2015年8月29日土曜日

宇宙の果てを見たい

宇宙の果てを見たい
地球から130億光年以上のかなたにある「深宇宙」で今、新たな発見が相次いでいる。その最前線に立つ日本人天文学者が、大内正己だ。
 2005年から2007年にかけて実施した、ハワイにある日本のすばる望遠鏡の観測で、一つの不思議な天体が発見された。それはくじら座の方角、地球から130億光年のかなたにある直径55000光年のガス雲に包まれた、巨大な天体だった。
 地球から130億光年離れた場所の観測は、130億年前の天体を見ていることになる。宇宙の歴史は約138億年。ビッグバンによる宇宙誕生からわずか8億年ほどの「古代の宇宙」に、これほど巨大な天体が発見された報告例はそれまでなかった。この発見のニュースは、世界中に報じられた。
「ヒミコ」と名づけられたこの天体を発見した天文学者こそが、日本における遠方宇宙観測の若き第一人者、大内正己だ。

すばる望遠鏡で世界と互角に渡り合う
 実は日本の遠方宇宙観測は長い間、世界に大きく後れをとっていた。1999年以前、日本最大の望遠鏡は岡山県にある口径約2メートルのものだったが、その頃、米国ではすでに口径10メートル級の望遠鏡が活躍していた。
 だが1999年に、口径8.2メートルのすばる望遠鏡が稼働したことで状況が変わる。そして、大内が天文学者として活動を始めた時期と、すばる望遠鏡が稼働した時期は、ほぼ重なっている。「すばるが稼働したおかげで、自分は世界の天文学者と互角に渡り合うことができた。その意味では幸運だった」と大内は語る。


 最遠の銀河を発見しようという競争は激しい。残念ながら大内らの記録は、わずか数カ月で破られてしまった。正確な距離測定ができていないものも含めると、現時点で発見されている一番遠い銀河は、ハッブル宇宙望遠鏡によって観測されたMACS0647-JD。この銀河は、きりん座の方向の1339200万光年先にある。この記録も、いつ破られてもおかしくない。 ナショジオ日本版 20159月号

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