2013年3月2日土曜日

拒絶反応、薬飲まず抑制


拒絶反応、薬飲まず抑制 肝移植、白血球を操作 北大・順大チーム
 臓器移植後に起きる拒絶反応を免疫抑制剤を飲まずに抑える手法を、北海道大と順天堂大のチームが開発した。患者と臓器提供者の免疫をつかさどる白血球を 操作した。生体肝移植を受けた10人に行い、4人が最長で半年間、薬を中止し、6人で減量することに成功した。新たな治療法として確立すれば、患者の負担 は大幅に減らせると期待される。

 移植手術を受けた患者は通常、拒絶反応を抑える薬を生涯飲み続ける必要がある。免疫力が下がるため、感染や発がんのリスクが高まるほか、腎障害などの重い副作用もある。
 拒絶反応は、患者の白血球の一種、T細胞が移植臓器を「異物」と認識して攻撃して起こる。北大の藤堂省(さとる)・特任教授、順天堂大の奥村康(こ う)・特任教授らは、移植の手術前に患者と提供者の血液から白血球を取り出して一緒に培養。特殊な薬剤を加えて、患者の白血球が提供者特有の成分を患者自 身のものと勘違いするようにした。培養した白血球は移植から2週間後に患者に戻し、段階的に薬を減らした。

 2010年11月から、肝炎や胆管炎で肝硬変になった30~60代の10人に行い、4人は手術から18~21カ月後に薬を中止できた。4人は2月末現 在、半年~1カ月半、薬なしで生活している。ほかの6人も薬を減らすことができ、1人を除いて、中止できる見込みがあるという。

 5月の米国移植学会で成果を発表する。
 肝移植は国内で年500例前後行われ、5年後の生存率は約80%。薬を使わずに拒絶反応を確実に抑えられれば、生存率や生活の質の向上が期待できる。
 移植から何年も経って起きる拒絶反応もあるため、長期間、有効性や安全性を調べて、治療法として確立させたい考えだ。順天堂大は5年前から東京女子医大と、今回の手法を生体腎移植で行い、薬の大幅な減量に成功していた。
 また、この手法は、白血球が自分自身の体を「異物」と勘違いして、攻撃することで起きるリウマチなど自己免疫疾患の治療にも使える可能性もある。
 順天堂大の奥村特任教授は「自分を攻撃する白血球に異物ではないと教え込ませれば、理論的には治せる」と話す。(阿部彰芳) 2013年3月2日 朝日

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