世界で惑星探査ラッシュ 地球の隣人の姿は?
今年から惑星探査ラッシュが本格的に始まりそうだ。火星には各国の探査機が続々と集結、金星では日本の探査機が軌道投入に再挑戦し、日欧の水星探査機打ち上げも来年に予定されている。今では惑星ではなく準惑星だが、冥王星の初探査もまもなく。これまで意外に知られていない地球の隣人たちの姿が見えようとしている。
■NASA、火星で生命の痕跡探し
NASAの火星探査機「キュリオシティ」(NASA/JPL-Caltech/MSSS提供)
火星で活躍中の米航空宇宙局(NASA)の探査車「キュリオシティ」は今年、最大の狙いである生命の痕跡探しでクライマックスを迎えるかもしれない。
2012年に着陸して以来、移動しながら探査を続けていたが、昨年9月に長期的な主目的地であるシャープ山のふもとに到着、調査しながら山を登り始めた。この山はキュリオシティが着陸したゲール・クレーターの中央に位置し、地層が露出しているところがあるため火星の過去を調べるのに適している。昨年12月にはNASAが岩石中の有機物を初めて発見したと発表、大気中のメタン濃度が一時的に急上昇した観測結果も報告した。
すでに過去の火星に水があふれていた証拠も見つかっている。生命に欠かせない水と生命の材料である有機物の存在は生命誕生につながる可能性をうかがわせる。またメタンは岩石などの化学反応で発生する場合もあるが、微生物が活動して作ることもある。
今のところ状況証拠ばかりだが、今後の調査で生命のはっきりした痕跡が見つかるのではと期待が高まる。もし火星で地球外生命が初めて見つかれば科学史に残る大発見となるのはもちろんだが、宇宙には生命があふれているのか、地球型とは違った生命の形があるのか、地球の生命はもしかしたら火星から来たのかなど様々な謎に大きな手掛かりを与えてくれる。
■インド、アジア初の火星探査に成功
火星はまさに探査ラッシュのただ中にある。キュリオシティのほか、周回軌道も含め米国や欧州の探査機が観測中だったが、昨年9月には米国の新たな探査機「メイブン」とインドの探査機「マンガルヤーン」が相次ぎ周回軌道に到着した。インドはアジア初の火星探査に成功した。
さらに今後、米国は探査機「インサイト」を16年に打ち上げる予定。これは火星の地面を掘って地下の構造を調べるのが特徴だ。キュリオシティに続く新型の探査車の計画も進めている。欧州とロシアは共同で「エクソマーズ」という探査計画に取り組んでいる。16年と18年に打ち上げるもようで、探査車も送り込む予定。日本は探査機「のぞみ」が03年に軌道投入に失敗したが、新たな探査機や生命の調査手法について研究者の検討が活発になってきており、今後の具体化が期待されている。
■水星探査、JAXAと欧州宇宙機関が協力
金星では日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)の探査機「あかつき」が10年に軌道投入に失敗していたが、挽回のチャンスが巡ってきた。11年に軌道を修正し、再び金星に接近する機会に備えていたが、今年、軌道投入に再挑戦する計画だ。成功すれば雲や雷などの観測が予定されている。
金星は太陽を回る軌道が地球の隣、大きさも地球に近いなどよく似ており、兄弟惑星のようなものとも言われる。だが、なぜか金星の今の姿は地球とはまったく異なる。二酸化酸素を主成分とする分厚い大気に包まれ、その温室効果によって非常に高温の世界であり、異常な強風が吹くなど謎の多い惑星だ。なぜ地球と違う道をたどったのかも含めて解明が待たれている。
太陽系の一番内側を回る水星にはJAXAと欧州宇宙機関(ESA)の共同による探査機「ベピコロンボ」が16年に打ち上げの予定だ。これは2機から成り、磁場や磁気の様子を観測する水星磁気圏探査機(MMO)をJAXA、地表などを観測する水星表面探査機(MPO)をESAが開発、両方の観測で水星の全貌を明らかにしようとしている。
■冥王星、9年前に打ち上げた探査機が接近
また今年の大きな話題になりそうなのは冥王星だ。9年前に打ち上げられたNASAの探査機「ニューホライズンズ」が今年7月に最接近する。冥王星はかつて太陽系第9惑星と呼ばれ、一番外側の惑星だったが、打ち上げのすぐ後で惑星の定義が変更になり、準惑星の分類になった。
名前が有名な割に探査は今回が初めて。望遠鏡でもよく見えないだけに表面の様子からして不明という謎が多い天体だ。準惑星ではほかにNASAの探査機「ドーン」が火星軌道外側にある小惑星帯でもっとも大きい「セレス」に今年3月到着する。ドーンは小惑星「ベスタ」を探査済みだ。
小惑星探査は日本が得意な分野で、昨年12月に探査機「はやぶさ2」を打ち上げた。まだ地球近くを回っており、今年末ごろに地球の重力を利用して進行方向を変えるスイングバイという飛行をして、いよいよ目的の小惑星「1999JU3」に向けて旅立つ。到着は18年、小惑星の岩石片などを採取して地球に帰還するのは20年の予定だ。
天文分野では100億光年(1光年は光が1年間に進む距離)以上のかなたの銀河などをとらえている半面、同じ太陽系内の惑星や小惑星などについては案外知らないことが多かった。今後は長期的に火星の有人探査を目指す国際的な方向もあり、探査は活発化するとみられる。米国の宇宙ベンチャーやインドなど宇宙新興国の台頭でロケット打ち上げコストの低下も進み、探査機を送り出しやすくなると予想される。太陽系内の身近な謎の解明が加速しそうだ。2015/1/12 7:00 日経 賀川雅人
惑星などの最近の探査状況
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天体
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探査状況
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火星
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米国の探査車「キュリオシティ」などや欧州の探査機が観測中に加え、米国の「メイブン」とインドの「マンガルヤーン」が昨年到着。米国の「インサイト」が2016年打ち上げ、欧州とロシアの「エクソマーズ」が16、18年打ち上げを計画
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水星
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日本と欧州の探査機「ベピコロンボ」が16年打ち上げ
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金星
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日本の探査機「あかつき」が今年、軌道投入再挑戦へ
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木星
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米国の探査機「ジュノー」が16年に木星到着
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冥王星
(準惑星) |
米国の探査機「ニューホライズンズ」が今年7月、冥王星に到着
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セレス
(準惑星) |
米国の探査機「ドーン」が今年3月、セレスに到着
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小惑星
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日本の探査機「はやぶさ2」が今年末ごろスイングバイで小惑星に向け飛行へ。米国の「オシリス・レックス」が16年打ち上げ
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すい星
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欧州の探査機「ロゼッタ」が観測中
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