もしも地球が立方体だったら…奇想天外なSFを気象学者らが真面目に監修
木星から帰還すると地球が立方体になっていた(日本科学協会提供)
食糧不足、気候変動、水・環境問題など人類を取り巻く難題は尽きない。これを解決するのはほかでもない科学技術の力なのだが、研究室にこもってばかりではアイデアは枯れてくる。時には、頭に刺激を与えることも必要だ。
「惑星が四角くなったら?ましてや地球が立方体だったらどういうことになるだろう」
ありえない奇想天外な設定に、気象学や海洋学、生態学などさまざまな分野の研究者が真剣に議論を交わした内容を映像化した「Cubic Earth(キュービック・アース) もしも地球が立方体だったら」の後編が今月、公開された。
□大気や海水はレンズ状
前編は昨年2月に発表。木星から帰還中の宇宙船がトラブルに遭い、地球に戻ろうとすると、なんと地球の形が立方体になっていた。着陸するにも、重力の向きの関係で、平面に見える場所でも急な勾配があることや、大気が6つの平面の中央部に張り付くように存在すること。その大気の中央が盛り上がっているため、中心部の地表では、365気圧、摂氏500度以上となることなど科学的考察に基づいて描写されていた。
□空飛ぶイカ、海の真ん中に巨大な台風
後編では、人類など高等生物を探して海のある面に向かう。そこには、最大で高さ300キロメートルに盛り上がったレンズ状の海があった。
海面の中央には巨大な台風が常駐。台風は、海面水温が高いと水蒸気のエネルギーが次々に加わって風速が強まる。海岸でも65度、9気圧で、地球上ではありえないようなエネルギーの渦を作り出す。一方で、大気の厚みがあるため、海岸付近では気圧も約9気圧と高く、パワーはあっても風速は遅くなり、差し引けば現実の地球での台風と同レベルの風速だ。偏西風などがないため、台風が中央に留まっているのも特徴。
これが、本来なら死の海であるはずの深い海の水を撹拌(かくはん)し、生態系循環を作り出し、優良な漁場になっているという。
海に入るとイカのような巨大な動物が飛行している。これは、空気密度が高いために飛行する動物が進化しやすいという考察による。
□「立方体地球」人の存在は?
海のない面では月面のようだった地表も、海のある面では、雨水が豊富で、陸地は植物に覆われていた。農業を行っているようすもみられた。海を起源とする立方体地球人だが、アドバイザーとして協力した高橋正征東大・高知大名誉教授(生態学)は、「どうして立方体地球人が、本来、栄養素としては必要としないデンプン質を求めているのかなど、考える余地は多い」と話す。立方体地球人の姿形も、想像力を膨らませる。(原田成樹)
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製作著作は、日本科学協会。気象に関するホームページを作ろうと考えた際、すでにインターネット上に大量に知識はあった。そこで、知識を得るのでなく考えさせるサイトを作ろうと、「空想気象学」を思いついたという。監修陣の「議長」、木村龍治東大名誉教授によると、今回の映像は地球が立方体だった場合に描ける「あくまで一つの例」に過ぎず、絶対的な答えはないと話す。むしろこの動画を見て、ああではないか、こうではないかと、自由に疑問や意見を述べあうのが正しい利用方法だろう。
映像は、同協会のホームページ(http://www.jss.or.jp/fukyu/cubicearth/)でみることができる。また、同協会は小学校高学年以上を対象に10月から、出前講義(講師への謝金など必要)や映像DVDの貸し出しなども実施する。問い合わせは、同協会「立方体地球」係(電)03・6229・5365。 2014.7.12 18:00 産経ニュース
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