地震と免震構造 2/3 地震・雷・火事・親父
倒壊はしないがゆれる耐震構造
【耐震構造の特徴】
耐震構造の特徴は柱、梁を太く頑丈につくり、建物自体で地震に耐えて建物構造部を守るという考え方です。阪神・淡路大震災で評価された耐震構造ですが、建物の倒壊を免れたとしてもゆれによる室内の家具などの転倒や間仕切壁の破損、設備配管の損壊など、建物自体に大きなダメージを受けてしまうケースが多く見られました。実際にその後の居住に耐えられなかったり、建物の資産価値がなくなったり、転倒した家具の下敷きになって多くの方が亡くなられるなど問題点は多く残りました。
【免震構造の特徴】
1980 年代から耐震構造のほかに新しい構造システムとして免震構造や制震構造という考え方も現れました。免震構造は基礎部分に設置した積層ゴムの部分で地震力をカットし建物に伝えないという考え方です。耐震構造と免震構造の徹底的な違いは建物のゆれやヒビが出るか出ないかです。免震構造の考え方は「壊れない、そしてゆれない」なのです。
ゆれないということは建物のダメージだけでなく家具の転倒も少なくなります。室内被害を少なく抑え、室内の人間の安全性に優れます。免震工法では大地震のときのゆれの強さが通常の1/3~1/5になり建物自体のダメージも小さくすみます。
地震には威力を発しない制震構造
【制震構造の特徴】
制震構造はエネルギーを吸収するダンパーをつけています。いかにゆれを少なくするかという考え方に基づいています。高層鉄筋コンクリート造の重い建物の場合は各階にダンパーを設置し、鉄骨造で塔状の軽い建物では最上階にダンパーを設置します。風ゆれに効果があるとされています。制震構造は地震時に大きくゆれるため、家具や設備配管の破損の恐れがあります。
免震構造と制震構造、地震に強いのはどちらか?
【適している建物形状】
■免震構造
・重くて硬い建物。マンションに多い鉄筋コンクリート造に向きます。
・塔状比(建物高さ/幅)が、4以下の建物が向きます。
■制震構造
・軽くてやわらかい建物。耐震壁がついている建物には不向きです。
・塔状建物です。風ゆれ対策などに効果を発揮します。
【耐震性能】
■免震構造
・耐震構造の1/3~1/5(半分以下)に地震の力を軽減します。
・ゆっくりゆれるため家具や設備等の転倒・破壊を防ぎます。
■制震構造
・耐震構造の70%~80%の地震の力を軽減します。
・激しくゆれるため家具や設備等の転倒・破壊の恐れがあります。
【竣工後のメンテナンス】
■免震構造
・定期点検および臨時点検が必要です
■制震構造
・点検フリーです。
【主な注意点】
■免震構造
・建設コストが5%程度高くなります。建物の階数が増えると差が縮まります。
・積層ゴムの部分が動くため敷地周辺に40cm~50cm程度の余裕が必要です。
・軟弱地盤には向きません
■制震構造
・制震装置をつける位置や数に十分配慮する必要があります。
地震対策では免震構造が優れている
このように免震構造と制震構造を単純に比較すると地震対策では免震構造に軍配が上がるようです。建物自体が壊れないという点も「財産を守る」という点で優れています。
いずれにせよ、免震構造や制震構造を選択しているマンションは、地震に対してより安心なマンションであることは確かです。命を守ること、財産としての住まいを守ること、そのような観点からも免震マンション、制震マンションはこれから注目を浴びてゆくことになるでしょう。
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