甦る「ドン・キホーテ」の威光 文豪セルバンテスの遺骨 スペインで発見
ミゲル・デ・セルバンテスの遺骨を調査するため、ひつぎの残骸を調べる専門家たち=マドリードの三位一体女子修道院(AP)
近代小説の幕開けともされる作品「ドン・キホーテ」を執筆したスペインの文豪、ミゲル・デ・セルバンテス(1547~1616年)のものとみられる遺骨の一部が17日、スペインの首都マドリードにある三位一体女子修道院の地下で発見された。調査団が会見で発表した。昨年4月から赤外線カメラや地中レーダー探知機といった最新技術を駆使した発掘調査を続けていた。後世の文学にさまざまな影響を与えた国民的大作家の埋葬場所が特定されたことで、深刻な経済危機にあえぐスペインでは、没後400年となる来年に向け、彼の偉業や才能が再評価され、一帯が世界的な観光地になるのではとの期待も高まっている。(Sankei Express)
*ひつぎにイニシャル
米CNNテレビやフランス通信(AFP)、AP通信などによると、法医学者や考古学者らで構成した調査チームは、マドリード市議会が拠出した約16万ユーロ(約2060万円)を使い、修道院内部の約200平方メートルの床や壁を最新技術で調査したところ、今年1月にセルバンテスのイニシャル「M.C.」が記されたひつぎの一部と骨片を発見。
さらに調査を続けたところ、地下のアルコーブ(壁のくぼみ)で16人分の遺骨を発見し、うち1人の遺骨の一部をセルバンテスのものと断定した。
調査団長を務めるスペインの法医学人類学者、フランシスコ・エチェベリア氏は「残念ながら16人分の遺骨は細かく断片化されているが、その中にセルバンテスのものが含まれていると考えている」と明言した。
さらに、セルバンテスの骨片と断定した理由について、彼には子孫がいないため、骨片のDNA検査などは行っていないとしながらも、過去の記録などを元に分析した結果、「多くの偶然の一致に加え、食い違いもゼロだった」と説明した。
*漱石にも与えた影響
代表作「ドン・キホーテ」は稀代の騎士を描いた荒唐無稽な物語だが、これを執筆したセルバンテスも数奇な人生を送った。
帰国後も金銭トラブルで投獄されたが、50代での獄中生活で構想した物語を「ドン・キホーテ」(1605年)として出版し、国民的な人気作家になった。しかし版権をタダ同然で売却したため貧困生活の末、破産。シェークスピアが亡くなった同じ週の1616年4月22日、68歳で死亡した。翌日埋葬されたが、結局、埋葬場所もスペインの平均的な住宅の玄関ホールより小さい修道院の地下のアルコーブだったことになる。
この修道院は今回の大発見を機に、来年迎える彼の没後400年に合わせ、彼を再埋葬し、埋葬場所である地下への新たな入り口を建設するという。
セルバンテスが後続の作家に与えた影響は大きい。チャールズ・ディケンズ(英国)、フョードル・ドストエフスキー(ロシア)、ジェームズ・ジョイス(アイルランド)ら世界的な大作家のほか、夏目漱石も英国留学中にドン・キホーテをむさぼり読んだと伝えられる。
ロンドン大学ロイヤル・ホロウェイ校でスペイン語圏の文化を教えるタイラー・フィッシャー講師はCNNに「今回の発掘は、セルバンテスに対する世間の注目度を一気に高め、街も活性化させる」と指摘。ドン・キホーテの威光が甦(よみがえ)り、今後、この一帯が世界的な観光名所になる可能性を示唆した。2015.3.19
15:02 産経ニュース
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