不潔の歴史
『不潔の歴史(Dirt on Clean)』を読むと、毎日お風呂に入れることが奇跡のようにありがたいなぁ~と感謝したくなるはずだ。 欧州ではギリシャ・ローマで賑わっていた水浴・入浴の習慣は、暗黒の中世ですっかりと途絶えたが、十字軍の遠征によって「トルコ風呂」として再発見される。しかし14世紀以降に大流行したペストが「毛穴から入り込む」と信じられたため、肌を露わにする習慣は再び立ち消えとなる。
欧州の香りは均一ではない。名実ともに最も不潔な地域として異臭を放ったのはフランスとスペイン。主な理由は、①温暖な気候、②イスラムへの恐怖と異端審問、の2つだ。
イギリス生活では、仮に夏場に毎日シャワーを浴びないとしてもさほど悲惨ではないが、温暖な地中海気候の地域ではそうはいくまい。フランスのルイ14世の入浴は生涯に1度こっきりだったと言われているので、香水が発達して当然だ。
同じ地中海気候の中でもスペインとフランスがダントツで不潔な理由は、スペインでイスラムに対するレコンキスタ(失地回復運動)が進行する中で、「入浴の習慣はイスラム的」であるとして全面禁止にされたためだ。「風呂に入る」ことが異端審問の対象だったのだ。
「恋に落ちたシェークスピア」や「エリザベス」に漂う香りよりも、スペインのサンチアゴ大聖堂やフランスのシャルトル大聖堂に充満していた匂いを想像できるだろうか。いかに強烈な刺激であれ、長時間続くと感覚は麻痺していくものだが、教会という密閉された空間に、生涯未入浴の巡礼者が大挙してひしめき合ったとき、酸欠やガス中毒で斃れた人はいたでしょうね・・・。
■この本から学ぶ教訓
紀元前5世紀のギリシャで医学の祖ヒポクラテスが「入浴の達人」として知られていた。温浴・冷浴の組み合わせによって4つの体液(血液・粘液・黄胆汁・黒胆汁)のバランスを取ることが健康の要であると提唱。これは現代人がもっと取り入れるべき。現代人はアメリカの石けん革命(1920年代)を引き継いでいるが、無臭化社会や無菌化社会の行き過ぎにはご用心。
http://www.mypress.jp/v2_writers/hirosan/story/?story_id=1906255
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