ダム湖覆う浮草消えた…景観回復の意外な功労者
緑の葉で水面を覆ったアイオオアカウキクサ(7月13日、一庫ダム管理所提供)と再び澄んだ水面を取り戻した一庫ダム(8月24日)
ハイキング先としても人気のある兵庫県川西市の一庫ダムで、水面を覆っていた外来雑種の水生シダ植物「アイオオアカウキクサ」(アカウキクサ科)が今夏、突然消えてなくなり、元の美しい景観を取り戻した。
大量発生した蛾の幼虫にウキクサの葉が食べ尽くされたためで、幼虫もその後、自らの足場のウキクサをなくして水中に沈み、魚の餌食になったとみられる。ウキクサ駆除に頭を悩ませていた関係者の間では、予期せぬ“救世主”に「自然の神秘を見た思い」と驚きの声が上がっている。
ウキクサは昨年8月、ダムの約1キロ上流で初めて確認。緑の葉は瞬く間に増殖し、今年になって水面の約2割を占拠した。
変化が現れたのは、今年7月。水面を覆っていた緑色の葉が徐々に灰色になって領域を狭め、1か月余りでほぼ姿を消した。同管理所が調べたところ、ウキクサの葉に蛾の幼虫が大量発生し、食べ尽くしたことがわかった。
幼虫は体長約1センチで、「ミズメイガ」と呼ばれる蛾の仲間。同管理所ではオイルフェンスを張るなどウキクサの大がかりな回収法を検討したが、自
然が短期間で解決した形で、同管理所長代理の大牧千木さんは「自然が自らの力で回復してくれた。再び繁殖する可能性があるので、今後も注意深く観察したい」とする。
ウキクサは大阪城の堀や淀川でも発生し、枯死すると底に沈んでヘドロの原因になるため問題化している。大阪府水生生物センター(寝屋川市)主任研 究員の内藤馨さんは、一庫ダムについて、「聞いたことのない現象」と驚き、「幼虫がそのまま成虫になった場合、それが害虫になる恐れもある。他の場所で、駆除方法として蛾を利用するのは難しいのでは」と話している。(2012年10月23日14時57分 読売新聞)
0 件のコメント:
コメントを投稿