北海道新幹線開業:「4時間の壁突破」カギは青函トンネル
北の大地に新しい時代と人の流れを呼び込む北海道新幹線。開業予定の2016年3月まであと1年3カ月を切った。江戸時代末期に開業した箱館(現在の函館)が国際貿易港としてにぎわった歴史になぞらえ、道南では開業を「第二の開港」と呼んで期待する。
緑と白の車体中央に紫のラインが入った新型車両「H5系」は、昨年末から新函館北斗(北斗市)−奥津軽いまべつ(青森県今別町)間で試験走行を繰り返している。新函館北斗と札幌を結ぶルートもトンネル工事が始まり、札幌と東京を結ぶ計画は着実に進んでいる。
車両は東北新幹線で使われている「E5系」と同型で、車体中央を走るラインの色と内装が違うだけだ。名称も東北新幹線と同じ「はやぶさ」「はやて」で、東北新幹線と同様に「東京から北へ向かう新幹線」として利用者への定着を図る。
青森と新幹線で結ばれる意味も大きく、観光客やビジネス客の往来が活発になると期待されている。新幹線駅周辺の自治体では、大規模なスポーツ大会に対応できる施設や複合施設の建設が急ピッチで進む。食品加工業界は、青森と道南の食材を原料にした食品やスイーツなどを開発し、観光業者らは道南と青森を周遊するツアー商品をつくるなど、開業に向けた動きを活発化させている。
昨年12月、北海道を初めて走る試験走行に合わせて新函館北斗駅で行われた歓迎セレモニーには、地元だけでなく札幌市や旭川市などからも訪れ、約300人が祝った。函館市の60代男性は「新幹線で人の往来が増え、経済が活性化してくれれば」と期待を寄せる。同市の70代女性は「地元を新幹線が走る光景を生きているうちに見ることができるとは思わなかった。早く乗ってみたい」と目を輝かせている。
道民の夢を乗せた北海道新幹線。一番列車が新函館北斗駅を出発し、青函トンネルを経由して乗客を運ぶ日はすぐそこに来ている。【鈴木勝一】
◇4時間の壁 破れるか
北海道新幹線の駅とルート
最高時速260キロで走る北海道新幹線が開業すると、新函館北斗(北斗市)−東京間の時間が大幅に短縮される。現在の特急「スーパー白鳥」を使って新青森駅(青森市)で新幹線に乗り継ぐ場合に比べ、約1時間短縮される。
時間短縮をさらに進めるうえでネックとなるのが、新函館北斗−新青森間149キロの半分以上の82キロを占める青函トンネルなどの共用区間だ。在来線では、貨物列車が最大で1日51本走る。トンネルで高速の新幹線とすれ違うと、風圧で運行に支障が出る恐れがあるため、新幹線の最高時速を140キロに制限せざるを得ないのだ。
しかし、東京までの所要時間は、利用客が新幹線と飛行機のどちらを選ぶかの判断に大きく影響する。3時間台だと新幹線に乗る傾向が強いことは山陽新幹線などで実証済みで、北海道新幹線も4時間の壁を破ることが悲願となっている。
青函トンネル(約54キロ)は時速200キロで走れるように設計されている。だがトンネルのため、風圧の影響が高まる。国土交通省は共用区間のスピードアップを図るため、新幹線が貨物列車とすれ違う時だけ減速するシステムの導入や、新幹線と在来線が走る時間帯を分けることなどを検討。また、貨物列車を新幹線に載せる専用車両「トレイン・オン・トレイン」構想もある。
北海道新幹線で使う新型車両(H5系)は東北新幹線を走る「はやぶさ」の車両(E5系)と同型で、最高時速320キロを出すことが可能だ。札幌まで延伸すると、最高時速が260キロの場合は東京まで約5時間1分だ。安全走行に加え、スピードアップで時間を縮める技術力が問われている。【千々部一好】2015年01月01日 毎日
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