2008年7月12日土曜日

4年前に書いたものです

学内広報誌編集者から「研究トピックス」欄への原稿依頼を受け、学生をエンカレッジし院生勧誘の下心もあって記したものです。結局のところ、活字数を減らせと言われ拒否したため陽の目を見ませんでした。その時は「失礼な連中だ」と怒り心頭に発したけれど、学生に知らしめるのを優先するなら、こっちが折れて然るべきだったのかな?それとも喧嘩両成敗かな?? 
 したがって本邦初公開!その後大学広報誌からの原稿依頼はばったり途絶えたまま!!

 

研究は本当に面白いのです――間違いない!(このフレーズが流行っていた頃のこと)

元気な学生諸君に伝えたい。自分で問題を設定し、解決法を考え、答えを導き出し実証する、そしてそれを世界に問いかけ自己主張する。これが研究の一連の流れです。したがって、活躍の舞台に国境はありません。時にライバルが真の友にもなります。その意味では、芸術やスポーツの世界となんら変わりません。

答えが既に存在し、そこに如何に早くたどり着くかと言うルーチンな世界とは明らかにベクトルが違います。だから秀才よりもむしろどこかおかしな奴のほうがマトモに見える世界なのです。もしかしてオレがそうかも知らんと思うキミなら、やってみたまえ研究を。

そこにモチベーションがあれば勉強・学問が楽しくてしょうがなくなる筈だ。自分が面白いと感じることをやればいい、不思議に思うことをやればいい、独自のアイディアが浮かんでくる。それでいいんだよ、そこが大事なのだ。

 私は研究活動を通してこんなことを体験しました。ほんの一端を紹介したい。

経済的な面でまだ国際会議参加が難しい4半世紀以上まえ、制がん性白金錯体の研究を行っていた時代のこと。オランダの大家は開口一番こう言った「おお、こんなにも私にとってファミリア―な名前なのに、会うのが初めてとは大変な驚きだ」。私は嬉しかった。自信になった。

アメリカのお偉いさんとは残念ながらあまり気が合わなかった。

ドイツの先生は優しい人でいろいろ議論し観光案内までしてくれた。イタリアの有名教授とはすぐに仲良くなって、星空の下、ワインを酌み交わしながら話し込み、料理に舌鼓を打った。そうそう、変なことを思い出す。確かその折「ムール貝のスープをとろう」と聞こえたが、出てきたものは、山と積まれたムール貝とあまりに少ないスープに驚いた(今にして思えば白ワイン蒸しではなかったかとも思う)。美味しかった。別れ際、「私の北イタリアの別荘を好きな時に使ってくれ」と言ってくれた。

論文上は馴染みのある名前ばかりだが、みんな初対面だった。共通点は研究興味のみ。

今はアルツハイマー症に関わるアミロイドタンパクの研究と、ナノパーティクルであるリポソームを用いる標的化薬物送達法の研究を行っている。これらの研究を通して、少しでも人類社会に貢献・還元できるようになりたいと言うのが、偽りの無い今の心境であります。

 元気な学生諸君一緒にやってみませんか?

 一方、昨今の諸々の社会情勢を見るにつけ、今こそ日本は、新渡戸稲造、内村鑑三、矢内原忠雄を必要としている時代ではないかと痛感しています。元気な学生諸君、志を高く持って実践して下さい。今のキミなら何でもできる。

2004.4記)


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