魚竜の祖先、水陸両生の化石を発見
5日に発表されたこの新種は魚竜の進化の大きな穴を埋める存在だ。魚竜はイルカに似た捕食動物で、約2億年 ~1億4500万年前のジュラ紀の海で繁栄した。大きいものは全長20メートルに達する。
魚竜が陸生から海生に進化したことはすでに知られていた。陸に暮らす祖先の化石が発見されているためだ。 海に暮らす魚竜は泳ぎが速く、“海の怪物”という愛称を持つ。
そのため、古生物学者たちは陸生と海生の間を埋める種が存在するに違いないと考えてきた。例えば、クジラ や同じく古代の海生爬虫類である首長竜も陸生から海生へと進化しており、それを証明する水陸両生の種の化石 が発掘されている。
そして最近、中国、安徽省で発掘作業を行う研究チームが探し求めていたものをついに見つけ出した。2億4800 年前、三畳紀の初期に生きていた全長0.5メートルの動物の化石だ。
「Nature」誌に発表された研究論文によれば、カートリンカス・レンティカーパス(Cartorhynchus
lenticarpus)と名付けられたこの生き物は短いくちばしと重い体、異常に大きな水かきを持ち、陸と海の両方に 適しているという。
先史時代の海生爬虫類の専門家で、今回の研究を率いたカリフォルニア大学デービス校の藻谷亮介氏は、「魚 竜の進化の記録はなぜか水陸両生の動物が抜け落ちていた。この種はその穴にぴったりはまる存在だ」と説明す る。
◆陸に上がった魚
カートリンカスの水かきと手首は柔らかく、アザラシのように陸上をはうことができる形状だ。また、ずんぐ りした肢とがっしりした肋骨は沿岸の荒波をものともしない力強い泳ぎを可能にする。
とても短いくちばしは陸生の祖先から受け継いだもので、後の時代の魚竜が持つ長いくちばしとは大きく異な る。魚竜は長いくちばしのおかげで、魚やイカといった動きの速い獲物を捕まえることができたと、藻谷氏は説 明する。
体形や大きな水かきを見る限り、カートリンカスの泳ぎは決して速くなかったと、藻谷氏は推測している。当 時は熱帯の群島だったあの場所で、海底に暮らすエビなどを探し回っていた可能性が高いという。
さらに、頭蓋骨の構造は、軟体動物を吸い込むように食べていたことを示唆している。周囲から獲物となる動 物の化石が見つからなかったことも、化石にならない軟体動物が餌だったという説を裏付けている。
◆大量絶滅からの復活
藻谷氏らが発見した化石は、二畳紀から三畳紀にかけての大量絶滅の後、魚竜に何が起きたかのヒントも与え てくれる。2億5200万年前、海洋生物種の90%以上が姿を消した。 この壊滅的な出来事の後、動植物が復活するまでにどれくらいかかったかは長年の疑問だった。
カートリンカスの化石が発見されたことで、後に世界中に拡大した魚竜が中国で復活を遂げるまでに400万年を 要したことがはっきりした。Christine Dell'Amore,
National Geographic News, November 6, 2014
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