科学捜査の新たな「指紋」、体内細菌群で個人特定の可能性
米研究
*サンプルをセットされた電子顕微鏡(2010年2月24日撮影、資料写真)
【AFP=時事】腸内バクテリアなどの個人の体内や皮膚上に生息する細菌のコロニーは、指紋と同様に個人を特定する手がかりとなる可能性があるとの研究結果が11日、米科学アカデミー紀要(Proceedings of the
National Academy of Sciences、PNAS)に発表された。
体に生息する細菌に基づいて個人をどの程度識別可能かについて調べたのは、米ハーバード大学(Harvard University)が主導した今回の研究が初めてだ。体内細菌は、個人の年齢、食事、居住地、健康全般などによって大幅に異なる可能性がある。
論文の第一執筆者で、同大のエリック・フランゾーサ(Eric Franzosa)研究員(生物統計学)は「ヒトDNAサンプルをヒトDNA『フィンガープリント(指紋)』データベースに関連付けることは、法遺伝学の基礎を成すもので、現在は数十年の歴史を持つ研究領域の一つとなっている」と語る。「人体に生息する細菌のDNA配列を用いることで、ヒトDNAサンプルを必要とせずに、同種の関連付けを行えることを明らかにした」
便サンプルは特に信頼性が高いことを研究チームは発見した。サンプル採取から1年後に、腸内バクテリアによって全体の最大86%の人々を特定できた。皮膚サンプルの信頼性はこれより低く、サンプル採取1年後に全体の約3分の1の人々を個人照合できたという。だが、サンプル照合が不可能なことはあっても、誤認識はほとんど発生しなかった。大抵の場合、照合ができるかできないかのどちらかで、違う人が特定されることはめったになかった。
■倫理面の問題提起も
今回の研究は、米国立衛生研究所(US National Institutes of Health、NIH)が主導する「ヒト・マイクロバイオーム・プロジェクト(Human Microbiome
Project、HMP)」に便、唾液、皮膚などのサンプルを提供したドナー242人のうちの120人のデータに基づくものだ。
ドナーのマイクロバイオーム(細菌叢、さいきんそう)に基づく個人コードを生成するため、コンピューター科学アルゴリズムが用いられた。
この個人コードに対して、追跡調査時に採取した同一人物のサンプルおよび別人のサンプルとの照合を行った。
研究チームによると、ヒトマイクロバイオームのサンプルを複数のデータベースで横断的に照合することが可能であることが今回の研究で判明したという。
だが研究チームは、倫理面の問題提起も行っており、今回の手法を実践することで、性感染症の有無などの取り扱いに注意を要する個人情報が暴露される恐れがあると警鐘を鳴らしている。性感染症は、被験者自身のDNAや同意がなくても、マイクロバイオームから検出可能だ。
論文主執筆者のハーバード大のカーティス・フッテンハワー(Curtis Huttenhower)准教授(計算生物学・生物情報学)は「純粋に細菌のDNAから情報プライバシーに関する懸念が生じる可能性は非常に低いとはいえ、そうした問題が理論的に発生する可能性があることを研究者らが理解しておくことが重要になる」と話している。2015.05.12 AFPBB News
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