2014年1月30日木曜日

常識覆す発見で万能細胞作製



簡単で安全、常識覆す発見で万能細胞作製
 STAP細胞は、万能細胞の作製には高度な技術が必要という従来の常識を打ち破った。再生医療への応用を目指し、世界中で研究競争が始まるのは必至だが、実用化に向けて解決すべき課題も多い。
 外的刺激による細胞の初期化は、植物ではよく知られている。ニンジンを切ると、切断が刺激となって切り口に初期化状態の新たな細胞が作られ、再び根や葉に分化していく現象が一例だ。だが、哺乳類の細胞では外部からの刺激で初期化は起きないとされてきた。
 ところが、マウス由来のSTAP細胞は、弱酸性溶液に浸すという簡単な刺激で初期化に成功した。小保方リーダーによると「細いガラス管に数回通したり、弱い毒素で処理する方法でも初期化できた」そうで、さまざまな外的刺激が細胞初期化に有効とみられる。
 これは非常に興味深いメカニズムといえる。人間の体は日々、さまざまな刺激を受けているが、それでも初期化されることがないのはなぜかなど、今後、多様な研究が展開されそうだ。
 万能細胞の代表格である人工多能性幹細胞(iPS細胞)は、皮膚などの細胞に、初期化を促す遺伝子を注入して2~3週間培養し作製する。初期化の成功率は0.2%未満にとどまり、遺伝子操作の影響によるがん化リスクもある。
 一方、STAP細胞はマウスの脾臓(ひぞう)から抽出した血液細胞の一種、リンパ球を約30分、弱酸性溶液に浸して刺激し、2~7日培養するだけでいい。初期化の成功率は7~9%と高く、がん化のリスクは低い。iPS細胞よりも、はるかに簡単で効率的で安全だ。
 ただ、すぐに再生医療に応用できるわけではない。今回、実験に使ったリンパ球を採取したマウスは、すべて生後1週間以内の若い個体。大人のマウスでは成功率は極端に落ちる。細胞の老化が原因とみられるという。
 今後の研究は、人の細胞も同じ方法で初期化できるかが鍵を握る。実用化には安全性の確認や、作製条件の緩和など多くの課題を克服する必要がある。(伊藤壽一郎)2014.1.29 21:18 (1/2ページ)産経ニュース

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