2011年9月7日水曜日

消えた一円

消えた一円 
 「3人で宿屋に泊りましてね」
 「払いが30円だったのです。それでみんなが10円ずつ出して、請求書に添えて帳場へ持って行かせたら、帳場でサービスだと云って5円まけてくれたのです。それを女中が3人の所へ持ってくる途中で、その中の2円ごまかしましてね。3円だけ返してきました」
 「それで」
 「だからその3円を3人で分けたから、一人1円ずつ払い戻しがあったのです。10円出したところに1円戻って来たから、一人分の負担は9円です」
 「それがどうした」
 「9円ずつ3人出したから、三九、二十七円に女中が2円上前をはねたので、〆て二十九円、一円足りないじゃありませんか」 (内田百閒、阿房列車)

fallacy
 一万円を質草として質入れし、八千円を借りる。質札にある額面から千円値引きして、質札を七千円で他人に譲る。そうすると、質店で借りた八千円と質札を売った七千円とで一万五千円になる。

壺算 
 ある男が瀬戸物屋で壺を買う。まず一荷入りの壺を買っていく。店に引き返して、二荷入りの壺と取り替えてもらう。二荷入りの壺は一荷入りの壺の二倍の六円。
 追加の代金を払わずに客が帰ろうとするので、店主が「その壺は六円です」と請求すると、
 「先に払ったのが三円、返した壺が三円で、合計六円になる」と言う。

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