2010年8月9日月曜日

被爆4世の女子高校生、司会の大役 長崎・平和祈念式典

被爆4世の女子高校生、司会の大役 長崎・平和祈念式典
平和祈念式典の司会を務める山下花奈さん=9日午前、長崎市松山町の平和公園、溝越賢撮影
 平和祈念式典では、長崎工業高校の放送部員2人が司会を務めた。そのひとり、部長の山下花奈さん(17)は被爆4世。「司会者に選ばれて、初めて意識した」という。
 慰霊の曲の演奏がおごそかに響く。午前10時43分、山下さんが参列者に向けてアナウンスした。
 〈ただいま奉安しています原爆死没者名簿には、3114人のお名前が記されています〉
 リハーサルで台本を手にした時、この部分が強く印象に残った。「被爆を体験した語り部の話を聞ける機会も減っていくんだ」と思った。

 山下さんは爆心地から1.2キロの淵中学校出身で、毎月9日に平和学習の発表会があった。被爆クスノキがある山王神社は高校への通学路だ。「被爆や平和について考えるのは自然なこと。それだけに意識もしなかった」

 曽祖母のツヤさん(93)に初めて被爆体験を聞いたのは小学生の時。学校の宿題だった。曽祖父の嶋一さんは勤め先の三菱製鋼所で被爆。ツヤさんも原爆投下の3日後、疎開先から夫を捜しに市内に入って被爆したという。
 「電車から降りると『水を下さい』といって足をつかまれた。周りにはごろごろ死体が転がっていた」とツヤさんは振り返る。救護所に運ばれていた嶋一さんの背中は一面ひどいやけどだったという。嶋一さんは山下さんが3歳のとき、86歳で亡くなった。
 「ひいおばあちゃんは仏壇の前で涙声で語ってくれた。『忘れないで』と言われた」と山下さん。その後もいろんな人の証言を書き留めたが、自分が伝えなきゃとまでは考えていなかったという。
 「私は被爆者の声を聞ける最後の世代かもしれない。原爆の恐ろしさを、5世、6世にも伝えていきたい」と話した。(江崎憲一) 2010年8月9日11時54分 朝日

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