2015年3月11日水曜日

老化の真犯人は「糖化」

糖の取り過ぎは細胞を焦がす 老化の真犯人は「糖化」
 老化促進の要因として最近、注目が集まっているのが、「糖化」と呼ばれる現象だ。糖の取り過ぎが、肌のくすみから動脈硬化や骨粗鬆症(こつそしょうしょう)、ED(勃起不全)、そして認知症までも引き起こすといわれるのはなぜだろうか。

 糖の取り過ぎによる害は、肥満にとどまらない。昨今、予防医学の世界では、過剰な糖質が引き起こす「糖化」に注目が集まっている。
 糖化とは、体内のたんぱく質や脂質と糖とが結びつき、変性すること。「筋肉や血管などの人の体の大部分は、たんぱく質からできています。これを変質、老化させる犯人が糖質。食事で糖を取り過ぎると、エネルギー源として代謝されずにたんぱく質と結合し、老化が加速してしまうのです」と同志社大学大学院教授の米井嘉一さんは指摘する。

 糖化のメカニズムを、ホットケーキを例に説明しよう。卵と牛乳(たんぱく質)に、小麦粉と砂糖(糖)を混ぜて焼くと、焼き色が付く。「これは食品が茶色くなる『メイラード反応』。糖化は、たんぱく質と糖が体温で焦がされ、褐色の物質に変性するメイラード反応の一種です。ホットケーキと同じように、体内の細胞が焦げついていると思ってください」(米井さん)。

 たんぱく質と糖質とが結合すると、AGEs(終末糖化産物)という褐色の老化物質ができる。
 体内の「糖化現象」は、まず血中で起こる。糖を取り過ぎると、血中に余分な糖が増え、赤血球のたんぱく質・ヘモグロビンと結合し、AGEsが発生する。糖化したヘモグロビンは全身に酸素を運ぶ役割を果たせなくなり、体中の細胞が低酸素状態に陥って、新陳代謝が低下していく。

 これが進むと、体内のあらゆる部位にあるたんぱく質の一種、コラーゲンにAGEsが発生する。すると血管の内側が傷つき動脈硬化になり、ひいては心筋梗塞(こうそく)や脳梗塞の原因に。また、毛細血管が詰まりやすくなるので、ED、糖尿病網膜症、脳なら認知症にもつながる。さらに骨にも大量のコラーゲンがあるので、骨粗鬆症の原因になる…と、全身の病気に「糖化」は関わるのだ。

 肌のくすみ、たるみやシワも、肌の表皮の下にたまったAGEsが起こす。「肌の色が茶色っぽくくすむのは、褐色のAGEsが皮膚にある証拠です。最近、肌が急にくすんだ、という自覚がある人は、体内も同じように焦げついていると考えていいでしょう」(米井さん)。

【血中でヘモグロビンが「糖化」すると… → 全身が老化する】
 ●肌がくすみ、弾力がなくなる
 ●血管が傷んでくる
 ●太りやすくなる
 ●動脈硬化が進む
 ●認知症になりやすくなる
 ●がんになりやすくなる

 もし「痩せていて、血糖値も高くないから、糖化は無関係」と思っているなら、認識を改めるべきだと米井さん。「健康な人でも、食後は血糖値が上がって血中に糖があふれてAGEsが作られやすい。しかも、AGEsは年齢とともに代謝されにくくなります。普段からAGEsが蓄積されにくい生活をしていれば、若々しさや健康を長く維持できますよ」(米井さん)。

 糖化を防ぐには、食後血糖値を急上昇させない習慣が肝要。野菜→タンパク質→主食の順に食べる「ベジファースト」などを積極的に実践しよう。
 同時に、糖化を抑制する働きのある食材も取りたい。米井さんの研究で、糖化抑制作用があると判明したのは、モロヘイヤ、フキノトウ、新ショウガ、たで、ブロッコリースプラウトといった野菜や、ハッサクやマンゴスチンなどの果物、栗の渋皮など。甘く、口当たりのいいものより、苦みや渋み、酸味の強いものが多い傾向だ。ドクダミ茶や柿の葉茶など、9種類の健康茶にも糖化を抑える作用があるそうだ。甘い清涼飲料水を飲んでいるなら、すぐに健康茶に切り替えよう。

■糖化ストレスを減らす 9種類の健康茶
 米井さんが研究の結果、糖化ストレス低減作用を持つ健康茶を突き止めた。いずれも独特の風味や香りがあり、ハマれば手放せなくなる。特に糖質が多めの料理やデザートを食べたいときは、コーヒーや酒だけでなく健康茶を一緒に飲む習慣をつけよう。

1:柿の葉茶 → ビタミンCなど
 レモンや緑茶の20倍ものビタミンCを含有するため、美白や風邪予防にも。さっぱりした風味で、飲み続けやすい。
2:カモミールティー → 抗炎症成分アズレンなど
 ジャーマンカモミールとローマンカモミールとがあり、抗糖化作用が強いのは後者とされる。寝つきを良くする働きも。
3:ドクダミ茶 → クエルシトリンなど
 十薬(ジュウヤク)の名称で漢方薬としても使われるドクダミの健康茶。独特の匂いがある。
4:ブドウ葉茶 → アントシアニンなど
 原料はワイン用の赤ブドウや黒ブドウの葉。赤ワインにも含まれるポリフェノールやアントシアニンが豊富。

5:ゴボウ茶 → ポリフェノールのサポニンなど
 ゴボウの皮に含まれるポリフェノールのサポニンをたっぷり取れる。水溶性のムコ多糖類「イヌリン」も豊富に含まれる。
6:セイヨウサンザシ茶 → フラボノイドなど
 ヨーロッパでは「心臓の草」と呼ばれ、動悸(どうき)や息切れ対策に使われる。味が薄いので、ほかのハーブと混ぜてもいい。
7:甜茶(てんちゃ) → 甜茶ポリフェノール
 古来、中国で飲まれてきた、バラ科などの木の葉を煎じた甘みのあるお茶。日本では、主にバラ科のテンヨウケンコウシの葉が原料。
8:ハマ茶 → アントラキノン類
 マメ科植物・カワラケツメイが原料。空海が好んだという逸話があり「弘法茶」の別名も。香ばしく、あっさりした味わい。
9:グァバ茶 → ポリフェノールなど

 フトモモ科に属する樹高3~4mの低木、グァバの葉と果実の皮部分を煎じたお茶。肌荒れの緩和や口臭の予防にもいい。     2015/3/11 6:30 日経

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