2018年12月22日土曜日

宇宙の95%は負の質量をもつ「暗黒流体」だった?


宇宙の95%は負の質量をもつ「暗黒流体」だった?
Bizarre ‘Dark Fluid’ with Negative Mass Could Dominate the Universe
6500万光年の彼方に浮かぶ銀河を取り巻く無限の闇 NASA/REUTERS
<これまで別々のものと考えられてきた暗黒物質と暗黒エネルギーは暗黒流体だと考えると、宇宙論の多くの謎が解ける>
不名誉なことながら、天体物理学者が真っ先に認める事実がある。当代最高の理論モデルをもってしても、宇宙に存在する物質の5%しか説明できないことだ。よく知られているように、あとの95%はほぼすべて、暗黒物資と暗黒エネルギーと呼ばれる観測不可能な謎の物質が占めるとされている。観測可能な宇宙には夥しい数の星が輝いているが、宇宙全体で見れば、その輝きは遠く離れて極めて稀で、宇宙の大半は正体不明の暗闇が支配しているのだ。

暗黒物質と暗黒エネルギーの存在は、重力の効果から推測されている。暗黒物質は、姿は見えなくても、周囲の物質に重力を及ぼしている。一方、暗黒エネルギーは斥力(せきりょく、互いに離れ合う力)を及ぼし、それによって宇宙は加速的に膨張している。この2つはこれまで別々の現象として扱われてきたが、学術誌アストロノミー・アンド・アストロフィジックスに掲載された論文で私が述べているように、実はその正体は同じで、負の質量をもつ奇妙な物質「暗黒流体」であると考えられる。
負の質量は仮説的な概念だが、負の質量をもつ物質は負の重力をもつと考えられる。私たちにおなじみの正の質量をもつ物質と違って、負の質量をもつ物質はなんとも奇妙な性質をもつ。その物質を向こうに押しやれば、こちらのほうに加速度的に迫ってくるのだ。

相対性理論を修正
宇宙論では、負の質量は目新しい概念ではない。ただ、負の質量をもつ物質があるとするなら、通常の物質と同様、それらの物質も宇宙が膨張するにつれて疎らに広がり、その斥力はしだいに弱まると考えられる。ところが、これまでの研究で、宇宙の加速膨張を促す力は常に一定であることが分かっている。そのため、これまで宇宙論の研究者たちは、負の質量という概念を採用しなかった。つまり、負の質量をもつ暗黒流体が実在するなら、それは宇宙の膨張につれて、薄く引き延ばされるようなものではない、ということだ。

新論文で私は、アインシュタインの一般相対性理論に修正を加え、負の質量をもつ物質はただ存在するだけでなく、絶えず新しく生み出されるというアイデアを提唱した。「物質の創造」という概念は、ビッグバンの初期の代替理論である定常宇宙論にも採用されている。定常宇宙論では、正の質量をもつ物質が絶えず新しく生み出され、膨張する宇宙を満たしていくと考えられたのだ。観測により、今ではこの説は否定されている。しかし負の質量をもつ暗黒流体が絶えず生み出されていると仮定することは可能だ。暗黒流体は宇宙が膨張しても薄く引き延ばされることはなく、まさしく暗黒エネルギーのような振る舞いを見せることを、私の研究は示唆している。

銀河の高速回転の謎を解く
さらに私は、3Dのコンピューターモデルでシミュレーションを行い、この仮説で暗黒物質の物理的な性質を説明できるか確かめた。暗黒物質は、現在のモデルで予測されるよりもはるかに速く、銀河が回転していることを説明するために導入された概念だ。高速で回転している銀河内の物質がばらばらに飛び散らないためには、観測不可能な謎の物質の存在を仮定しなければならない。

私のモデルは、暗黒流体が周囲に及ぼす斥力により、銀河の分散が回避されることを示している。銀河内の正の質量をもつ物質の重力は、あらゆる方向から負の質量をもつ暗黒流体を引き寄せる。暗黒流体が銀河に引き寄せられれば、その強大な斥力により、銀河内の星々は飛び散ることなく高速で回転するようになる。マイナスの符号を挿入するだけで、まるでマジックのように物理学者を長年悩ませてきた謎が解ける、というわけだ。
負の質量なんてあり得ない、と主張する人もいるだろう。確かに奇妙なアイデアだが、実はそれほど突飛な概念ではない。私たちは正の質量をもつ物質の世界にいるから、イメージしにくいだけだ。

弦理論を裏付ける
物理的に存在するか否かはともかく、実に多くの領域で、負の質量は理論的に欠かせぬ概念となっている。水中の気泡の振る舞いは、負の質量を想定することでモデル化できる。負の質量をもつような振る舞いをする粒子の生成に成功したという実験も報告されている。
物理学では既に負のエネルギー密度という概念は受け入れられている。量子力学によれば、真空には絶えず揺らぐ場のエネルギーがあり(それは時には負のエネルギーともなり)、そこでは波が生まれ、仮想粒子が生まれたり消えたりしている。その際に生じる小さな力は実験で検出可能だ。

暗黒流体を想定することで、現代物理学の多くの難問を解決できそうだ。例えば量子論とアインシュタインの宇宙論を統合する理論として最も有望な弦理論は、今のところ観測された事実と合致しないとみなされている。しかし弦理論は、何もない空間に負のエネルギーがあることを示唆しており、それが負の質量をもつ暗黒流体だと仮定すれば、理論と観測データの矛盾は解消する。
また宇宙の加速膨張という画期的な発見をしたチームも、負の質量を示唆する驚くべき観測データを得ている。しかし彼らは「物理学に反する」と考えて、このデータの解釈には慎重な姿勢をとった。

電波望遠鏡SKAで実証へ
暗黒流体の理論は、宇宙の膨張率の測定に関わる問題も解決する可能性がある。ハッブル=ルメートルの法則によれば、より遠方にある銀河は、より速く私たちから遠ざかっている。銀河が遠ざかる速度と地球から銀河までの距離の比例定数は「ハッブル定数」と呼ばれるが、観測で導き出されるこの定数は一定ではなく、これが「宇宙論の危機」を招いてきた。しかし暗黒流体を想定すれば、ハッブル定数が時間と共に変化することを説明できる。言い換えれば、奇妙で型破りな暗黒流体の概念は、科学的に十分検討に値するということだ。
宇宙論の生みの親アルバート・アインシュタインも、スティーブン・ホーキングら他の研究者も、負の質量について考察した。実際、アインシュタインは1918年に一般相対性理論を修正して負の質量を導入すべきかもしれないと書いているほどだ。

とはいえ、負の質量を想定した宇宙論が正しいとは限らない。現在謎とされている多くの問題を一気に解決する理論だけに、研究者たちはなおさらこの理論に懐疑的だし、その姿勢は間違っていない。一方で、常識外れの発想がしばしば長年の問題を解決するのもまた事実だ。これまでに積み重ねられてきた理論とデータから、負の質量の導入を本格的に検討すべき時期に来ているとみていい。
南アフリカとオーストラリアでは今、集光面積1平方キロを越える史上最大の電波望遠鏡SKA(スクエア・キロメートル・アレイ)のアンテナ群が次々と設置されている。完成すれば、宇宙の誕生から現在までの銀河の分布を測定できる。私は負の質量を想定した宇宙論の予測と標準的な宇宙論の予測を、SKAの観測データと突き合わせて、どちらが正しいか検証するつもりだ。それにより、負の質量をもつ物質が実在するかどうかが決定的に明らかになるだろう。

いま分かっているのは、この新しい理論が新しい問いの宝庫であること。科学上のあらゆる発見の例に漏れず、この理論もまた冒険の始まりにすぎない。美しく統合された、いや、ひょっとすると奇妙な偏りをもつ宇宙の謎を解く旅はまだ始まったばかりだ。 
Jamie Farnes, Research Associate & Astrophysicist based at Oxford's e-Research Centre, University of Oxford  20181220日(木)Newsweek

2018年11月19日月曜日

ミイラ化しても復活


ミイラ化しても復活 驚異の昆虫が起こす医療革命
*乾燥して仮死状態になった後、水を与えると復活したネムリユスリカの幼虫(農研機構提供)

 生命は水がないと生きられない-。そんな常識を覆すのが、アフリカ原産の蚊の仲間「ネムリユスリカ」の幼虫だ。ミイラのように干からびて何年たとうが、再び水を与えれば復活する驚異的な生命力を持つ。この力を応用できれば、人間の細胞や血液などを乾燥した状態で保存できる。10年以内の技術的な確立を目指し、国内外の研究者がしのぎを削っている。

スルメが生のイカに戻るイメージ
 ネムリユスリカの成虫は体長1センチほど。アフリカ中部のナイジェリアやカメルーンなどに生息し、ほとんど雨が降らない乾期を乗り切るため、体の水分がなくなっても仮死状態で生き抜く能力を獲得したとみられる。ただし、ミイラ化しても生きられるのは幼虫だけだ。
 英国の研究では、17年間もの仮死状態を経て生き返った事例がある。さらに同国では、1960年ごろから仮死状態に置かれたネムリユスリカが将来の復活を待っているという。
 この力を人間に例えると、エジプトのミイラに水をかけたら生き返るイメージだ。食卓のスルメに水をかけたら生のイカに戻ると言っても良いだろう。

復活時にDNAを修復
 この仕組みを解明すべく国内で研究しているのが農業・食品産業技術総合研究機構(茨城県つくば市)の黄川田(きかわだ)隆洋・上級研究員(極限環境生物学)らのグループだ。
 黄川田さんによると、ネムリユスリカは主に4つの力で生き抜く。その1つは、体内の糖分である「トレハロース」のガラス化だ。ガラス化といっても極めて粘り気の強い液体のようなもので、体が乾燥しはじめると、乾燥前の細胞を満たしていた「細胞液」という液体と入れ替わっていく。

 2つ目の要因は「LEA(レア)」という特殊なタンパク質の存在だ。これは人間が持っていないもので、他の種類のタンパク質が乾燥によって壊れることを防いでくれる。
 また、水を得て生き返るときは有害な活性酸素が爆発的に生じ、そのままでは細胞が酸化されて寿命を縮めてしまう。それを防ぐための「抗酸化剤」として機能する分子も見つかった。

 そして最後がDNAの修復機能だ。実は細胞核にあるDNAは、乾燥時はボロボロに傷ついている。しかし、復活から4日ほどで乾燥前と同じ状態にまで修復されることが分かった。ただ、そのメカニズムは未解明で、今後の大きな研究課題だ。
 つまりネムリユスリカの秘密は、乾燥時の体の「保護」と復活時の「修復」が大きな鍵を握っている。

戦場で輸血用の血液に応用も
 この驚異的な能力を人間の細胞に応用するのが「常温乾燥保存法」だ。実現すれば人工多能性幹細胞(iPS細胞)や組織、血液などを保存する際に、温度や空調の厳格な管理が不要となり、持ち運びも極めて容易になる。冷凍庫や電気代などのコストもかからない。元に戻すには生理食塩水があれば十分で、まさに革命的だ。

 理想的な手法としては、ネムリユスリカが持つ機能を低分子の化合物で置き換えることが考えられる。
 ただ、まずはその前段階として、常温乾燥保存に関するネムリユスリカの遺伝子を人間の細胞に組み込み、同様の効果が得られるかどうかを確認する。ここまでなら10年以内に到達できる見通しだという。

 黄川田さんは「まずはネムリユスリカを片っ端から調べ、できるだけ早く応用につなげたい」と話す。
 常温乾燥保存法の活用は平時の医療に限らない。災害や戦争などで傷ついた人たちを治療する際も、輸血用の血液や移植用の組織などを簡単に届けられる。
 研究は米国やロシアをはじめ海外でも盛んに進められている。黄川田さんらも加わる国際プロジェクト「DRYNET(ドライネット)」には欧州のベンチャー企業も参加する。ただ、日本企業の動きは鈍いという。(科学部 小野晋史)2018.11.17 産経

2018年11月6日火曜日

ネアンデルタール人の暮らし、週単位で判明


ネアンデルタール人の暮らし、なんと週単位で判明
25万年前の子育てから厳しい冬の過ごし方まで、歯の分析で
*今回の研究で分析対象となった歯と同じように、写真のネアンデルタール人の歯にも、持ち主の生活や癖が刻み込まれている。
 ターニャ・スミス氏は、まるで本を読むように歯を読む。
 歯を構成する各層には、食べものから病気まで、さまざまな情報が刻まれている。オーストラリア、グリフィス大学の自然人類学者であるスミス氏は、15年以上をかけて歯の化学的性質と物理的構造を調べてきた。しかし、環境が変化したときに、それらがどうなるのかについては、長いこと取り組んでこなかった。
「人類の起源を研究している人々は、かなり前から、気候変動や気象が不安定になった期間が人類の進化に重要な役割を果たしていると考えています」とスミス氏は言う。しかし、氷床コアや花粉の記録など、当時の気候を知る手立てからは、個体にどんな影響があったかを検討するほど短期間の変動はわからない。

 今、その状況が変わりつつある。1031日付けの科学誌「Science Advances」に発表された研究によって、約25万年前に現在のフランス南部にあたる場所で暮らしていたネアンデルタール人の幼年期の様子が、かつてないほど詳しく描きだされた。歯の化学的性質を分析することで、彼らが環境に対処するために、多くの難題に直面していたことが明らかになった。ネアンデルタール人たちは、厳しい冬や鉛汚染を経験し、季節によって変化する資源に依存した生活を送っていたようだ。

 さらに、酸素同位体の分析から、そのうち1人が春に生まれていたことも明らかになった。その後、2年半にわたって母親の乳で育ち、秋に乳離れしていた。(参考記事:「人肉はカロリー低め、旧人類はなぜ食べた?」)
「今回の論文は、今まで読んできたものの中でも、特に興味深いものでした。率直に言って、驚きのあまり何度も呆然としてしまいました」と、米ロヨラ大学の古人類学者で、古代の歯に詳しいクリスティン・クルーガー氏は電子メールで述べた。

まるで日記
 歯は一定のパターンに従って成長するため、ある意味、木の年輪のようだ。スミス氏は、「この層は、単純に1つずつ積み重なってゆきます」と説明する。同氏は今回の論文の筆頭著者で、最近『The Tales Teeth Tell(歯が話す話)』という本も出版した。だが、1年ごとにできる木の年輪と違って、歯の層は1日ごとにも形成される。幼い子どものころに、日々どのように歯が成長したのかまで調べられるのだ。

 今回の研究で、スミス氏らの研究チームは、異なるネアンデルタール人の子どもの歯を2本調査した。さらに、ネアンデルタール人の時代より何万年も後である、約5000年前に同じ場所で生活していた現生人類の歯も調べ、比較した。
 歯をレーザーで薄く切りとりながら、研究チームは高性能の分析装置を使い、それぞれの層における子どもの年齢を厳密に特定した。分析対象となった2つの臼歯は、成長しきるまで3年ほどかかっていた。スミス氏によれば、そのうちの1つは、生まれる直前に形成され始め、3歳を迎えるころに完成したという。しかし、この臼歯はほとんどすり減っていなかったことから、歯の持ち主は大人にはなれなかったものと考えられる。
 もう1本の歯は、もう少しあとになってから成長を始める第二臼歯だった。こちらは3歳を迎えたころに形成され始め、6歳ごろまで成長し続けたようだ。それ以降は、新しい層が追加されないものの、すり減ったり傷ついたりはするので、そこからも多くの情報を得ることができる。

何をして鉛に触れたのか
 研究チームはさらに分析を進め、歯に含まれる元素の割合や酸素同位体の比率を導き出した。酸素同位体の比率を調べれば、当時の気候を読み解ける。古代人が食べたり飲んだりしたものには酸素同位体が含まれており、その比率が温度によって変化するため、気温についての記録が残るというわけだ。おかげで今回の研究では、週単位の気候まで明らかになった。

 この記録から、多くの哺乳類と同じように、歯の持ち主は春に生まれていたことがわかった。しかし、真冬には、どちらのネアンデルタール人の子どもにも微妙な構造の乱れが起きていた。これは、ストレスがかかっていたことを示している。「さまざまな事象によって、歯の成長は微妙に変化します」とスミス氏は言う。しかし、この乱れはいずれも冬に起きていた。寒さのせいで発熱やビタミン不足、病気などに陥っていたのかもしれない。
 寒さのせいで生じていた問題はまだある。冬から早春にかけての時期に、鉛汚染が見られたのだ。「いったい何をして鉛に触れたのかというのは、未解決で興味深い疑問です」とスミス氏は言う。だが、天然の鉛の堆積物は、ネアンデルタール人が生活していた場所の近くにも存在するそうだ。寒さのため、近くの洞窟に逃げ込み、そこで得られる汚染された食べものや水に頼らざるをえなかったのかもしれない。あるいは、鉛を含む物質を燃やし、その煙を吸い込んだことが原因である可能性も考えられるという。

母乳のしるし
 研究チームはバリウムの変化を調べ、ネアンデルタール人の授乳の習慣も解き明かした。母乳には、驚くほど多くのバリウムが含まれている。バリウムは、カルシウムと同じように、子どもの骨や歯の成長に役立つ。
 調査対象となった歯の1本は、子どもが乳離れしてから形成されたものらしかった。対してもう1本には、生後2年半にわたって授乳していた形跡がはっきりとあった。

 ネアンデルタール人の授乳に関する先行研究は1例だけだ。2013年、スミス氏を含むグループが、現在のベルギーで見つかったネアンデルタール人の歯から、わずか1年数カ月しか授乳されていなかったことを突き止めた。しかし、授乳が突然終わっていたことから、子どもが母親から引き離されたり、突然病気になったりした可能性が示唆されている。
そのため、今回明らかになった2年半という授乳期間が、ネアンデルタール人にとって一般的だったかどうかまではわからない。しかし、2歳半という年齢は、先進国を除く地域における人々の平均的な乳離れの年齢とも近く、ネアンデルタール人にも当てはまるのかもしれない。

「乳離れの年齢が特定できたのはすばらしいことです」と、米オハイオ州立大学の自然人類学者、デビー・グアテッリ=スタインバーグ氏は電子メールで述べている。授乳期間が2年半というのは、たとえばチンパンジーなどに比べればはるかに短いという。ボノボとともに、彼らはもっとも人間に近い種だが、通常は5歳ぐらいまで授乳する。ネアンデルタール人の授乳の習慣は、現代の人間に近かったのかもしれない。
 スミス氏は、ほかの年代や環境のネアンデルタール人や、古代の人間の子どもについても調査を行いたいと考えている。時代によって乳離れの年齢がどう変化したのかは、まだほとんどわかっていない。やわらかい食べものや動物の乳を原料とする乳製品が発達したことで、乳離れが早まったとする仮説もある。「しかし、ここまで厳密に検証できた人はまだいません。今回の方法を使えば、それも可能でしょう」と同氏は話す。

複雑さを増すネアンデルタール人像
 前述のクルーガー氏は、今回の研究によってネアンデルタール人の姿はさらに複雑さを増したと述べる。つまり、この研究は、ネアンデルタール人がどのような日常生活を送っていたのかを知る手がかりであるとともに、彼らは「鈍重な野蛮人」だという今までの一般的な理解をさらに遠ざけるものだという。「たとえば、誰かにネアンデルタール人と呼ばれたら、どう反応するでしょうか。少なくとも、褒め言葉ではありませんよね」
「しかし、ネアンデルタール人はとても複雑でややこしい人々だったのです。調理もしていましたし、さまざまな植物や動物を活用し、植物を薬に使うこともしていました。アクセサリーも付けていましたし、壁画も描きました。死者の埋葬まで行っていたのです」

 今回の研究は、冬が来ることによる影響や、子育ての方法など、彼らの生活を今までになくありありと見せてくれる。まさにクルーガー氏が記す、「『彼ら』と『私たち』の境界線は、日々曖昧になっています」という言葉のとおりだ。(参考記事:「人種の違いは、遺伝学的には大した差ではない」)
*【参考ギャラリー】世界最古の洞窟壁画、作者はネアンデルタール人(写真クリックでギャラリーページへ)
スペインの洞窟の壁に、赤い縦線と横線からなるはしごのような絵が描かれているのが見つかった。64000年以上前のものと推定され、作者はネアンデルタール人と考えられる。 2018.11.02 ナショジオ

2018年10月28日日曜日

ホタルが光るのは遺伝子変異が原因だった

ホタルが光るのは遺伝子変異が原因だった 1億年前に獲得、ゲノムで解明
*ヘイケボタルの成虫(大場裕一・中部大准教授提供)
 ホタルは1億年以上前に起きた遺伝子の複写ミスと変異によって美しく光る能力を手に入れたことを、基礎生物学研究所(愛知県岡崎市)と中部大などの研究チームがゲノム(全遺伝情報)の解読で突き止めた。
 ホタルは腹部の器官にある発光物質に、化学反応を促進する酵素のルシフェラーゼが作用することで光るが、ルシフェラーゼをどのように獲得したのかは不明だった。

 チームは日本のヘイケボタルと米国のホタルのゲノムを解読。それぞれ約1万5千個の遺伝子を特定し、詳しく調べた。
 その結果、大半の生物が持つ脂肪酸を他の物質に作り替える遺伝子が、細胞分裂の際に通常の一度ではなく、何度も繰り返し複写された痕跡を両種で確認。そのうちの一つの遺伝子が、うまく複写できず変異し、ルシフェラーゼを作る遺伝子に進化したと分かった。
 この現象は、両種が約1億500万年前に分岐する前の共通祖先の段階で起きたらしい。

 ホタルの発光の仕組みは遺伝子の働きを光で調べる医学研究などに応用されている。今回の成果で理解が進めば、手法の改良に役立つという。(伊藤壽一郎)2018.10.28 07:04 産経

2018年9月14日金曜日

植物の防御機能解明


葉に虫食いで「緊急連絡」、植物の防御機能解明
植物が虫に食べられて傷ついた際に、ほかの葉や根にもその情報を素早く伝えて防御機能を高める仕組みを、埼玉大などの研究グループが突き止めたと発表した。グループは新たな農薬の開発などに役立つと期待している。論文が14日、米科学誌サイエンスに掲載される。

 植物の葉が虫に食べられると、数分以内にその植物全体で、虫が消化不良を起こす物質の合成を促す植物ホルモンが作られることが、これまでの研究で分かっている。ただ、動物のように脳や神経を持たない植物が、傷ついたことをほかの部分にどうやって伝えるのかは不明だった。
 埼玉大の豊田正嗣・准教授(生物物理学)らが雑草のシロイヌナズナの内部の物質濃度を調べたところ、虫に食べられた部分で、うまみ成分の一種として知られる「グルタミン酸」の濃度が急上昇することが判明した。それに伴い、隣り合う細胞でカルシウムイオンの濃度上昇が次々と起こり、毎秒約1ミリ・メートルの速度で伝わることが分かった。20180914 1004分 読売

2018年8月23日木曜日

月面の氷を初観測

NASA、月面の氷を初観測 有人探査に勢いも
*月の南極(左)と北極に確認された氷の位置(青色部)(NASA提供)
 米航空宇宙局(NASA)は22日までに、月の南極と北極に氷があるのを観測したと発表した。これまでも、月表面に水が氷の状態で存在する可能性は指摘されていたが、直接確認することができたのは初めて。

 月の氷は月面基地で用いる水だけでなく、ロケットの水素燃料などの原料となる可能性もある。米国が中心となって進める新たな有人月面探査に勢いがつきそうだ。
 NASAや米ハワイ大などのチームは今回、インドが2008年に打ち上げた月探査機「チャンドラヤーン1号」で観測した月表面のデータを分析。氷は南極付近のクレーターに集中し、北極付近では広い範囲にまばらに散らばっていた。(共同)2018822 2257分 東京

2018年8月18日土曜日

密林に浮かび上がるマヤ文明の遺跡


密林に浮かび上がるマヤ文明の遺跡 レーザー技術で発見
*レーザー技術を使った探索により、密林の中にある遺跡の様子が明らかになった
グアテマラ北部のジャングルの下に隠れていた6万以上の古代マヤ文明の建造物が新しいレーザー技術によって発見された。
隠れていた数十の都市で発見されたのは、民家、宮殿、高さ約27メートルのピラミッドなどだ。このピラミッドは以前は単なる丘と考えられていた。

上空からジャングルの密林の中を見通せる特殊なレーザーを搭載した飛行機が可能にしたこの画期的な調査が示唆しているのは、マヤの都市が従来考えられていたよりもはるかに巨大かつ複雑ということだ。
農業、かんがい、採石場、防御設備の跡が広範囲で確認された。また大規模な道路網は、コミュニティー同士がこれまで知られていた以上に密接につながっていたことを示している。

従来の考えを覆す発見
米誌「ナショナル・ジオグラフィック」が最初に報じたこの大発見は、メソアメリカ文明の営みに関するわれわれの理解を根本から変える可能性があると語るのはこの調査の共同ディレクターの1人、米テュレーン大学のマルチェロ・カヌート氏だ。
カヌート氏は「あらゆる物が予想よりも多く存在し、規模もはるかに大きいことが明らかになっている」とし、さらに「どの地域でも、予想を上回る数の建造物、建物、用水路、段々畑が発見された」と付け加えた。

研究者らは、この広さ2100平方キロの広大な遺跡のデータを分析し、その地域の推定人口も修正した。
 ジャングルの中に隠れていた古代マヤ文明の建造物が発見された
 
*レーザー技術でマヤ文明を「発見」
現在、研究者らは、かつてマヤ低地(現在のグアテマラとメキシコにまたがる地域)には、以前の調査で示された数の「数倍」の1000万人が住んでいたと見ている。
マヤの考古学を30年以上研究してきたカヌート氏によると、「熱帯地方は文明の存続に適さず、(熱帯気候は)複雑な社会の維持に寄与しないというのが過去100年間の一般的な考え方だった」という。
「マヤの社会は人口が少なく、インフラは皆無で、各都市国家は小規模で独立しており、都市国家間の交流はほとんどなかったというのが従来の仮説だった」

「しかし、この仮説が誤りだということが明らかになりつつある。今回の調査で、この地域に多くの人々が住んでいただけでなく、彼らは地形の生産性を向上させるためにさまざまな方法で地形に修正を加えたことが分かる。今発見されつつある多くの防御構造も、かつてこの地域に多くの人と資源が存在し、それらが多くの競争を生んだ可能性があることを示唆している」(カヌート氏)

「画期的な」空中マッピング
中米のジャングルは非常に密生しているため、現地の史跡の大規模な調査は輸送面で困難なことが多かった。しかし、「光検出と測距」(LIDAR)と呼ばれる新技術により、考古学者らは上空から密林の中まで見通せるようになった。
空中写真図化(マッピング)は、底面にセンサーを装着した飛行機を使って実施される。この装置は、自動運転車に使用されているのと同じ技術を使い、パルス状のレーザー光を発射し、その光が戻ってくるまでの時間を測定することにより景観のマッピングを行う。


*レーザーマッピング技術が発見を可能にした
その結果得られたデータから、地表の等高線が表示され、研究者らはその等高線から林冠の下の人工建造物を発見する。
考古学者らはこの方法で極めて詳細かつ前例のない規模の調査が可能になる、とカヌート氏は言う。「これは熱帯地方における考古学者らの調査方法を根本から変える技術だ」と指摘。「太陽や星を肉眼で観察していた時に望遠鏡が発明されたようなもの」と付け加えた2018.08.18 Sat posted at 19:00 JST

2018年8月16日木曜日

宇宙で生まれた「未知の鉱物」


宇宙で生まれた「未知の鉱物」がロシアの隕石から発見
ロシアの科学者らが、宇宙に由来する新たな鉱物を発見した。鉱物が見つかったのはロシアの東部のUakit(ウアキット)という都市で発見された隕石の内部だ。この鉱物は「Uakitite(ウアキタイト)」と名づけられ、人類がこれまで地球上や宇宙で確認した、4000種類以上の鉱物のリストに新たに加わった。は全く未知の鉱物で、宇宙空間の非常な高温下で生まれたものと推定される。

Uakitで隕石が見つかったのは2016年のことで、当初の分析では鉄とニッケルの合金であるKamacite(カマサイト)が主成分であるとみられていた。しかし、その後の調査で未知の鉱物が含まれていることが分かり、モスクワで年に1度開催される鉱物学会で発表された。
隕石の98%はKamaciteで出来ていたが、電子顕微鏡でスキャンした結果、微量のUakititeが含まれていることが判明した。Uakitite1000度以上の高温下で、鉄分を大量に含む金属から、鉄分とクロミウムを大量に含む硫化物液体が分離する過程で生まれたものとみられている。

今回発見されたUakititeはごく微量で直径は5マイクロメートル。人間の髪の毛の3分の1以下の薄さだ。あまりにも小さな物質であるため、地質学者らはこの鉱物の性質を完全には特定できていない。
一部のニュースサイトはUakititeがダイヤモンドよりも硬いという情報を掲載したが、研究チームはこれを否定している。鉱物の硬さの尺度であるモース硬度において、Uakitite910と判定されている。それに対し、ダイヤモンドのモース硬度は10で、地球上で最も硬い鉱物として知られている。2018/08/12 13:00 Forebes

「人工のエラ」


将来の海面上昇に備え?、手軽に装着できる「人工のエラ」登場

大がかりな装備の助けを借りなくても、水中で魚のように呼吸できる日が来るかもしれない――デザイナーの亀井潤氏が手がける「AMPHIBIO」は、特殊な形状をしたベストとマスクをアクセサリーのように手軽に装着するだけで水中での呼吸を可能にする。まさに「人工のエラ」だ。
亀井氏は英ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)と東京大学生産技術研究所が共同で設立したデザインプロジェクトと協力し、「AMPHIBIO」を開発した。ベスト部分とマスク部分からなる「AMPHIBIO」の素材は軽量で、撥水(はっすい)性が極めて高い。加工には3Dプリンターの技術を活用した。
*ベストとマスクからなる「人工のエラ」の試作モデル Credit: Photography by Mikito Tateisi

エラの役割を果たす仕組みは、水生昆虫の持つ特徴がヒントになった。素材の表面に空いた多数の細かい穴を通じて周囲の水から酸素を取り込み、二酸化炭素を放出する。
デザインを思い立ったきっかけは、環境問題への関心だった。地球温暖化に伴い海面が上昇し、大都市が水没する未来に着想を得たという。
現時点で「AMPHIBIO」はまだ試作段階にあり、表面積や気体の入れ替えの速度を人間が使用できる水準まで引き上げる必要があると亀井氏は話す。

将来的には、水没した大都市で生き残るためだけでなく、気軽に潜水を楽しむ目的でも使用してもらいたい考えだ。2018.08.15 Wed posted at 19:25 JST

2018年7月22日日曜日

縄文人、ラオスにルーツ?


縄文人、ラオスにルーツ?遺跡の人骨ゲノム解析
 愛知県の伊川津いかわづ貝塚から発掘された約2500年前の縄文人は、東南アジアの狩猟採集民族にルーツを持つ可能性があることがわかったと、金沢大などの国際研究チームが発表した。縄文人の人骨から全遺伝情報(ゲノム)を初めて解析し、明らかになったという。

 論文が6日付の米科学誌「サイエンス」に掲載された。研究チームは縄文人の遺骨のほか、ラオスやマレーシアなどの遺跡で発掘された約8000年~2000年前の人骨計25人分のゲノムを解析。縄文人と比べると、ラオスの遺跡(約8000年前)から発掘された狩猟採集民族やマレーシアの遺跡(約4000年前)から見つかった人骨のゲノムとよく似ていたという。
 金沢大の覚張隆史特任助教は「北方から日本列島にやってきた祖先とは別に、南方から来た祖先のルーツも今後明らかになる可能性がある」と話している。20180722 0706分 読売

2018年6月12日火曜日

ゲノム編集でがんの危険か


ゲノム編集でがんの危険か ノーベル賞級技術に黄信号?
 遺伝子を狙い通りに操作するゲノム編集技術のうちで、最も研究利用が進んでいる「クリスパー・キャス9」で遺伝子を改変した細胞はがん化する恐れが高まるとの研究成果を、スウェーデンのカロリンスカ研究所などのチームが11日、米医学誌に発表した。
 クリスパー・キャス9はノーベル賞確実とも言われ、医療などでの応用が期待されているが、難しい課題を突き付けられた形だ。
 チームは、クリスパーという分子を入れた際に効率よくゲノム編集できる細胞には、がん抑制遺伝子が働かない異常があることを突き止めた。一方、正常細胞ではクリスパーに対抗してがん抑制遺伝子が働き、編集に失敗しやすい。影響で細胞が死んだり、成長が止まったりする。結果としてがん化の恐れが高い細胞が多く残ることになり、チームは「人の治療に使う場合は注意が必要だ」としている。2018.6.12 17:38 産経

2018年6月5日火曜日

髪の毛のもと大量培養の技術開発


髪の毛のもと大量培養の技術開発 理研、再生医療実現に向け
 人の髪の毛のもとになる毛包組織を培養して大量に増やす再生医療技術を開発したと理化学研究所などが4日、発表した。安全性を確かめるため、近くマウスに移植する実験を行う方針。安全性が確認できれば、思春期以降に額の生え際や頭頂部の髪が薄くなる男性型脱毛症の人を対象にした臨床研究を来年にも始めたいとしている。
 脱毛症は男性型や薬の副作用によるものなどに分類され、国内に約2500万人の患者がいる。薬の使用や後頭部の毛包を移し替える方法はあるが、薬はやめると効果が続かず、移し替えも生やせる毛の本数に限界があるといった課題がある。(共同)201864 2016分 東京

2018年4月17日火曜日

歯に貼るだけで食べた物が分かる


歯に貼るだけで食べた物が分かる超小型デバイス開発
*歯に貼るだけで食べた物が分かる超小型デバイス開発のイメージ
 歯に貼り付けるだけで食べた物や飲んだ物を識別するセンサーチップを搭載した超小型のウェアラブルデバイスが開発された。このデバイスを歯の表面に装着すると、摂取した食物や飲料に含まれるグルコースや塩分、アルコールの情報が無線で携帯型デバイスなどに送信されるという。

 このデバイスを開発したのは米タフツ大学工学部教授のFiorenzo Omenetto氏ら。同氏らによると、これまでにも摂取した食べ物や飲み物の情報が分かるウェアラブルデバイスは開発されていたが、マウスガードや配線が必要で、劣化しやすく頻繁に交換が必要であるなど、さまざまな欠点があった。
 Omenetto氏らが今回、開発したのはわずか2mm四方の超小型デバイスだ。このデバイスは凹凸のある歯の表面にもぴったりと貼り付けることができるしなやかな素材でできているという。デバイスの中心部には栄養素やさまざまな化学物質を吸収する「生体反応層」があり、これを二種類の四角形のリング状になった金の層がはさんだ三層構造。これらの層は小さなアンテナのように電波を送受信する。

 Omenetto氏らによると、将来的にはより幅広い種類の栄養素や化学物質をターゲットにできるよう改造することも可能だという。また、同氏は「このデバイスは既に広く普及しているradio frequency identifierRFIDICタグなどを使用した無線通信による情報通信技術)を応用したものだ。歯だけでなく、皮膚など他の身体の部位に装着し、その部位における情報を読み取り、携帯型デバイスなどに情報を送信することも不可能ではない」と説明。「この新しいデバイスは、さまざまな用途で活用できるはずだ」と期待を示している。 CareNet 2018/04/17

2018年3月26日月曜日

宇宙滞在で遺伝子が変化


宇宙滞在で遺伝子が変化、一卵性双生児と一致せず NASA
*ケリー宇宙飛行士の遺伝子の7%は帰還後も正常な状態に戻っていないという(CNN) 宇宙に1年間滞在した宇宙飛行士は、身体の外見だけでなく、遺伝子にも変化が起きているという研究結果が、米航空宇宙局(NASA)の双子研究の一環として発表された。
この調査では、国際宇宙ステーション(ISS)に1年間滞在したスコット・ケリー宇宙飛行士の遺伝子のうち、7%は地球に帰還してから2年たった後も、正常な状態に戻っていないことが分かった。
研究チームは、ISS滞在中と帰還後のケリー氏の身体の変化を、地上にいた一卵性双生児のマーク氏と比較。その結果、以前は一致していた2人の遺伝子が、宇宙滞在後は一致しなくなっていたという。
スコット氏の遺伝子の7%の変化は、少なくとも5つの生物学的経路や機能に関連する遺伝子が変化したことをうかがわせる。
今回の研究結果は、NASAが進める人体研究プロジェクトのワークショップで1月に発表された。

研究チームは宇宙滞在によって起きる身体的変化を調べるため、スコット氏の代謝産物(生命の維持に必要)、サイトカイン(免疫細胞によって分泌)、たんぱく質(各細胞内の活力)について、宇宙滞在前と滞在中、帰還後に測定を行った。
その結果、宇宙滞在は酸欠によるストレス、炎症の増加、劇的な栄養の変化をもたらし、遺伝子発現に影響を及ぼしていることが分かった。
スコット氏の遺伝子発現は、地球に帰還すると93%が正常に戻ったが、残る数百の「宇宙遺伝子」は変異したままだった。その一部は宇宙滞在のストレスによって変異したと思われる。
スコット氏の細胞では、酸欠と高濃度の二酸化炭素が原因と思われる低酸素症が起きていた。また、「細胞の発電所」と呼ばれるミトコンドリアにも損傷の形跡があった。
老化の程度を表す染色体末端部位のテロメアにも変化が見られた。宇宙滞在中はテロメアの長さの平均値が大幅に伸びたが、地球に戻ると約48時間以内に、出発前に近い値に戻って落ち着いた。
そうしたテロメアの変化やDNAの損傷と修復は、放射線とカロリー制限によって引き起こされたと研究チームは推定する。
ほかにもスコット氏のコラーゲンや血液凝固、骨形成にも、体液移動や無重力の影響と思われる変化が起きていた。免疫が異常に活性化する現象も確認され、極端な環境の変化によるものと研究チームは推定している。
NASAが計画している火星の有人探査は3年間のミッションになる。ケリー氏が経験した1年間の宇宙滞在は、この計画に向けた科学的な足掛かりとなる。2018.03.15 Thu posted at 11:04 JST

2018年3月25日日曜日

高梨、歴代単独最多の通算54勝

高梨、歴代単独最多の通算54勝 W杯ジャンプ女子、平昌後4戦目
*高梨沙羅の1回目の飛躍=オーベルストドルフ(共同)
 【オーベルストドルフ(ドイツ)共同】ノルディックスキーのジャンプ女子で、平昌冬季五輪銅メダルの高梨沙羅(21)が24日、ドイツのオーベルストドルフで行われたワールドカップ(W杯)個人第14戦で今季初優勝し、ジャンプの男女を通じて歴代単独最多の通算54勝に到達した。
 高梨はW杯の個人戦通算104試合目の出場で、53勝で並んでいた男子のグレゴア・シュリーレンツァウアー(28)=オーストリア=を抜いた。昨季の最終戦から14試合足踏みが続いていたが、平昌五輪後、4戦目で節目の勝利を飾った。
 ジャンプ女子のW杯は2011~12年に始まり、今季が7シーズン目。2018325 0102分 東京

2018年2月12日月曜日

3400光年離れた恒星の最期

不気味な渦巻き模様…3400光年離れた恒星の最期
*(アルマ望遠鏡、ヒョスン・キム氏提供)
 遠い宇宙の暗闇に浮かび上がった不気味な赤い渦巻きは、地球から約3400光年先にある「ペガスス座LL星」の赤色巨星から放出されたガスをアルマ望遠鏡でとらえたものだ。
 赤色巨星とは、太陽に比較的近い質量を持つ恒星が年老いて最期を迎える前に大きく膨らんだ状態をいう。ペガスス座LL星の場合、直径は太陽の200倍以上に達している。

 渦巻きの中心は1つの星に見えるが、実は赤色巨星と別の恒星との連星で、互いに相手の周りを回っている。ガスを放出しているのは赤色巨星だけなので、このような渦巻き模様となったわけだ。 (晋)2018.2.12 06:42 産経

2018年2月6日火曜日

謎のボイニッチ手稿にAI、解読方法が判明?

謎のボイニッチ手稿にAI、解読方法が判明?
8割がヘブライ語の単語と一致、カナダの科学者らが主張
*ギャラリー:ボイニッチ手稿(写真クリックでギャラリーページへ)
米イェール大学の貴重書室に保管された小さく素朴な本「ボイニッチ手稿」は、世界で最も謎の多い書物の1つだ。貴重な文書には優美な文字と不思議な絵が並び、600年ほど前に書かれたと考えられている。使われているのは未知の言語か、暗号化された言語とされ、いまだ解読されていない。

 長年にわたり暗号解読家たちを悩ませてきた「ボイニッチ手稿」。何語で書かれているかすら分からない約600年前の謎の本に、カナダの研究者2人がAI(人工知能)を使って挑戦し、解読方法を発見したと主張している。 その論文が掲載されたのは、学術誌「Transactions of the Association of Computational Linguistics」。だが、手稿の内容はまだ謎に包まれており、他の研究者たちは懐疑的だ。

ボイニッチ手稿とは?
 ボイニッチ手稿は、15世紀の中央ヨーロッパで書かれた本で、暗号化された文字列とされている。今のペーパーバックより少し大きく、材質はもろい上質皮紙(字を書くための動物の皮)だ。ページ数は246。折り込みの索引があったらしいが、ずっと以前に失われた。ページ番号が飛んでいる箇所があり、どこかの時点で綴じ直されたことを示す。したがって、現在のページ順は刊行時から変わっている可能性がある。

*丸の多い優美な文字で書かれていた。

 書体は丸を多用した優美かつ独特なもので、2530字が左から右へ書かれ、段落は短い。あちこちに詳細な絵が挿入され、城やドラゴンの絵もあれば、植物、惑星、裸の人物、天文学のシンボルの図解もある。いずれも、緑、茶色、黄色、青、赤のインクで彩色されている。特に好奇心をそそるのは、何人もの裸の女性が一連の緑色の液体に浸かっている挿画だ。

 手稿は、1969年から現在まで米イェール大学のバイネキ稀覯本・手稿図書館に収蔵されている。名称の由来は、ポーランド人の古書商ウィルフリッド・マイケル・ボイニッチだ。ボイニッチは1912年、イタリアでイエズス会の図書館からこの本を購入。その後、一般に呼びかけて翻訳できる人を探したが、残念ながら誰一人成功していない。

*緑色の液体に女性が浸かっている。

手稿の内容について、手掛かりはあるのか?
 イラストに基づき、手稿は草本、天文、生物学、宇宙、薬学、処方という6つのセクションに分かれると研究者たちは考えている。魔術、あるいは科学の本かもしれない。
 古い記録からは、手稿が錬金術師や皇帝たちの手を経てきたことが分かる。16世紀後半には、神聖ローマ皇帝が英国の占星術師から600ベネチア・ドゥカートで手稿を購入。皇帝はこれを、中世の托鉢修道会士で偉大な哲学者であるロジャー・ベーコンの作だと考えていた。後に、手稿はボヘミア人薬剤師の手に渡った。

最新の研究で何が分かったのか?
 論文の著者らはボイニッチ手稿について、「暗号解読の課題のうち最も困難な部類」だと述べている。使われている秘密の暗号どころか、どの言語で書かれているのかも分からないからだ。おそらく、後者の方が大きな問題だろう。

 2人の研究者は、独自に設計したコンピュータープログラムで手稿に挑んだ。彼らはもともと、手稿は母音を省略した1種の「アルファグラム」、つまり1単語中の文字をアルファベット順に並べ替えたアナグラムと推測していた(例えば、「manuscript」(手稿)はアルファグラムで「acimnprstu」となる)。そこでアルゴリズムを訓練し、言語を変えて書かれた国連の世界人権宣言380種類を解読できるようにした。

 このAIが、97%の成功率でアナグラムと現在の単語を一致させられた段階で、ボイニッチ手稿の最初の10ページに書かれた文字列を読ませた。
 アルゴリズムの判断は、暗号化された単語の8割以上がヘブライ語だったというものだった。

 これで、言語はおそらく分かった。次は、使われている暗号を読み解く必要がある。そこで、2人はヘブライ語が母語の同僚に冒頭の文を渡したが、意味の通る英語に訳すことはできなかった。他に意見を聞ける学者がいなかったため、2人はGoogle翻訳を使うことにした。多少のスペルミスを直した上で、最初の文はこう読めた。「家長と聖職者、私、そして人々に彼女は勧めた」。奇妙な文だが、確かに意味をなしている。
 加えて、「草本」の章と呼ばれる72語の部分を訳したところ、2人が推測した暗号から、「農家」「光」「空気」「火」という単語が解読できた。

えっ……Google翻訳?
 そう、Google翻訳だ。この機械翻訳システムは、人が翻訳した数億もの文書を分析することで機能している。そして統計学を使い、過去の翻訳に基づいた翻訳結果を吐き出すのだ。1語ずつというよりも語句のまとまりごとに訳してはいるが、人間の翻訳者に並ぶ有能さとはまだ言えない。

 では、話を手稿に戻そう。

ほかにも、この研究に問題点はあるのか?
 まず、今回のAIプログラムは、15世紀の言語ではなく、現代の言語を英語に翻訳するという訓練を受けた。ボイニッチ手稿はヘブライ語で書かれたのかもしれないが、だとしても中世のヘブライ語のはずで、Google翻訳が使っている現代のヘブライ語ではない。

 また、この人工アルゴリズムは文字列の80%をヘブライ語と一致させたが、あと20%は別の言語ということになる。論文によれば、手稿にはヘブライ語以外にマレー語、アラビア語、アムハラ語が使われている可能性があるという。いずれもヘブライ語とはかけ離れた言語だ。

 公平のために言えば、研究者たちはボイニッチ手稿の全てにわたって秘密を解き明かしたと主張してはいない。そうではなく、文字列の言語と暗号化の体系を特定したとしている。次のステップは、ヘブライ語とアルファグラムに精通した学者を探すことだ。2人は、この暗号解読法を他の古い手稿にも応用しようと意気込んでいる。
 しかし、過去の挑戦者たちはいずれも正解にたどり着けず、さまざまな説が出されては、すぐに学者たちに誤りを指摘されてきた。ナチスの暗号「エニグマ」を解読した、有名なアラン・チューリングでさえ、ボイニッチ手稿を読み解くことはできなかったのだ。
 この文字列が暗号化された言語なのか、人工言語なのかもまだ分からない。しかも、全く無意味である可能性も残っている。

手稿について、ほかの説はあるのか?
 カナダのチーム以外にも、手稿がヘブライ語である可能性を指摘する研究者はいる。ほかにも数十の言語の可能性が議論されてきた。そのなかには、ラテン語や、シナ・チベット語族から生じた言語も含まれる。

 この本は、ロジャー・ベーコンの初期の発見や発明を記しているのではという見方もある。一方、キリスト教の異端の教派による混合言語(ピジン)の祈祷書とも言われる。さらには、オカルト哲学者が金を稼ごうとして売った無意味な文の寄せ集めという説さえある。
 暗号学の歴史の中で、ボイニッチ手稿は指折りの未解決問題であり続けている。毎年、多くの解釈が発表されるが、決め手となる暗号体系はまだ見つかっていない。2018.02.06 ナショジオ


本ブログ: (2014.5.18 及び 2012.12.28) も是非 参照してください

2018年2月1日木曜日

「白いイチゴ」

「白いイチゴ」できた…甘さまろやかマンゴー風
*白さが特徴のイチゴの新品種(中央)。左はとちおとめ、右はスカイベリー
 福田・栃木県知事は29日の記者会見で、栃木県農業試験場いちご研究所(栃木市)がイチゴの新品種「栃木iW1号」を開発し、26日に国に品種登録の出願をしたと発表した。

 大きく白い果実が一番の特徴で、酸味が少なく、まろやかな甘さの「マンゴーのような味」(県農政部)だという。20180201 1743分 読売

2018年1月31日水曜日

蚊は叩こうとした人を覚えて避ける

蚊は叩こうとした人を覚えて避ける、はじめて判明
叩き損ねても効果あり、攻撃を加えた人の匂いを学習
*血を吸う蚊。(Photograph by Joel Sartore, National Geographic Creative
 今度、蚊が血を吸おうと腕に止まっているのを見つけたら、絶対によく狙った方がいい。もし叩き損ねたとしても、その蚊が次にあなたを狙わなくなる可能性があるからだ。

 蚊に刺されそうなときに叩くと、蚊は死にそうになった体験とその人の匂いを結びつけて覚え、将来その人を避けられるようになるという研究結果が発表された。125日付けの学術誌「Current Biology」に掲載されたこの論文は、刺す相手についての学習能力が蚊にあることをはじめて示したものだ。
「パブロフの蚊みたいなものです」。論文の主要な筆者であるジェフ・リッフェル氏は、合図があると条件反射でヨダレを出すようになった有名な犬の実験になぞらえる。

 実際のところ、米ワシントン大学の神経生態学者のリッフェル氏が試したのは、この犬の場合と同じ「古典的条件付け」という学習だった。
 蚊は、人間などの美味しい獲物から漂うある種の匂いに引き寄せられる。そこで、蚊には非常に魅力的な人間の匂いが漂う中で、ネッタイシマカが刺すのを邪魔するように、叩いた際に腕を伝わるのと同程度の小さな振動を20分間にわたり繰り返した。
 すると、蚊はその後24時間以上もこの匂いを避けるようになることがわかった。その効果は、害虫忌避剤ディートを用いた市販の虫よけスプレーと同じくらいの強さである。

 さらに、古典的条件付けによる関連性の学習には、脳内の神経伝達物質ドーパミンが関わっていることがわかっている。続けてドーパミンが機能していない蚊で実験を行ったところ、予想通り、このグループの蚊は特定の匂いが危険を意味することを覚えられず、以前と同じように飛び込んでいった。


「学習能力のおかげで、蚊は信じられないほど柔軟に行動しています」とリッフェル氏。「蚊は、刺されるのを防ぐのがうまい人とそうでない人を学習できます。もしその仕組みがわかって、逆手にとることができれば、もっと効率よく蚊を追い払えるようになるでしょう」  2018.01.30ナショジオ

2018年1月18日木曜日

老化する人間の細胞を「若返らせる」

老化する人間の細胞を「若返らせる」ことに成功 英大学研究者らが発表
 「老化した人間の細胞を若返らせる」ことに、英大学の研究者らが成功したと発表した。古い細胞の機能を回復させることができれば、将来的に人間は老化による影響を受けずに年をとれる可能性があるのだという。その驚きの研究結果とは。

加齢とともに老化する細胞
 われわれの細胞のなかにあるDNAは分裂のたびに複製されるが、テロメアに限ってはすべてが複製されず、分裂のたびに少しずつ短くなっていく。最終的にテロメアが限界まで短くなると、それ以上の細胞分裂は不可能となる。つまり、短いテロメアをもつ細胞は、“年老いた”細胞なのだ。

 エクスター大学で教鞭をとる分子遺伝学が専門のローナ・ハリーズ教授をはじめとした研究グループは、これらの年老いた細胞において「スプライシング因子」と呼ばれる一連の遺伝子が、徐々に不活性化していくことに注目。スプライシング因子は、細胞分裂の際にDNAから転写されたRNAがきちんと機能するまで“編集”したり、遺伝子が全範囲の機能を果たしたりする際に極めて重要な因子である。これらはまた、人々が加齢する過程であまり効率的に働かないか、まったく機能しなくなる傾向にあり、細胞が環境のストレスに対応する能力を大きく制限する。
 大半の高齢者の臓器にみられる老化細胞も、より少数のスプライシング因子を備えている。これが哺乳類の老化、または加齢に関連する病気の側面でもあるとして、注目されていた。

「レスベラトロール類似体」で細胞が若返る
 老化した細胞のスプライシング因子を再び活性化させる鍵となったのは、赤ブドウ、赤ワイン、ダークチョコレートなどにも含有される「レスベラトロール類似体」と呼ばれる化学物質だ。これを適用された培養細胞を観察すると、数時間のうちにスプライシング因子が活性化し、老化細胞は若い細胞のようにふるまい、分裂を始めたという。
 「スプライシング因子のレヴェルを回復させる分子で老化細胞を処理すると、若い細胞の特徴をいくつか取り戻せることを示唆しています。それらは成長でき、テロメアまでも若い細胞のように長くするのです」と、ハリーズ教授は言う。

 共同研究者であるエクスター大学のエヴァ・ラトーレ博士も、細胞の変化とその度合いに驚きを隠さない。「培養皿のいくつかの細胞が若返っているのを見ても、それを信じることができませんでした。古びた細胞が、若い細胞のように見えたのです。まるで魔法のようでした。この実験を幾度も繰り返しましたが、いずれの場合も細胞が若返りました。その意味と研究の可能性に非常に興奮しています」

 この研究結果は、古い細胞の機能を回復させることで人々が老化による影響を受けずに、健康的に寿命をまっとうできる可能性を示している。研究者らは、レスベラトロールのようにシンプルな化学物質が高齢者の健康を向上させられるポテンシャルを秘めていることに驚くかたわら、この技術の応用のためにさらなる研究が必要だとしている。 2018.1.17 20:23 産経