2011年10月13日木曜日

風呂の歴史:海外編7

風呂の歴史:海外編7

世界一周お風呂の旅は今回で一応の区切りとします。

7)アフリカのお風呂
アフリカにはいわゆる施設としての風呂はない。すべて臨時のものであり病気治療のための浴法である。
 北アフリカは地中海地方に含まれるが、サハラ以南はどんな入浴法なのか。サバンナのような乾燥地帯では基本的には風呂に入らないし、その必要もない。熱帯地方は東南アジアと同様の水浴の世界である。しかし病気の治療を目的とした蒸気浴や煙浴がみられる。

 西アフリカのシエラ・レオネやリベリアあたりのメンデ族は、クレ・ラという葉を煎じた液の蒸気の中に患者を座らせて、その蒸気を吸わせる。
 中央アフリカのマンディゴ族では、小さな小屋の中に患者を入れ、そばに火の燃え残りと薬草の入った壺を置く。そして小屋の上を隙間のないようにござで覆う。すると残り火の煙でいぶされ、かつその火で汗をかき、さらに薬草の蒸気も出るという具合で熱気・蒸気浴の煙浴である。

 北東部バンツーのガンダ族では、熱病の治療に熱気浴を用いる。下コンゴのバフィオテ族では、家の床に穴を掘り、その穴の周りの壁土にバナナの葉を張り付け、その穴に薬草を混ぜた湯を注ぎ込んで湯浴する。
 ベルギー領アフリカでは、土中に患者を埋めその上で火を燃やす。まさに土浴ともいうべき発汗浴である。子供のできない夫婦の場合、ござの囲いの中で火を焚き、数種類の木の根を鍋で煮て、ヤギの子宮を鍋の下にくべる。そうした中で汗をかくという呪術的な煙浴まである。
アフリカ南部のナマ・ホッテントット族では、硫黄温泉を沐浴と蒸気浴の両方に用いた例もある。


 これまで世界の風呂の歴史をざっと見てきました。
 世界各地でさまざまな形の風呂があり、その地域独自の風呂もあれば、互いに交流があって共通の風呂もあります。入浴法も熱気浴、蒸気浴、熱湯浴、水浴、煙浴などいろいろです。

 風呂の変遷はそれなりに興味がそそられておもしろいのですが、いったい風呂というものはなんのために生まれたのか。
 風呂というもののそもそもの意味、すなわち風呂の起源について考えたとき、「恍惚」(シャーマニズム)から派生したという仮説があります。シャーマンあるいはシャーマンとともにいた人が、トランス状態にはいるための技法のひとつとして成立したというわけです。

 エキスモーの風呂にみられたように、熱さと酸欠と煙で男達は息も絶え絶えになるまで家の中の風呂に我慢してとどまっている。こういうことはそこによほどの意味を見出さない限り、繰り返し行わないであろう。気持ちがいいとか、たまたま病気が治ったぐらいでは繰り返されるものではない。このもうろうとした状態の意識にその意味がある。
 それはトランスにはいりやすい状態、すなわち恍惚とした状態である。
狩猟の安全や成果、病気の治療であれ、人の生存に関わることは、トランス状態に入ったシャーマンの天上の神のご託宣により決せられていたのである。だからトランス状態に入ることはきわめて重要なことなのである。

 トランスに入る方法にはいろいろある。
 単調な太鼓の音に合わせて歌い踊る、あるいは激しい身振りを続けるうちに一種の陶酔感、無我の境地を感じるのも、逆に身体を痛めつける苦行、例えば皮膚に傷をつけて放血したり、断食や極度の疲労なども、恍惚とした状態に入れる方法であった。
 さらに薬物を飲んだり食べたり、あるいは吸ったりして意識をもうろうとさせる方法もある。風呂と幻覚剤を組み合わせた例もある。焼き石に大麻をくべたり、風呂の中でタバコを吸うこともしていた。
 毒キノコやサボテン、コカの葉も恍惚に導く強力な手段であった。これらがすべて入浴と結びついていたというわけではないとしても、十分に推測しえることである。

 私達日本人が風呂にどっぷりと浸かったとき、特に寒い冬場などには、大きなため息とともに「あー極楽、極楽」と言葉を発するのも、一種の恍惚の精神状況になっているのかもしれない。(http://www6.ocn.ne.jp/~osaka268/rekisinonagare.htm)
 

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