間では、銀河系の恒星は一定の間隔で形成されたという説と、形成が多い時期と少ない時期があったという説がある。しかしヘック氏は、「隕石からの試料によって、私たちの銀河系で70億年前に恒星が盛んに形成された時期があったことを直接的に裏付ける証拠を手にした」としている。2020.01.14 Tue posted at 12:05 JST

2020年1月7日火曜日

「宇宙人は存在する、地球にいる可能性も」


「宇宙人は存在する、地球にいる可能性も」 英国初の宇宙飛行士が断言
*英国初の宇宙飛行士のひとり、ヘレン・シャーマン氏。英紙のインタビューに「宇宙人は存在する」と断言した/Jack Taylor/Getty Images Europe/Getty Images
(CNN) 宇宙人は間違いなく存在する。地球上で人類に紛れ込んでいるかもしれない――。英国初の宇宙飛行士の1人だったヘレン・シャーマン氏が、英日曜紙オブザーバーのインタビューの中で、そんな見解を明らかにした。
シャーマン氏は1991年、当時のソ連の宇宙ステーション「ミール」を訪問した元宇宙飛行士。5日のオブザーバー紙のインタビューの中で、「宇宙人は存在する。それは間違いない」と断言した。

「宇宙には何十億という星が存在している。従って形態の違うあらゆる種類の生命が存在するはずだ」「あなたや私のように炭素と窒素でできているかもしれないし、そうではないかもしれない」。シャーマン氏はそう語り、「もしかしたら彼らは今、まさにここにいて、私たちには見えないだけかもしれない」と言い添えた。
化学者のシャーマン氏は、英国人として初めて宇宙へ飛行した7人のうちの1人だった。当時の年齢は27歳。最年少級の宇宙飛行士として、宇宙に8日間滞在した。

オブザーバーのインタビューでは、「英国初の女性宇宙飛行士」と形容されることに苛立ちを感じるとも打ち明け、「実際のところ、私は初の英国人(宇宙飛行士)だった。(女性という形容は、)そうでなければ男性と想定されてしまうことを物語る」と指摘している。
宇宙人の存在を信じているのはシャーマン氏にとどまらない。米国防総省が極秘で行っていた未確認飛行物体(UFO)調査プロジェクトにかかわった元高官は2017年、宇宙人が地球に到達した証拠はあると確信すると語っていた。2020.01.07 Tue posted at 10:21 JST

2019年11月19日火曜日

生命の起源、宇宙から飛来?


生命の起源、宇宙から飛来?隕石に遺伝物質の材料…40億年以上前に作られた可能性
*マーチソン隕石の一部。縦の長さが約2センチ(古川准教授提供)
 生物の遺伝情報を伝えるRNAの骨格を作る糖「リボース」を、隕石いんせきから初めて検出したと東北大などが発表した。過去にも隕石から糖が発見された例はあるが、生命の誕生に欠かせない種類の糖は初めてという。生命の起源となった物質が宇宙から飛来したとする説を裏付ける新たな証拠だとしている。論文が19日、米科学アカデミー紀要に掲載される。

 東北大の古川善博准教授や米航空宇宙局(NASA)などで作るチームは、1969年にオーストラリアに落ちたマーチソン隕石など3種類の隕石を分析した。
 その結果、マーチソン隕石と2001年にモロッコで見つかった隕石からリボースを発見。リボースに含まれる炭素原子の特徴を分析したところ、この分子が地球由来ではないことが確認できた。40億年以上前の太陽系誕生初期に作られ、隕石とともに地球に飛来したとみられる。

 生命を構成する物質の由来を巡っては、地球外から飛来したという説と、地球で作られたとする説がある。これまでの隕石の分析で、RNAの材料となるリン化合物などは見つかっていたが、糖は見つかっていなかった。
 地球外の有機物に詳しい東京薬科大の山岸明彦名誉教授は「欠けていた部分を埋める重要な成果。宇宙にRNAを作る材料があったと証明された」と話した。
 ◆RNA=生き物で遺伝情報の伝達やたんぱく質の合成の際に使われる鎖状の分子。糖「リボース」に別の有機化合物やリン化合物が結合した構造を持つ。 2019/11/19 07:15 読売

2019年10月31日木曜日

2つの銀河が衝突


「不気味な顔のような天体」実は2つの銀河が衝突…見える期間は1億年
不気味な顔のように見える天体(NASA、欧州宇宙機関など提供)
 31日のハロウィーンに合わせ、米航空宇宙局(NASA)は、ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた、不気味な顔のように見える天体の画像を公開した。
*撮影は今年6月。NASAによると、「顔」の正体は、地球から約7億光年離れた場所で衝突している、同じようなサイズの二つの銀河。目のような部分はそれぞれの銀河の核、顔の輪郭のように見える部分は若い星などの集まりだという。輪郭部は銀河同士が特定の方向で衝突した時だけ現れ、顔のように見える期間は約1億年に及ぶという。
 NASAはホームページで「貫くような『目』は異世界の生き物のようですが、幽霊ではありません」と紹介している。2019/10/31 18:35 読売

2019年10月19日土曜日

性別は720種類、脳がないのに学習 特異な生命体


性別は720種類、脳がないのに学習 特異な生命体、パリ動物園で一般公開
学習し自己増殖する奇妙な生き物「モジホコリ」、仏動物園で一般公開
(CNN) 明るい黄色をしていて、時速4センチの速度ではうことができ、脳がなくても問題を解決でき、半分に切断されても自己修復できる――。そんな特異な生命体が、フランスのパリ動物園で19日から初めて一般公開される。

この生命体は、単細胞の粘菌の一種モジホコリ(学名フィサルム・ポリセファルム)。植物でも動物でも菌類でもなく、性別はオスとメスの2種類ではなく720種類もある。分裂して別の個体になったり、融合して元に戻ったりすることもできる。
10億年ほど前から存在していたと思われるが、1973年5月、米テキサス州の民家の庭で増殖しているのが発見されてセンセーションを巻き起こした。

2016年には英王立協会紀要に論文が発表され、学会で脚光を浴びた。フランスの研究者によれば、モジホコリは学習して有毒物質を避ける能力があり、1年たってもその行動を覚えていることが分かった。
パリ動物園の研究によれば、迷路を抜け出す最短距離を発見したり、環境の変化を予測するといった問題解決能力も持っているという。
同動物園のモジホコリは、シャーレの中でオートミールを与えて培養し、一定の大きさになったところで樹皮に移し、テラリウム容器に入れて展示する。「アカシアの木やオークの樹皮、クリの樹皮を好む」という。
野生のモジホコリは欧州の森林の地面に生息していて、気温19~25度、湿度80~100%の環境で繁殖する。天敵は光と乾燥のみ。ただし生存が脅かされると何年もの間冬眠することもできるという。CNN 2019.10.18 Fri posted at 11:20 JST

「超計算」人類の手中に グーグル実証か


「超計算」人類の手中に グーグル実証か
人工知能(AI)などに続く革新的技術として期待される量子コンピューターが「スーパーコンピューターを超える日」が近づいてきた。米グーグルは、理論上の概念だった性能を実証し、最先端のスパコンで1万年かかる問題を瞬時に解く実験に成功したもようだ。米IBMなども研究に力を入れる。急速な進歩はいずれ人類にこれまでにない計算パワーをもたらす。AIの活用や金融市場のリスク予測などを通じ、社会にディスラプション(創造的破壊)を起こす可能性を秘める。
グーグルが「量子超越」を達成したもようだ――。英フィナンシャル・タイムズは9月、こう報じた。日本経済新聞が入手した資料によると、最先端のスパコンでおよそ1万年かかる計算問題を、同社の量子コンピューターが320秒で解いたという。

量子超越は、従来のコンピューターでは困難な計算問題を量子コンピューターが解く性能を指す。理論上はスパコンを上回るとされた計算性能を、グーグルは世界で初めて実証したとみられる。同社は「コメントできない」としているが、事実なら「教科書に載るレベル。歴史に残る成果」(科学技術振興機構の嶋田義皓フェロー)だ。近く正式発表するもようだ。

量子コンピューターは「量子力学」という物理法則に従って動く。従来のコンピューターは「0」か「1」で情報を表すが、量子力学の世界は「0であり、かつ1でもある」という特殊な状態が起こりえる。
この仕組みを利用した「量子ビット」と呼ぶ計算単位を使うことで、膨大な情報もまとめて処理できる。計算の回数が大幅に減り、時間が劇的に短くなる。グーグルは今回、53個の量子ビットを実現し、乱数をつくる計算でスパコン超えの性能を実証したようだ。

グーグルなどが量子コンピューターの研究に乗り出したのは、半導体の微細加工による従来のコンピューターの性能向上に限界が見え始めたためだ。AIなどの登場を受け、膨大なデータを扱えるコンピューターが求められている。
50100量子ビットに到達し、開発は「NISQ」と呼ぶ中規模の量子コンピューターに移りつつある。まだ幅広い計算に使えるわけではないが、経済や産業、社会を変えると期待が膨らむ。

計算能力が足りないために、解決しない難題は多い。例えば都市部の渋滞解消。現在は無数の車がそれぞれの都合で走り、渋滞を招く。1台ずつが進む道を短時間に計算するのは困難だ。量子コンピューターを使い、車ごとに「渋滞を起こさない最適ルート」を指示できれば解消に役立つ。
AIによる画像や言語などの処理も短時間、省エネになる。計算力を生かし、個人の体質に合わせて薬を作り分けるような新たな医療の誕生も後押しできる。

量子コンピューターの「使い道」の開拓に力を入れるのがIBMだ。16年に量子コンピューターを外部の利用者にクラウド経由で公開した。世界で15万人を超す登録利用者のほか独ダイムラーや米JPモルガン・チェースなど80近い企業などと研究を進める。
日本では慶応義塾大学に連携拠点があり、銀行や化学大手が参加する。画期的な薬や材料の開発、金融市場のリスク予測などの研究が熱を帯びる。

ただし、量子コンピューターがもたらすのは「光」だけではない。革新的技術は時に脅威となる。ささやかれるのが、ネット社会が根底から揺らぐリスクだ。
現在は通信の際にパスワードなどの情報を暗号化している。最新のスパコンでも解読に時間がかかることから「安全」とみなす。量子コンピューターはこの暗号を破る恐れがある。新しい暗号技術の検討も進む。

IBMのメインフレーム(汎用機)の発売は1964年。従来のコンピューターもその前に20年ほどの黎明(れいめい)期があった。日本IBMの森本典繁執行役員は「量子コンピューターもそういうフェーズにある」と指摘する。
コンピューターの歴史で、およそ70年ぶりに起き始めた革新の動き。本格的な量子コンピューターの実用化には課題が多いが、米インテルや中国のアリババ集団なども開発に参入し、今後もブレークスルーが生まれる見通しだ。
(生川暁、張耀宇)2019/10/18 18:00日本経済新聞 電子版

2019年10月10日木曜日

2019年ノーベル化学賞吉野彰ら


2019年のノーベル化学賞、リチウムイオン電池開発の吉野彰ら3人に

(以下日経産業新聞に2011621日~726日に連載された「仕事人秘録」を再構成)
電池が変える未来 旭化成名誉フェロー・吉野彰氏
*京都大学で量子有機化学を専攻し大学院に進んだ。研究内容は紫外線の照射反応などを調べる光化学で、光触媒のような材料の開発に役立てられるものだった。1960年に「サランラップ」を発売、70年代から住宅事業「へーベルハウス」を展開し、業容を拡大中だった旭化成に72年に就職する。歴史のある企業でありながら野武士的な雰囲気が気に入ったのだと思う。
同期は350人ほど。私はその中でも数名しかいない大学院卒の研究開発職だった。20代だったころの研究は失敗の連続だったが、そのつど将来に生かせる経験を身に付けることができた。そうしたなか、81年にチャンスが巡ってくる。

2000年にノーベル化学賞を受賞した白川英樹・筑波大学名誉教授が80年代に発見した電気を通すプラスチック、ポリアセチレンを応用し、素材を開発する研究が始まったのだ。私は33歳。研究部門の係長になっていた。「やっと当たりくじをひけた」と直感した。
ポリアセチレンの性質を分析したところ、最も有望と感じたのは電池としての用途だった。充電することで繰り返し使用できる「2次電池」の材料に向いているのではないかと思った。80年代に入りビデオカメラなど電子機器の「ポータブル化」が新製品のキーワードになり始めていた。今と比べたらまだ大きくて不便な製品が多かったが、高電圧を発生できる電池があれば製品をもっと小型化できる。新素材を活用する好機だと思った。

高電圧を実現するには、水を電解液に使う乾電池や鉛電池だと限界がある。水の代わりに有機溶媒を使う非水系電池にする必要がある。81年当時、非水系で既に存在していたのは金属リチウム電池。ただし弱点があった。金属リチウムは1次電池、つまり「使い捨て」なのだ。金属リチウムは敏感に化学反応する。充電を繰り返す2次電池に使う場合、発火事故のリスクが大きい。私は金属リチウムの代わりにポリアセチレンを電極に使いたいと考えた。研究を進めるうちに、無水状態に置くと極めて安定する物質であることに気付いた。金属リチウムで問題になった安全性という大きな課題をクリアできる予感が高まってきた。

電池の構造を極めて単純化して説明すると、内部に負・正2つの電極があり、負極から正極へ電子を渡す。この時、逆の向きに電流が起きる。電池の性能のカギを握るのは負極。そこにポリアセチレンを使うという発想で研究を始めた。ポリアセチレンの製造工程や電解液純度を改良し、材料の性能も当初より格段に上がってきた。だが、喜ぶのはまだ早かった。いざ電池の試作となれば、正極が必要になる。ところが、ポリアセチレンの相方として使える電極材料がみつからないのだ。

研究を始めて1年たった8212月。このまま年を越すのかと気分が重かった年末のある日、午前中に職場の大掃除があり、午後はやることがなくなった。取り寄せたまま手つかずだった海外の研究文献を何となく読み始めたら、思いがけない論文と出会った。
当時、英国のオックスフォード大学で研究していた米国のジョン・グッドイナフ教授が、80年に発表した論文で「コバルト酸リチウム」というリチウムイオン含有金属酸化物が2次電池の正極になると書かれている。しかも従来の材料より高い電圧をつくれるという。続いて「組み合わせるべき適切な負極がない」と記されていた。
ひょっとしたら私が負極にしたいポリアセチレンと組み合わせられるのでないか。831月、論文に書かれていた通りのコバルト酸リチウムを実際に作ってみた。ポリアセチレンと組み合わせ電池を試作する。充電できた。放電もうまくいく。旭化成に入社して10年。待ちに待った研究の大成功だった。

こうして生まれたリチウムイオン電池だが、あくまで「原型」だった。研究を進めるうちに負極のポリアセチレンの欠点が明らかになる。ポリアセチレンは高温状態で保存する際に劣化しやすかった。おまけに比重が小さい。つまり、軽くてかさばるのだ。電池の軽量化だけが目的なら問題ない。だが、小型化を実現するには比重の小ささは致命的だった。
待ち望んだ正極にコバルト酸リチウムが見つかって喜んでいたが、今度は負極の材料探しをやり直さなければならなくなった。ポリアセチレンと同じ特徴を持つ分子構造の化合物としてカーボン(炭素材料)が思いあたる。電気を通す性質があり期待したが、当時入手できたカーボンはどれも使い物にならない。

新しい材料は社内から現れる。繊維メーカーの歴史が長い旭化成は84年、宮崎県延岡市の研究所で当時注目され始めていた炭素繊維を研究していた。ガスを気体のまま炭化させて、基板上に炭素繊維を成長させる。こうすると繊維直径が0.1ミクロンという極めて細い炭素繊維ができるのだった。
製造方法の特徴から「気相成長法炭素繊維(VGCF)」と名付けられたこの素材は、負極としてずばぬけて高い性能を示した。85年、VGCFの負極にコバルト酸リチウムの正極を組み合わせた電池を試作。充電することに成功した。研究開始から4年。やっと現在使われているものとほぼ同じ構造のリチウムイオン電池が誕生した。

90年代は携帯電話や小型ビデオカメラが出回り始めたころ。消費者向け製品を製造する大手電機が先鞭(せんべん)をつける形でリチウムイオン電池の生産が始まった。旭化成はメーカーが使う材料作りを強みとしてきた企業。エレクトロニクス関連で最終製品を製造した経験が少なかった。販売ルートもない。そこでパートナーとなる有力企業を探した。
92年、東芝と折半出資でリチウムイオン電池開発・製造のエイ・ティーバッテリー(ATB)を設立。ソニーや他の新規参入企業との間で電池の小型・軽量化を競い合うことになった。事業は思い描いていたとおりに進まなかった。旭化成は8年後の2000年に、電池材料の開発・製造に専念するため東芝にATBの全株式を引き取ってもらった。東芝も04年にリチウムイオン電池から撤退。ATBの生産設備は三洋電機が買い取った。

旭化成がATBの経営から手を引いたのはちょうどITバブルのピーク。やがてバブルがはじけ、019月の米同時多発テロを機に世界経済が減速する。リチウムイオン電池の市場も一時的に冷え込んだ。だが、電子機器の小型化・高性能化の流れは変わらず、高性能電池の需要の見通しは明るかった。
ATBを通じてリチウムイオン電池の生産を続けている間も、旭化成では材料の開発・改良を絶えず進めていた。その中で順調に伸び始めていたのが中核部品の一つであるセパレーター(絶縁材)だった。やがてこの部品が旭化成の収益拡大に貢献するようになる。

合成樹脂の膜であるセパレーターは電池内部で正極と負極を遮断するが、完全に遮断してしまうとリチウムイオンが電極間を移動できない。電池を機能させるには、非常に微細な穴を開けておかなければならない。加工が難しいが、旭化成には技術の蓄積があった。
80年代、大量の純水を使う半導体工場などで水をろ過する特殊な膜の開発を進めていた。技術を応用し、高密度ポリオレフィン微多孔膜製品「ハイポア」を開発。80年代後半から1次電池に採用されていた。90年代にはリチウムイオン2次電池用のハイポアを発売。電極間のリチウムイオン透過効率が高く、多くのメーカーが採用した。
旭化成は2000年、電池生産から撤退する一方でハイポアの生産設備を増強した。セパレーター市場で旭化成は現在まで世界シェア首位を維持する。エネルギーの変革とEVは電池の巨大な市場を生む。勝ち続けていくにはどうしたらよいか。これからも挑戦を続けるつもりだ。 2019/10/10 2:00日本経済新聞 電子版

2019年10月5日土曜日

115億光年先、銀河の源か…形成過程の解明へ成果


115億光年先、銀河の源か…形成過程の解明へ成果
*115億光年先の宇宙で見つかった、網状のガスの広がり(青色で示されている部分)=理化学研究所提供

 115億光年先の宇宙で、複数の銀河やブラックホールの源になったとみられる網状のガスの広がりを見つけたと、理化学研究所や国立天文台などの国際チームが4日、米科学誌サイエンスで発表した。銀河などの形成の過程を解明することにつながる成果だという。

 銀河やブラックホールは、水素などのガスが供給されることで成長する。理論からは、広範囲にガスの供給源となる網のような構造があると考えられていたが、網状のガスが発する光は弱く、見つかっていなかった。 
 チームは、米ハワイ州にあるすばる望遠鏡や、チリにある欧州南天天文台の望遠鏡などを使った観測結果から、みずがめ座の方角に、縦450万光年、横300万光年の領域で網状に広がる水素ガスを確認。この広がりに沿うように、銀河やブラックホール計18個が形成されていた。

 チームの梅畑豪紀ひでき・理研基礎科学特別研究員(銀河形成)は「観測したものは、銀河などにガスを供給する大きなネットワークと言える。あるはずのものがようやく見つかった」と話す。2019/10/05 10:29 読売

2019年10月1日火曜日

心臓が量産品に変わる日 3Dプリンターで臓器


心臓が量産品に変わる日 3Dプリンターで臓器
医ノベーション(1
    
自らの肉体を自在につくる技術を人類がひとたび手にしたら、どんな未来が待っているのだろうか。そんな想像を膨らませ、取材は始まった。
羽田空港の駐機場を望む川崎市の研究開発拠点。リコーの研究室で、両手で持てそうな小型プリンターがせわしなく動く。左右に走るヘッド部分から、ぽたぽたとしずくが落ちる。漏れ出たインクではない。1滴ずつが神経細胞を含む液体だ。
ヘッドが小刻みに行き来し、絵や文字を印刷する代わりに神経細胞を丁寧に敷き詰める。12時間で最大20層ほど積み重なり、約1センチメートル角のサイコロ形をした塊になる。

*バイオ3Dプリンターで作製した細胞の3次元積層体(川崎市川崎区のリコー川崎ライフイノベーションセンター)

神経細胞は、再生医療の切り札とされるiPS細胞から育てた。この3Dプリンターの技術を使えば、細胞の塊を様々な形に変えたり、異なる細胞を混ぜ合わせたりできる。将来は大脳皮質の一部をつくり、病気やケガで傷んだ脳の治療に役立てる。事務機器のインクジェットプリンターを担当した開発員も加わり、研究は熱を帯びている。

1万人の患者が移植を待つ
リコーは、必ずしも完全な臓器をつくろうとはしていない。「患者が必要としている機能を提供する」(バイオメディカル研究室の細谷俊彦室長)方針だ。
だが「交換可能な臓器」の開発が焦点になっているのは明らかだ。2019年春、イスラエルのテルアビブ大学が3Dプリンターでヒトの細胞を積み上げ、血管まで備えたミニ心臓をつくったとのニュースが伝わった。佐賀大学も、ヒトの細胞から血管を組み立て、人への移植を目指している。本物そっくりの臓器をいかに実現するかは大きな課題だ。3Dプリンターの活用は有力な手立てで、すでに先陣争いが始まっている。

3Dプリンターはまず、ものづくりの現場で脚光を浴びた。
樹脂などを熱や光で加工し、いとも簡単に立体部品に仕立てる。臓器すらもつくれる時代が間近に迫り、遠くない未来に臓器は「量産品」に変わる。衰えたり傷んだりした臓器は、スペア(予備)の臓器と取り換え、命あるかぎり補える。そうなれば、私たちの肉体は朽ちるだけのものではなくなる。

フランス生まれの外科医アレクシス・カレルが血管をつなぎ合わせる技術を究め、臓器移植への道を開いてノーベル生理学・医学賞を受賞したのが1912年。60年代から始まったとされる移植医療は、深刻な臓器不足に直面する。腎不全患者などが望む腎臓移植は、国内では年間1500件前後。約8割が健康な人からの提供で、1万人以上の患者が移植を待つ。量産臓器が既存の移植医療を一変させるのは確かだ。

ディスラプション(創造的破壊)のインパクトはそれだけにとどまらない。研究者の一人はいう。「私は歯を器具(インプラント)に置き換えたが、臓器だって同じ。どこか壊れたら取り換えるだけだ。おかしなことではない」。国内外で、肝臓や心臓など内臓の8割以上が臓器再生の研究対象になっている。最先端技術は、肉体をどこまでも入れ替えるだけの潜在力を秘めている。

*人類は幾多の技術進歩を目の当たりにしてきた。
いつの時代も、生まれ落ちた本来の体を取り戻すことが医療の最大の使命だった。今の臓器移植も自らの体の一部を補うだけだ。ところが、これからは自分の肉体が新たな肉体に次々と置き換わる。自分の肉体の大半が新しい臓器で満たされたら、私自身でありえるのか。生まれながらの私ではないのだから、私と名乗ってはいけないのだろうか。人類史上、ほとんど意識したことのなかった問いにさいなまれる。
新たな肉体が私でないとしたら、私が私でなくなる日は近づいている。東京大学の中内啓光特任教授は「今から30年もすると、長生きしている人の多くは新たな技術で体を補い、生まれた時のままの体でいる人は少数派になっているだろう」とみる。そして、量産した臓器は、治療の選択肢として珍しくはなくなる。

どこまで「自分」でいられるか
中内特任教授は、驚くような方法で自然な臓器をつくろうとしている。ブタの受精卵にヒトのiPS細胞を仕込み、本来はブタの胎児が持つ膵臓(すいぞう)や腎臓をヒトのものに置き換える計画を温める。生まれたブタからヒトの臓器を取り出し、移植を待ちわびる患者を救うのだという。19年秋からはマウスの受精卵にヒトのiPS細胞を入れ、きちんと育つかどうかを調べる実験に取りかかった。私が少しでも私であり続けるため、本人のiPS細胞でできた臓器の作製が最終目標だ。

*リコーの細谷俊彦バイオメディカル研究室長は「患者が必要としている機能を提供する」と語る

あなたはどこまであなたでいられるのだろうか。哲学に詳しい京都大学の沢井努特定助教は、臓器移植が思うがままにできるようになったとき「外から取り込んだ組織が一定割合を超えたころから、自然(な自分)かそうじゃないかの議論が起こりうるのではないか」と推測する。ただ「心臓の働きを補うペースメーカーを埋め込むと、機械であるにもかかわらず自分の肉体の一部のように愛着をもつ人もいる」とし、臓器を交換しながらも私は私のままと感じる人はいると考えている。東大の中内特任教授の答えはこうだ。「体の大部分が他人から提供された臓器や機械に取り換えられても、脳が置き換えられない限り『自己』の意識は存在する」

防衛医科大学のチームは最近、血小板や赤血球の働きをする人工血液を開発した。大量出血で死にそうな10匹のウサギに「輸血」したところ、6匹の命が永らえたという。人工なので血液型とは無縁だ。研究成果が公になると「血液型占いはどうなっちゃうの?」「輸血したら自分じゃなくなっちゃう?」と多くの反響を呼んだ。
技術の進歩によって現代人が自問自答しなければならないテーマがまた1つ増えた。

可能性と倫理のはざまで
創造的破壊の陰には、端緒となる大発見や研究成果がある。人類が肉体を補い続ける新たな手段を獲得し、さらに高みに上らんとできるのは、あらゆる細胞に育つiPS細胞が登場したからだ。
iPS細胞は、京都大学の山中伸弥教授が2007年にヒトの細胞での作製に成功し、12年にノーベル生理学・医学賞を受賞した。
全国約1800人を対象とした内閣府の調査(17年)では、iPS細胞など再生医療に関するイノベーションによって病気やケガなどの治療技術が進歩すると考える人が9割を超えた。14年には、日本の理化学研究所などが目の難病「加齢黄斑変性」の患者にiPS細胞から育てた細胞を初めて移植した。一般の人々の目に映る医療の姿は、iPS細胞の誕生前後でがらりと変わった。

*異次元のイノベーションは破壊や急速な変化を伴うだけに、それまでの時代とのあつれきは避けられない。
人の臓器を「量産」する試みには、期待や畏怖の念などさまざまな反応が寄せられる。東京大学の中内啓光特任教授の研究は今でこそ国も認めるが、10年に構想を発表したときは世界で議論が巻き起こった。京都大学iPS細胞研究所上広倫理研究部門の藤田みさお特定教授は「動物を使ってヒトの臓器の作製を目指す研究は新しく、議論すべき対象になっている」と指摘する。

地殻変動を引き起こしたiPS細胞の「生みの親」である山中教授はどんな思いなのだろうか。山中教授が監修した書籍「科学知と人文知の接点」(弘文堂)に、複雑な心境が垣間見える。ヒトのiPS細胞をつくった後の苦悩を明かし、「大きな倫理的課題を生み出したことに気づき茫然(ぼうぜん)としたことを覚えている。(中略)どのような研究にも、光と影がある。うまく使えば人類の福音となるが、使い方を誤ると人類の脅威となる」と吐露した。イノベーションは、その後の新しい時代を生きる人類に相応の責任と覚悟を迫っている。
(文 猪俣里美、加藤宏志 写真 伊藤航)  日経 Disruption 2019101 11:00

2019年6月29日土曜日

月面着陸から50年、月に残る最も心を打つ記念品は


月面着陸から50年、月に残る最も心を打つ記念品は
持ち帰ったのは382キロの「月の石」


記憶が蘇ってきます。テレビの生中継は、研究室セミナーの時間帯と重なった。我々“悪童“はセミナーをボイコットしTVにかじりついていた。結局話の分かる教授の計らいで、人類の月面一歩の踏み出しを皆で確認するすることができたのでした。鮮明に蘇ってきます。


*月面で採取された玄武岩。「15016」の試料番号が付けられ、窒素ガスを充塡したステンレス容器の中で保管されている。NASA JOHNSON SPACE CENTER

 いまからちょうど50年前、1969年の7月に史上初めて人類が月面を歩いた。ライト兄弟の初飛行からわずか66年後に実現したアポロ11号の成功は、人類の勇気と創造性を遺憾なく示すものだった。現在、月に再び目が向けられている。今後はいかに科学的挑戦を経済活動につなげるかが課題になるだろう。

 人類で初めて宇宙を旅したのは、軍人たちだ。だが初期の宇宙飛行に携わったのは男性だけでも、人類だけでもなかった。ショウジョウバエやサル、イヌ、ウサギ、ネズミなどが、人類に先立って宇宙を飛んでいた。
 19614月に宇宙飛行士のユーリ・ガガーリンが人類初の宇宙飛行を行う3年以上も前、ソ連がイヌを打ち上げたことはよく知られている。そのイヌは初めて地球を周回した動物となったが、飛行中に命を落とした。

 女性も先駆者の列に加わった。そのなかには、数学者のキャサリン・ジョンソンのように舞台裏を支えた人もいる。1962年にジョン・グレンが地球を周回できたのは、彼女が飛行軌道を細かく手計算したからだ。ロシア人のワレンチナ・テレシコワは、1963年に女性として初めて軌道上を周回。米国人女性として初めてサリー・ライドが宇宙に到達したのは、その20年後のことだった。

人類が月に残してきたもの
 米航空宇宙局(NASA)は月面着陸という格好の機会を最大限に生かしたいと、着陸地点を選んだ。1969年から72年にかけて、アポロは月面の6地点に着陸。これらの地点はそれぞれ異なる科学的な目標に沿って選ばれたものだったが、いずれも月の表側だったアポロの乗組員たちは4年間に重さ382キロほどの月の石を持ち帰った。

*しかし、最も意味深い記念品は、宇宙から撮影された地球の姿だろう。アポロ8号に搭乗したウィリアム・アンダースは、1968年のクリスマスイブに象徴的な写真を撮った。それはクレーターだらけの月の地平線の向こうで、青い地球が暗闇にぽっかりと浮かぶ光景「地球の出」だ。

 飛行士たちはさまざまな品を宇宙へ持っていってもいる。ジェミニ3号のジョン・ヤングがコンビーフ・サンドイッチをこっそり機内に持ち込んで、同乗者のガス・グリソムと分け合ったことは有名だ。
 アポロ11号のバズ・オルドリンはワインとパンと聖杯を持っていき、月面で聖餐式を行った。アポロ14号のアラン・シェパードは6番アイアンのヘッドを持参し、サンプル採取用の道具に取り付けて月面でゴルフボールを打った。そして、アポロ16号のチャールズ・デュークは家族の写真を着陸地点に置いてきた。
 月面に残る最も心を打つ記念品は、アポロ15号のデビッド・スコットが残した小さなアルミニウム製の人形かもしれない。宇宙開発において命を落とした米ソの14人の飛行士を追悼するもので、すぐそばに名前を記したプレートも置かれている。2019.06.28 ナショジオ

2019年6月20日木曜日

ナスカ地上絵、鳥はペリカンとハチドリの仲間


ナスカ地上絵、鳥はペリカンとハチドリの仲間…北大准教授ら特定
*南米ペルーの世界文化遺産「ナスカの地上絵」に描かれた3点の鳥が、ペリカンとハチドリの仲間だと、鳥類形態学による分析で分かった。北海道大の江田真毅准教授(動物考古学)らの研究チームが論文にまとめ、国際的な考古学術誌「ジャーナル・オブ・アルケオロジカル・サイエンス・リポーツ」電子版に20日掲載された。
 地上絵は、ペルー南部の海岸から内陸約50キロ・メートルの砂漠台地にあり、直線や図形を中心に約2000点が確認されている。このうち鳥類は16点あり、江田准教授らが嘴(くちばし)や冠羽、趾(あしゆび)、尾羽などを基に分析した。
 これまで、地元でグアノの鳥(カツオドリ類やウ類など)とされていた地上絵は嘴や突き出た胸から、単に鳥類とされていた絵は冠羽と嘴などから、いずれもカッショクペリカンの仲間であり、ハチドリとされていた絵は長い尾羽や嘴などからユミハシハチドリの仲間と、それぞれ同定した。

 鳥の絵はこれまで考古学と鳥類形態学の隙間にあって誰も同定していなかった。ペリカンもハチドリも砂漠にはいない鳥で、なぜ描かれたのかという謎は依然残る。江田准教授は「鳥の種類が同定されたことで描いた目的を探る手がかりの一つになると思う。周辺遺跡から発掘された鳥の骨も詳しく調べ、謎の解明を進められれば」と話した。
620日(木)1737分 読売新聞

2019年6月18日火曜日

合体する銀河…「最遠」


合体する銀河…「最遠」の131億光年先 電波望遠鏡キャッチ
*地球から131億光年先で合体する二つの銀河の想像図(国立天文台提供)
 地球から131億光年離れた宇宙で2つの銀河が合体している証拠をとらえたと、国立天文台などの研究チームが17日、発表した。宇宙の果てから飛んでくる電波を観測するアルマ望遠鏡(チリ)を用いた成果で、観測された銀河の合体としては最も遠い。

 観測した天体は、ろくぶんぎ座の方向にある「B14-65666」。この天体にある酸素や炭素、小さな粒子(ちり)が放出した電波をキャッチ。天体にある2つの銀河は地球からの距離がほぼ同じと分かった。私たちが住む天の川銀河よりずっと小さいが、約100倍も盛んに星を生んでいることも判明した。
 銀河が衝突、合体すると活発に星が生まれることが知られており、この天体では、隣り合う2つの銀河が合体しつつあるとみられるという。2019.6.18 00:00 産経

2019年6月14日金曜日

月の裏側の地下に謎の超巨大物体が


月の裏側の地下に謎の超巨大物体が、研究
地下300km超に高密度の塊、「とにかく謎だらけ」と研究者

NASAのルナー・リコネサンス・オービターが撮影した月の画像。月の裏側が無数のくぼみで覆われているのがわかる。中央の青い部分は、南極エイトケン盆地。直径約2500キロで、太陽系で知られている限り最古かつ最大の衝突クレーターだ。(PHOTOGRAPH BY NASA/GODDARD
 月の裏側の地下に、何やら巨大な物体が潜んでいるらしい。質量がハワイ島の5倍もある金属の塊のようだという。
 学術誌「Geophysical Research Letters」に最近発表された論文によると、その物体は南極エイトケン盆地の地下300キロよりも深い場所にある。南極エイトケン盆地は、数十億年前、月の表面がまだ高温の溶岩に覆われていたときに、隕石が衝突してできた巨大クレーターだ。月面が完全に冷え固まる少し前に形成されたため、今も痕跡が残っている。

 調査チームは、NASAの月探査機グレイルのデータとルナー・リコネサンス・オービターによる地形図を組み合わせ、クレーターの地殻の厚さとマントルの密度をより詳しく計算した。
 こうして発見された物体は、クレーターの形成と何らかの関りがあるとみられている。論文の筆頭著者で米ベイラー大学のピーター・ジェームズ氏は、古代に衝突した隕石が持っていた金属核の名残ではないかと推測する。物体は直接は見えないが、その影響なのか、クレーターの表面にはほぼ卵型の奇妙なくぼみが確認できる(次ページの写真)。くぼみの底は、周囲よりもさらに800メートル以上も深い。

 NASAゴダード宇宙飛行センターの月地質学者ダニエル・モリアーティ氏は、「大変重要な研究結果です。月の内部で何が起こっているのかを知る手がかりになるでしょう」と話す。
 南極エイトケン・クレーターは、その表面の組成や大きさから、これまでも多くの関心を集めてきた。
 ジェームス氏によると、「今も残るクレーターとしては太陽系で最大」だそうだ。そのうえ、地下に謎の物体が潜んでいるとなると、ますます興味をそそられる。特に、このクレーターとその縁にある南極点は、今後予定されているいくつもの月ミッションで探査機の着陸候補地に挙げられていることもあって、関心は高い。

 この物体を早く研究したくてたまらないという科学者は多い。クレーターを作った巨大隕石の衝突についてだけでなく、月や他の天体がどのように成長するのかを理解する助けにもなるかもしれない。
「私は隕石の衝突モデルを研究しているので、この結果にはとてもわくわくしています」と、米ブラウン大学の惑星科学者ブランドン・ジョンソン氏は言う。「できるなら、私も早く研究を始めたいです」。なお氏は今回の研究に関わっていない。

*月の裏側の地形を示した着色画像。高い部分は明るい色、低い部分は暗い色に塗られている。点線で囲まれた部分が、南極エイトケン盆地の地下に巨大な物質があるとされるところだ。(IMAGE BY NASA/GODDARD SPACE FLIGHT CENTER/UNIVERSITY OF ARIZONA

「マスコン」が見られない
 2011年に打ち上げられた2機のグレイル探査機「エブ」と「フロー」は、1年近く月を周回し、月の重力場の違いを克明に記録した。このデータを使って、これまでで最も解像度の高い重力場地図が作られた。
 この地図は、月面の表面と地下で何が起こっているのかを大まかに示している。高い地形や密度の濃い岩石など、質量の多い場所では重力が強くなる。すると、南極エイトケン盆地には月の他の巨大クレーターとは異なる点があることが明らかになった。

 月の巨大クレーターには、重力が異常に集中しているマスコン(mass concentration)と呼ばれる場所がある。1968年にNASAのジェット推進研究所の科学者らによって発見されたマスコンは、重力地図上にダーツの的のような円形になって現れる。円の中心は重力が強く、それを取り巻く輪の部分は重力が弱い。さらにその外側の輪は、重力が再び強くなっている。隕石が衝突した後、低密度の地殻と高密度のマントルが混じり合うため、このような模様になる。
 ところが、南極エイトケン盆地にはマスコンが見られない。そこで、地下がどうなっているのかを調べようと、重力の働きをより正確に想定したモデルを作成したところ、月の上部マントルに高密度の巨大な物体が居座っていることを突き止めた。

由来は隕石?マグマオーシャン?
 研究チームは、物体の正体に関してふたつの仮説を挙げている。第一は、月がまだマグマの海に覆われていたその昔に、冷却の最終段階で形成された密度の高い酸化物の名残ではないかというもの。だが、それがどうやって、しかも盆地の下に形成されるのか、正確なメカニズムについてはわかっていない。

「なぜ他の場所ではなく、ここにあるのでしょうか」と、ジェームス氏は問う。
 一方、はるか昔に起きた隕石衝突の名残だという説もある。これだけの大きさの盆地をえぐり取った隕石は、相当な大きさだったに違いない。ということは、他の多くの惑星と同様、その内部には硬い金属の核とそれを覆う岩石質の層があっただろう。
 それが月に衝突したとき、衝撃で月面が深くえぐられてお椀形のクレーターが形成され、隕石の金属核が地面深くに潜り込んだ。やがてその上を溶岩が覆い、核は地下に閉じ込められたが、次第に溶けて、今は痕跡がわずかに残っているだけなのではないだろうか。(参考記事:「月面の磁気異常、原因は小惑星衝突?」)
「私ならこちらの説の方に賭けますね」と、ジェームス氏。
 ジョンソン氏も2番目の説に同意して、「確かに、何かがあると確信させる論文です」と話した。「これを読んでいる間中、この研究結果を検証する別の方法や、物体ができた原因を探ろうかとあれこれ考えていました」

ますます興味をそそる研究対象に
 今回の論文ではほかにも、盆地の内縁の境界線が引き直され、クレーターの大きさがこれまで考えられていたよりも約65キロ大きいことが示された。これも、ここを探査機の着陸地点の候補にしているNASAや他の宇宙機関には重要な情報だ。過去のデータを使った地図では、盆地の南に空白部分があった。しかし、今回はより完全なルナー・リコネサンス・オービターとグレイルのデータを使っている。

 全体として、この調査で南極エイトケン盆地への好奇心はますます深まった。
 カナダにあるウェスタン大学惑星科学探査センターのサラ・マズルーイ氏は、研究には参加していないが、「とにかく謎だらけです」とコメントした。この物体の正体が少しでもわかれば、太陽系の他の天体形成についても理解が深まるかもしれないと、期待がかかる。

「太陽系の惑星はどれも、小さな物体が衝突しあって大きくなりました」と、モリアーティ氏。
 地球上では、プレート運動によって地表が常に循環しているため、古い地表はとうの昔に消え去り、地球誕生初期の隕石衝突の記録も残っていない。だが、月には数十億年前の地表が今も残り、南極エイトケン盆地が生まれた経緯も含め、太陽系誕生の頃何が起こっていたかを探るうえで貴重な情報をもたらしてくれる。
 南極エイトケン盆地に関しては、「まだその形成過程がほとんどわかっていません。現在研究はされていますが、とてつもなく広い分野です」と、モリアーティ氏は語った。2019.06.13 ナショジオ