2015年1月18日日曜日

「シミズ・ドリーム」の仰天構想

海底レアアース供給“海中未来都市”プロジェクトは実現するか…清水建設「シミズ・ドリーム」の仰天構想
シミズ・ドリーム第3弾の深海未来都市構想「オーシャンスパイラル」のイメージ。海面付近に直径500メートルの球体に居住地区があり、海底にある工場を結ぶ螺旋状の通路を人や電気、海底資源が往来する
 地球温暖化や食糧不足など、人類が直面する難題を最新技術で解決する都市づくりのアイデアを大手ゼネコンの清水建設が世界に発信している。「シミズ・ドリーム」と銘打った未来都市構想だ。昨年11月に打ち出した第3弾の最新構想「オーシャンスパイラル」は、豊富な資源が眠る深海を都市基盤に取り込むという斬新なコンセプトで、国内の研究機関などで反響を呼んでいる。構想の開発には、バブル崩壊後の低成長時代に社内で語られなくなった「夢」を、再び取り戻そうという思いがあった。

環境、食料、エネルギー問題の「解答」
 「深海にはあらゆる問題を解決できる可能性があり、ビジネスチャンスがある」。平成24年秋から始まったオーシャンスパイラルのプロジェクトリーダー、竹内真幸氏はこう強調する。
 オーシャンスパイラルは、海面付近に浮ぶ直径500メートルの球体構造物にホテルやオフィス、居住地区を備える。球体と、3000~4000メートルの海底にあるレアアース(希土類)などの資源開発を行う工場を全長15キロのらせん状通路で結び、人や電気、資源を往来させる。いわば高さ4000メートルのビルを水中に建設するというものだ。

 構想では、海水の温度差発電や、深海の温度と栄養を生かした世界初の沖合養殖漁業、二酸化炭素(CO2)を海底メタン生成菌でメタンガスに転換する設備などの最新技術の活用を想定。環境、食料、エネルギーの各問題への課題解決の答えがちりばめられている。目標の建設コストは3兆円という。
 植物プランクトンが光合成できる限界とされる水深200メートルを超える深海。地上での建築にはノウハウのある清水建設だが、海の中は素人だ。
 構想づくりの最初の1年間、竹内氏らは独立行政法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)に協力を仰ぎ、有人潜水調査船「しんかい6500」の内部を視察したり、深海で長時間滞在した人に話を聴いたりして、どうしたら高い水圧に耐えられるか、など深海利用の課題について研究。そして将来の産業技術の進歩も踏まえ、「漫画ではなく、現実性の高い」(竹内氏)都市づくりの詳細を詰めていった。

バブル崩壊で一時中断
 平成の初めごろまで、清水建設は宇宙ホテルや2000メートル級の「ピラミッドシティ」など、夢のある建築コンセプトを披露してきた。
 だがバブル景気が弾け、公共工事の減少などで冬の時代に入ると、業績重視となった社内に夢を語れる雰囲気はなくなった。
 流れが変わったのは、19年に就任した宮本洋一社長を中心にテレビCMや研究所を公開するなどして、一般の人に会社を知ってもらおうという取り組みがきっかけ。その一環で地球規模の問題解決への貢献を目指し、再び夢に挑むことになった。

 第1弾は20年11月に発表した環境未来都市構想「グリーンフロート」。赤道直下の海上に直径3000メートルの巨大な浮体構造物(人工島)を造り、その上に高さ1000メートルの塔を建設。自然エネルギー利用の発電など、環境技術を駆使してCO2排出量をゼロにするのが目標だ。この構想には、温暖化による海水面上昇で水没が懸念されるキリバス共和国の大統領から、「魅力を感じている」と問い合わせを受けた。具体化へ22年5月には産官学連携の研究会が発足し、さまざまな切り口から技術的な課題の検討が進んでいる。
 いま構想づくりメンバー最年少で入社4年目の女性社員、西野安香さんは「近未来の女性にふさわしい視点を都市構想に盛り込みたい」と意気込む。シミズ・ドリームが、ヒット商品として世界の注目を集める日は意外に近いかもしれない。(鈴木正行)
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 シミズ・ドリーム 清水建設が平成20年からスタートした都市構想シリーズ。第1弾の環境未来都市構想「グリーンフロート」は、赤道直下の太平洋上に浮ぶ海上都市を提案。第2弾の月面太陽発電構想「ルナリング」は、月の赤道面に沿って設置した太陽電池で発電し、マイクロ波に変換して地球に送るアイデアだ。第3弾のオーシャンスパイラルを含めて産学連携や企業連携プロジェクトを創出し、技術革新に取り組む考えだ。2015.1.18 18:00 産経ニュース

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