2011年6月4日土曜日

ソユーズ宇宙船:不思議な「験担ぎ」の数々…

ソユーズ宇宙船:不思議な「験担ぎ」の数々…
 宇宙飛行士の古川聡(さとし)さん(47)が今月8日、ロシアのソユーズ宇宙船に乗り込み約半年間の旅に出る。宇宙船のクルーといえば最先端技術 を駆使する集団だが、飛行士たちが気にする「験担ぎ」があるという。

 打ち上げ台へと向かうバスを降りて、おもむろに車輪におしっこをかける宇宙服の男たち--。この突拍子もない「伝統儀式」は、人類で初めて宇宙飛 行に成功した故ユーリー・ガガーリン飛行士が、打ち上げ直前にしたことをまねたものだ。ガガーリンは初飛行から50年が過ぎた今も「ロシア宇宙業界の最大 の英雄」。それだけに、同氏にまつわる数多くの験担ぎが、エピソードとして残されている。さすがに女性飛行士には課されていないが、中には尿を容器に入れて持参し、車輪にかける 女性もいるそうだ。

 さらに出発前夜の乗組員は、ソ連時代の人気映画「砂漠の白い太陽」(69年)を必ず見る。これは73年に飛行した「ソユーズ12号」の乗組員が打ち上げ前夜に鑑賞し、全員が無事に帰還したことから始まった。その2年前(71年)には、地球へ戻る飛行で、乗組員3人全員が船内で窒息死している。

 逆に、飛行士が避けようとするジンクスもある。ガガーリンは68年、戦闘機の訓練飛行時の墜落事故で命を落とした。その当日の朝、忘れ物に気付い て自宅に戻ったことが分かっている。ロシアではもともと忘れ物を取りに帰ると悪いことが起きるという迷信があり、その後の宇宙飛行士は、忘れ物をしても戻 らないようにしているという。

 一方で時代とともに変わっていく儀式もある。帰還した飛行士は従来、バイコヌールにある「宇宙飛行士の小道」と呼ばれるホテル裏庭の敷地に、ニレの苗木などを植えており、ガガーリンが植えた木も成長している。しかし最近では伝統が変わり、古川さんも打ち上げ前の1日に植樹を済ませた。これだけ多くの験を担いで旅立つ宇宙飛行士。11月下旬に無事に戻ってくることを願うだけだ。
(毎日新聞 最終更新 6月4日 12時24分)

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