*大誤審完全試合
2010年6月2日のMLBタイガース対インディアンス戦のこと、タイガースのアーマンド・ガララーガ投手は9回2死までパーフェクト。27番目の打者を一塁ゴロに打ち取り、カバーに入ったガララーガが一瞬先にベースを踏んだが、ジム・ジョイス審判の判定はセーフ。史上21回目となる完全試合が消えた。
ところが試合終了後、審判歴22年のジョイス審判はロッカーでビデオを見て「誤審」を確認。涙目で「打者走者の足が一塁のベースを蹴るのが一瞬早かった、と確信してセーフと言ったが間違いだった。完全試合を若者から奪ってしまった。大誤審だ」と記者団に語り、クラブハウスではガララーガ本人にも直接謝罪した。
審判が自らの間違いを直接選手にわびるという異例の行為に、ガララーガは寛容にこう言った。
「彼は本当に恐縮していた。誰しも完全(パーフェクト)ではない(Nobody's perfect)」
翌日の試合、タイガースのリーランド監督は、球審に回ったジョイスのもとに先発メンバー表を持っていく役をガララーガに任せた。「誤審にはもうわだかまりはない」という監督の配慮だ。ガララーガとジョイス審判の握手、涙をぬぐいメンバー表を確認するジョイス審判、その肩をぽんとたたくガララーガ、ガララーガの背をぽんとたたくジョイス審判。このとき、スタンドのブーイングは拍手と声援に変わった。
誤審を認めて謝罪するジョイス審判、それを寛大に受け入れるガララーガ投手――アメリカは「だれでも失敗する。失敗を認めて謝ったらセカンドチャンスを与える」という国で、ジョイス審判は心から謝罪したから許されたという。一生に1度あるかないかの記録を消され、なお相手を思いやるガララーガ投手の姿が「史上最高の試合」とのことだ。
ガララーガは週間MVPに選ばれた後、こうコメントしている。
「誰も終わったことは変えられない。僕はみんなが喜んでくれて、そして僕が完全試合をやったと信じてくれているとわかっている。史上、完全試合が何度あったかと話題になるたび、20という数字とともに、みんな僕の完全試合を挙げるだろう。だって僕のはアウトを28も取った特別なヤツなんだから」
一試合に28連続アウトの完全試合!――ガララーガ投手のこの記録は今後も破られることはないだろう。ガララーガ投手の偉大なる寛容の精神とともに・・・。
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