福島第一原発 米専門家が語る現状と対策
(CNN) 東京電力福島第一原子力発電所の事故発生から約2年半。汚染水漏れの発覚など深刻な状況が続き、東電の対応に「場当たり的」との批判が集まるなか、日本政府はこのほど対策に国費を投入する方針を明らかにした。福島第一原発で何が起き、対策の見通しはどうなっているのか。米国で原発の操業に関わった経験を持つ専門家、マイケル・フリードランダー氏が見解を語った。
2011年の東日本大震災後の津波で外部電源を喪失し、3基の原子炉で炉心溶融が起きた福島第一原発。1986年の旧ソ連・チェルノブイリ原発事故以来、最大規模の原発事故となった。
原子炉の冷却に使われる水や、原子炉建屋に流れ込む地下水など大量の汚染水は、敷地内に設けられた約1000基のタンクに貯蔵され、毎日約400トンずつ増加している。
東電は先月、このうちの1基から約300トンの汚染水が漏れ出したと発表。原子力規制委員会はトラブルの深刻さを示すINES(国際原子力事故評価尺度)をレベル3(重大な異常事象)に引き上げた。その後さらに、別のタンクや配管からも高い放射線量が検出されている。
水漏れが見つかったのは、汚染水の増加に対応するため短期間で増設されたタンクのひとつだった。同じ型のタンクは350基あり、同じように劣化が懸念される。
「急ごしらえのタンクが何年かたってだめになるという流れは、東電の場当たり的な対応を象徴している」とフリードランダー氏は語る。同氏は「当時の状況を考えればほかに選択肢はなかった。その点で東電を責めようとは思わない」と話す一方、「毎日400トンの水をあてもなくくみ上げ続けるわけにはいかない。東電の対応には持続性がない」と指摘する。
タンクからの水漏れとは別に、東電は7月、建屋に流れ込んで汚染された地下水が海へ流出していることを認めた。東電は流出を防ぐため地中に遮水壁を設置したが、それでは食い止められないことが分かった。
漏れている汚染水の放射線量について、フリードランダー氏は「周辺地域や東京に危険が及ぶレベルかといえば、正直言って答えはノーだ。一方で再び地震が起きてタンクのひとつが破裂でもした場合、大変な事態になることは確かだ」と話す。
さらに現場では作業員の被ばくリスクも懸念される。汚染水はいずれ海へ放出するしかないとの見方を示す専門家もいる。「その場合、汚染水は短期間のうちに検出できないほどまで拡散するだろう。ただし、放出前に現在の技術で可能な限り浄化するのが良心的なやり方だ」と、フリードランダー氏は話す。同氏によると、トリチウムを除くほとんどの放射性物質は、一般的な浄化技術で検知できないレベルまで減らすことができる。
原子炉建屋へ新たに流れ込む地下水を止めるため、東電が検討を進めてきたのが「凍土遮水壁」という工法だ。建屋周辺の地中にパイプを埋め、その中で冷却液を循環させる。トンネル工事などに使われる技術だが、これほど大規模な工事の前例はない。
フリードランダー氏は、同工法が工事期間中など一時的な対策向けで、長期的解決にはならないとの見方を示す。唯一の現実的な対策は汚染水を放出できるレベルまで浄化することだと、同氏は主張する。
現場の事故処理作業にはこの後40年もかかるといわれる。その期間中、外部から地下水が流れ込まないようにすることは、住宅の地下室の浸水防止と同じ技術で可能なはずだと同氏は話している。2013.09.06
Fri posted at 17:59 JST CNN
0 件のコメント:
コメントを投稿