2015年6月20日土曜日

トマト:受粉無しで実った

トマト:受粉無しで実った 植物ホルモンを制御 筑波大発表
*DNAを変化させてエチレンへの感受性が低下し、未受粉で結実したトマト。扱いやすいように小さく改良した品種で実験した=茨城県つくば市の筑波大で2015年6月18日、去石信一撮影

 植物ホルモンに関する機能を制御して、受粉していないトマトを結実させることに成功したと、筑波大などの研究チームが発表した。この技術を応用すれば人工授粉を省いて生産を効率化でき、トマトの増産や価格安定につながるという。

 植物にとって果実は植物の種子を発達させる重要な場所。動物が食べると、ふんとともに種子を落とし、分布拡大につながる。キュウリなど一部の作物は受粉しなくても実がなるが、養分を使う一方で種子ができないため子孫維持に不利だ。
 チームは、トマトの雌しべから放出されるガス状の植物ホルモン「エチレン」に注目した。放出量を測定したところ、受粉前は大量に出ていたが、受粉後は急激に減少した。
 エチレンが結実を抑えていると見込み、未受粉のトマトの雌しべを化学処理してエチレンの感受性を低下させたところ結実。DNAを人工的に変化させて感受性が下がったグループもやはり未受粉で実がなった。

 一方、受粉後の雌しべにエチレンをかけると結実しないものがあった。また、受粉後に生成される別の植物ホルモンには、エチレンを減らす働きがあった。

 チームの有泉(ありいずみ)亨助教(植物遺伝育種学)は「農家の高齢化や後継者不足が進む中、人工授粉を省ければ生産が効率化する。エチレンは他の作物の結実でも関与している可能性があり、研究の応用は広い」と話す。【去石信一】毎日新聞 20150620日 東京夕刊

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