風呂の歴史:海外編3
3)アジアのお風呂
インドのモヘンジョ・ダロに、グレートバスと呼ばれる紀元前2500年頃の遺跡が見つかっている。縦51m幅30mの大きな建物の中央部に、長さ20m幅10m深さ2.5m程の大きさのバスは、入浴の楽しみのためではなく、宗教的な浄めが行われた場所であったらしい。
仏教の始まりの頃(紀元前6世紀頃)僧院の規則集の中には、風呂のことを「ジャンターガラ」といい、別の文献では「ガンターガラ」と記している。推測すると、まず風呂のある家と水浴びをする井戸を取り囲む垣根が施されている。風呂のある家は一軒家のようで、ホールとポーチが付属し、すぐ近くに屋根付きの部屋を持つ井戸がある。ポーチからホールに入ると、脱いだ服をかけるための紐や竹が用意されている。浴室はしっくいを塗って気密性高くしてある。壁は細かい木を編んで、屋根もしっくいを塗って熱気や蒸気を逃がさないようにしてある。床には煉瓦、石、木の枝が敷かれ、囲炉裏が置かれ熱気をつくる。浴室に蒸気を送るパイプも引いてあり、熱気浴、蒸気浴を行っていたと思われる。
風呂に入るときは、香りのついた粘土を顔に塗り、身体にかける水を持って入る。火の近くに椅子を置き座る。十分に汗をかいた後に井戸で水を浴びる。インドの医学書にも熱気浴、蒸気浴と思われる発汗法が書かれている中には、薬物の煎液を釜あるいは槽に入れて入るという薬風呂らしいものもある。インドではこのように様々なタイプの風呂が出現していたようである。
中国では、古くから水浴がなされていたようだが、浴槽に浸かる風呂もあったらしい。昔の入浴の方法は、薄い布と少し厚手の布の二枚を用意して、薄い布で身体の上部を洗い、厚めの布で下部を洗う。浴槽を出ると菅(すげ)で織ったむしろを踏んで垢を擦る。浴室でその足を洗ってから、蒲(がま)のむしろを踏み、湯上りを着て堂に上がって酒を飲む。浴後のどが渇いて、酒を飲むということから温浴であったと考えられる。
時代が進み公衆風呂として[浴堂]というのがあった。大きな木製の浴槽があり湯は釜で温められていた。上がり湯もあった。この種の風呂は庶民が入る風呂で、お金のある人は[浴堂]にある[盆湯]と呼ばれる個室で沐浴していた。中国の文献に残る古い入浴風景を描写してあるのを見ると、日本の入浴風景とよく似ている。湯はそれほど熱くなかったようである。
現在の中国では、[澡堂]あるいは[浴堂]と呼ばれる公衆風呂があり、男性だけが入り女性の風呂はないそうです。一般家庭には風呂があり、洋式が多く日本式の風呂もあるらしい。しかし浴槽のないときは、たらい(木盆)で身体を洗うそうです。
朝鮮半島での風呂は、現在の韓国に見ら れる公衆風呂は日本から入ったもので、その形式も日本の銭湯に近いものである。日本経由で入った[サウナ・タン(湯)]と呼ばれるサウナも盛んである。薬草の香りがするあたりが韓国風である。
朝鮮半島の在来の風呂には二種類あったらしい。一つは桶あるいはたらいでの沐浴で、その簡素な形が川での沐浴である。
今ひとつは[汗蒸(ハンジュウ)]である。15世紀より前から用いられていたようである。[汗蒸]とは、石を積み、泥土で塗り固めた窯状の風呂で上部あるいは四方の側方に煙だしがつき、入口の部分が少し張り出している。この窯状の上を直接わらで葺いたものもあれば、家を建てて窯を覆う場合もある。窯の高さ約3m直径約4m、入口の高さ1,5m幅1,7m程の大きさで、普通は5人~10人くらいが一度に入る。
この窯の中で枯れ松を燃やし、燃え尽きたところで戸を閉じ、15分程して灰をかき出し、濡れたむしろを敷いてから中に入り発汗する。入るとき湿した布で顔を覆ったり、頭にかぶったりする。裸で入るときもあれば腰に布を巻いたりもする。女性は下着を着けたまま入る。たっぷり汗をかいた後外に出て、湯または水で汗を流し休息をとる。これを何度か繰り返す。もともとは病気治療のためであったらしい。
東南アジアでは発汗浴はなかった。この地域は熱帯であり自然の状態でも汗をかく。しかも周りには豊富な水があるから水浴が一般的である。
インドネシアでは水浴のことを[マンディ]といい、実に頻繁にマンディをする。身を清潔にするためである。たっぷりと水がたまった水槽から手桶でざあっとかぶるのがいいらしい。
バリには立派な公衆の水浴場がある。温泉もないわけではないが、暑いところでは熱い湯に入ってマンディをするなど思いもよらないから、自然に湧き出した温泉はほとんど使われていない。インドネシアでも高地になるとかなり寒い。
ジャワやスマトラの山地では暖かい昼の間にマンディをするか、あるいは湯を沸かしてその湯で身体を拭く。スマトラ北部のタパヌリ高原では温泉を利用するところもあ る。ぬるめの湯だがその地の人には十分に熱い湯なのであろう。
オセアニアでは海または川での水浴が一般的である。しかし生活の近代化とともにシャワーが普及するにつれ湯の利用もあたりまえになるのであろうか。(http://www6.ocn.ne.jp/~osaka268/rekisinonagare.htm)
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