日本人の祖先・・松本説
日本人は極めて大雑把にいえば、先住の縄文人に弥生時代初めから渡来人が流入し、混血などを繰り返して奈良時代頃、現代日本人の祖先が形成されたと考えられます。その結果、たとえば血液型A遺伝子の分布は西日本地方を中心に、遠ざかるに従って頻度が低下する、いわゆるクライン(地理的勾配)があることがわかっています。
ところがGm遺伝子に関する限り日本全国(含む沖縄)各地でほぼ有意の差が認められません。この現象について松本秀雄氏は、日本民族が長い年月をかけて等質性を高めて行った、且つ異質性を持った別の集団との混血の機会が少なかったと説明しています。
松本氏の研究は膨大なデータを駆使して「日本人のGm遺伝子」が世界民族の中でどう位置づけられるかを明快に示しています。Gm型は赤血球に関わる血液型で、血清に関わり免疫反応に重要な役割を果たしていると説明されます。
Gm型が日本人の起源の探究に有用な理由は、その遺伝子が人種によって異なる特性をもっているからです。それは次の(遺伝子)表現型で表されます。
蒙古系 ag、axg、afb1b3、ab3st
白人種 ag、axg、fb1b3
黒人種 ab1b3、ab1c、ab3s
3大人種は上記のようなGm遺伝子の組合せで表現できる。そして、afb1b3は南方系のモンゴロイドを、ab3stは北方系モンゴロイドを識別できる遺伝子であり、fb1b3は白人種に特徴的な遺伝子である。
agとaxgは蒙古系と白人種に共通するが、それは二つの人種の近さを物語っており、黒人種は蒙古系と白人種と共通するGm遺伝子を全く持っていない。これは、黒人種とそれ以外が、かなり古い時代に分化したことを意味するという。
さらに蒙古系と白人種が混血したような場合、Gm遺伝子はag, axg, afb1b3, ab3st,
fb1b3というように混合した形で表現されます。
また、同じ蒙古系であっても民族によって遺伝子の頻度(構成比)がそれぞれ違い、蒙古系同
士で混血するといわゆる「遺伝子の流れ」が形成されます。
さらに、骨などの形態的なものは環境の変化などに大きく左右されるのに対し、DNAやたんぱく質などの情報高分子は環境に左右されず、時間に比例してほぼ一定の速度で変化するという性質を持っています。
したがってGm遺伝子はきわめて安定的であり、人種の識別や混血の程度、また集団の移動の跡づけなどを判断するのに大変高い信頼度をもっていると云えます。
*日本人のGm型
縄文人集団に対しかなりの割合で(一説によれば1:1)渡来人が混血したことは周知のことであり、縄文人と渡来人が“Gm遺伝子”に関する限り、あまり差のない集団であったと理解する方が無理がないのではないかと思います。
*日本人の源流はどこか
蒙古系の民族集団は南米から東南アジアまで太平洋をぐるりと取り囲むように分布しています。そしてGm遺伝子のうちafb1b3遺伝子を高い頻度で持つ南方型の集団とag遺伝子を高い頻度で持つ北方型の集団があることがわかります。
さらに北方型の中にはab3st遺伝子を多く持つ集団と少ししか持たない、或いはまったく持たない集団まであります。
日本人はGm遺伝子でみると、明らかに北方型で且つab3st遺伝子を高い頻度でもつ集団だと定義することが出来ます。
そして日本人のGm遺伝子頻度と相似する集団はバイカル湖周辺に分布するブリヤート人民族集団であり、「日本人の源流はバイカル湖畔にある」といえると松本氏は結論付けています。
(本稿は主に http://www.geocities.jp/ikoh12/kennkyuuno_to/001_1Gmidensi_1.html を参考にしています)
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