2014年1月9日木曜日

宇宙と行き来するエレベーター



宇宙と行き来するエレベーター、中高生ら熱視線
 海外旅行に行く気軽さで、宇宙に出かけたい――
 これまで絵空事で片づけられていた宇宙エレベーターが思わぬ広がりを見せている。小型模型を使った実験競争が熱を帯び、教科書の題材にも登場。「理系人気」に乗って、中高生らを引きつけている。
 千葉県船橋市の日大習志野高校で昨年12月に開かれた宇宙エレベーターの開発イベントに参加したのは、高校生3チームと大学生1チーム。高度50 メートルの高さに浮かべた気球からロープを垂らし、エレベーターに見立てた車輪付きの小型模型を上下させる性能を競った。成功したのは三重県の工業高校 チームで、イベントを開いた「宇宙エレベーター協会」の大野修一会長(45)は「子供たちの熱意がすごい」と目を細めた。

 宇宙エレベーターは「宇宙旅行の父」として知られるロシアの科学者ツィオルコフスキーが19世紀末にまとめた理論に基づいている。アーサー・C・ クラークのSF小説などにも登場し、ロケットより安全で低コストという利点はあるが、課題は軽くて丈夫なケーブルの実現。1990年代に「カーボンナノ チューブ」が開発され現実味が増し、東京スカイツリーを建設した大手ゼネコン「大林組」が2012年に構想を打ち出すと一気に注目が集まった。
 中でも熱い視線を向けるのが中高生たちだ。理系人気の高まりを背景に、昨年11月には東京都北区で、中学、高校の理数系教員らが中心となって中高生向けのイベントが行われた。14年からは神奈川県と神奈川大が共催で、県内の高校生向けイベントを開く予定だ。

 学校教材にもお目見えし、新興出版社啓林館(大阪)が高校英語の教科書で「Space Elevator(宇宙エレベーター)」を取り上げると、 三省堂(東京)も来年度の教科書で題材に使用を決めた。同社の担当者は「生徒たちが宇宙に目を向けるきっかけになれば」と語る。
 日米両国で開発競争も進み、昨年8月に静岡県富士宮市で開かれた競技会では、高度1100メートルの世界記録も生まれたが、それでも実現にはまだ 数十年かかる見通しだ。大林組で構想をまとめた石川洋二・上級主席技師(58)は、「若い世代が中心となって開発を担ってほしい」と期待を寄せる。
 研究を進める日大理工学部の青木義男教授(56)は、「実用化を目指す過程で、社会に役立つ新技術も生まれるはず。日本の技術革新を支えるためにも、挑戦する若者を育てていかなければ」と語った。

 【宇宙エレベーター】 静止軌道上までいけることから「軌道エレベーター」と呼ばれることも。大林組の構想では、エレベーターの「かご」に当たる 部分は約30人乗りで列車程度の大きさ。時速200キロで上昇し、高度3万6000キロの静止軌道ステーションに1週間かけて到達する。(2014181936  読売新聞)

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