緑茶 2/2
緑茶の続きです。今回は各お茶産地の特徴を示します。
鹿児島茶(鹿児島県)
知覧茶、溝辺茶などの銘柄で有名な「鹿児島茶」。平坦な茶園が多く摘採の効率化が進んでおり荒茶生産量は静岡県についで全国第二位を誇ります。温暖な気候を活かし新茶の摘み取りは4月上旬から始まるため「日本一早い新茶」の産地としても有名です。いろいろな品種が栽培されている緑茶の宝庫です。鹿児島のお茶は南国の強い太陽を浴び、味にコクがあり、濃厚な旨みがあります。かぶせ化(上に藁などのおおいをして育てる)が進み水色も深みがある濃い緑色のお茶が多いです。
宮崎茶(宮崎県)
江戸時代の文献『三国名勝図会』には県南部・都城の茶の記載があります。『霧島山の大麓にして、渓谷多く、雲霧常に深く、古来都城は霧海ともいう。故に茶の品上好なり。』江戸の頃から、茶の栽培に適した都城茶はその名声を広めていたようです。北の高千穂では、鉄釜を使った昔ながらの釜炒り茶が残っています。香ばしく、さっぱりとした味のお茶で、食事の後にも適したお茶です。
嬉野茶(うれしのちゃ)(佐賀県)
明から渡来した中国の陶工が陶器を焼きながら、自分たちが飲むために茶の栽培を始めたのが嬉野茶の始まりだといわれています。また、佐賀県の脊振山は宋より帰途した栄西禅師が、日本で初めて茶の種をまいた、日本茶の発祥の地として有名です。嬉野茶のルーツである、釜炒り手揉み茶は明時代に中国から伝来した製法を、そのまま現代に伝えています。嬉野茶はこの釜炒り手揉み茶と煎茶の長所を併せ持った蒸し製玉緑茶として生産されています。古い歴 史と新しい技術が生み出した優れた銘茶が嬉野茶です。
八女茶(福岡県):玉露の生産量全国一位
八女玉露:玉露と煎茶の名生産地として名高く古い歴史を持つ福岡県、八女地方。八女市を中心に星野村や黒木町などで生産されている玉露は全国生産量の約半分を占め日本一である事が知られています。
栄林周瑞禅師が筑後国鹿子尾村(今の八女郡黒木町笠原)に霊厳寺を建立し、明国から持ち帰ったお茶の種子をまいてお茶の製法を伝えたのが始まりといわれています。長崎で外国人貿易商による九州のお茶の取引が行われたことで、八女茶の生産が急激に増加しました。八女茶は全国的にも高級産地として有名で、甘く芳醇な香りとまろやかでこくのある味は全国の幅広い皆様に支持をされています。
大和茶(やまとちゃ)(奈良県)
大同元年(806年)に弘法大師が唐より帰朝の際、茶の種子を持ち帰り、宇陀に播種して製法を伝えたのが大和茶の始まりだといわれます。大和高原は、標高300m以上の高冷地で、お茶が育つぎりぎりの条件なので、お茶がゆっくりと育っていき、香りが高く、渋みの中に旨みが残る後味すっきりの緑茶 です。
宇治茶(京都府):高級茶の産地として名声高い「宇治茶」
京都府の宇治近郊、和束町や山城一帯は代表的な高級茶の産地として有名です。煎茶を中心に生産されていますが玉露やてん茶(抹茶の原料)、抹茶など国内における高品位なお茶の産地として有名です。
鎌倉時代に栄西禅師より茶種を譲り受けた明恵上人が、京都栂尾の地にまき、宇治など各地に植え広めたのが始まり。室町時代、足利幕府の奨励を受け宇治茶の名声が世に広まりました。
江戸時代中期に宇治田原湯屋谷の永谷宗円が蒸して揉み乾かす現在の煎茶製法(青製煎茶製法)を創案しました。宇治茶の製法は近年の静岡茶の深蒸しに比べ浅蒸しと呼ばれ、お茶を出す時の水色は黄色みをおびた緑色です。薄味ですが、のどを通るとお茶の旨みが広がり、すがすがしい香りを楽しむことができるお茶です。
伊勢茶(三重県):1千年の歴史を持つお茶の名産地
静岡、鹿児島に次いで全国第三位のお茶生産量の三重県。煎茶、深蒸し茶、かぶせ茶などを主に生産しています。特に「テアニン成分」を含むほのかな甘みが特徴のかぶせ茶は全国2位、シェア30%以上の生産量を誇ります。
北勢茶(ほくせちゃ)(三重県)
北勢地方の茶の歴史は古く、今から一千年もの昔、平安時代にさかのぼります。鈴鹿市の隣の四日市市の浄林寺の僧、玄庵が弘法大師直伝の製茶法を伝承し、茶樹を植栽したのが始まりとされます。江戸時代には、参勤交代のため東海道を往来する諸大名が茶を買い上げたことで、優れたお茶の産地となりました。ただし、今のように茶業が発展したのは横浜港開港後に茶が輸出作物になってからのことです。品種は『やぶきた』が主流で、香り高い上質な『煎茶』と玉露の味わいを持つ『かぶせ茶』が中心の産地です。
静岡茶(静岡県):日本最大のお茶の産地
日本のお茶の40%以上の生産量を誇る静岡県。県内には牧の原台地、富士山麓、安部川、天竜川、大井川などお茶の栽培に適し自然環境を活かした銘産地が並びます。主にやぶ北茶などの煎茶や深蒸し茶の生産が主流ですが岡部町は玉露の産地としても有名です。さらに、静岡茶の中でも、川根茶、掛川茶、藤枝茶と産地限定の地域ブランドを冠したお茶が存在します。
本山茶(ほんやまちゃ)(静岡県)
静岡茶の発祥は、北部の安部川流域とその支流の藁科川流域の山間地域にあります。今から800年ほど前(1237年)宋の国より茶の実を持ち帰った聖一国師により、この地域にお茶が導入されました。この静岡茶発祥の地域のお茶は『本家本元』という意味で『本山茶』と呼ばれるようになりました。本山茶は山間地茶特有のさわやかな香りが高く味にはこくがあり上級茶として愛用されています。徳川家康公は本山茶をこよなく愛し、その後も代々将軍ご用達のお茶として指名されました。
狭山茶(埼玉県):狭山火入れといわれる独特の火入れが特徴
関東エリアの銘茶の産地として知られ埼玉県の狭山地方(入間市、所沢市、狭山市など)で生産されるお茶の総称です。埼玉県は寒いところなので、静岡や九州と違いお茶の葉は1年に2回しか摘みとりません。東京など関東エリアで愛飲されています。
狭山茶が本格的に始まったのは江戸時代の中ごろからで、おもに江戸の人々にお茶が飲まれ始めるようになってからです。その後、横浜港開港とともにアメリカなどに輸出され、狭山茶は発展しました。『色は静岡、香りは宇治よ、味は狭山でとどめさす。』と狭山茶摘み唄にも歌われる、狭山茶の深い味わいは『狭山火入れ』という独特な仕上げ技術により、甘くて濃厚なお茶になるのです。
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