領有権を主張する中国と台湾
中国と台湾は尖閣諸島の領有権を主張している。しかし、それは1968(昭和43)年に日本、中華民国、韓国の海洋専門家が国連アジア極東経済委
員会の協力のもと、尖閣諸島付近を含む東シナ海の海底調査を行った結果、石油資源が埋蔵されている可能性が指摘されてからのことだ。
日本政府は、それ以前に中台が尖閣諸島の領有を考えていなかったことは「サンフランシスコ講和条約第3条に基づき、米国の施政下に置かれた地域に尖閣諸島が含まれている事実に、異議を唱えなかったことからも明らか」としている。
中国は領有権を主張する歴史的根拠として(1)明代の歴史文献に釣魚島(魚釣島)が登場しており、琉球国には属しておらず、中国の領土だった(2)1895年の日本政府による領土編入は日清戦争の終結を待たずに行われた不法占拠だ(3)サンフランシスコ講和条約で米国の施政下に置かれたのは米国による不法占拠で、それを沖縄返還協定によって日本に与えたーの3点を挙げている。
しかし、「明代から領土」とする中国の主張は、石井望・長崎純心大准教授の調査で、明から1561年に琉球へ派遣された使節、郭(かく)汝(じょ)霖(りん)が皇帝に提出した上奏文に、尖閣諸島の大正島が「琉球」と明記されていたことが判明、大きく崩れた。
さらに、日本の領土編入後も、1920年に中華民国駐長崎領事が魚釣島に漂流した中国漁民を助けてもらったとして石垣の人々に送った「感謝状」に「日本帝
国八重山郡尖閣列島」と明記されていることや、1933年発行の「中華民国新地図」で尖閣諸島が日本に属すると扱われていることなどから、日本政府は「中国の歴史的根拠は有効ではない」としている。
また、中国は国際法の観点から(1)日本は尖閣諸島を「無主地」として「先占」したとしているが、釣魚列島は明代から「無主地」ではなく統治権が確立されていた(2)「ポツダム宣言」は日本が略取した中国のあらゆる領土の放棄を意味しており、台湾に所属する釣魚島も含まれる(3)サンフランシスコ
講和条約は中国を排除した条約で、当時の周恩来外交部長は「法的根拠がなく無効」と言明しているーことなどを挙げている。
一方、台湾も中国と同様、歴史的に明代から中国の領土だったと主張。さらに(1)地理、地質的に台湾と連なっている(2)台湾は周辺水域で漁業を行い、釣魚列島の利用も
自然的、日常的に行われている(3)国際法上は日本の「先占」は「無主地」ではないから成立せず、戦争の勝利に乗じた不法占拠であって、第二次世界大戦後の「ポツダム宣言」や「日華平和条約」からいって台湾の領土に復帰されるべきだーとしている。
こうした中国と台湾の主張について、日本政府は「歴史的、地理的、地質的根拠として挙げている諸点は、いずれも尖閣諸島の領有権の主張を裏付けるに足る国際法上有効な論拠とは言えない」との見解だ。
中国の主張は現在も変わらないが、台湾の姿勢には変化が生じている。馬英九総統は今月5日の式典で「東シナ海平和イニシアチブ」を提起。尖閣諸島をめぐる
紛争については「主権はわが国にある」としながらも「争議は棚上げし、平和的な手段で解決して資源を共同開発するためのメカニズムを構築する」ことを提案した。もちろん、日本はこの主張も「受け入れられない」との立場だ。
ちなみに米国は「尖閣諸島には日米安保条約第5条が適用される」として日本の立場を支持しているが、中国や台湾との紛争には関与しない姿勢をとっている。2012.8.12 23:16 産経ニュース
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