2015年8月9日日曜日

薬分子:塊が効く

薬分子:塊が効く、吸収最大50倍 日英チーム
*薬の分子の大きさと吸収効率のイメージ
 薬の有効成分の分子を集積して10倍程度に大きくすると、細胞への吸収効率が最大で50倍も高まることが、国立精神・神経医療研究センターの青木吉嗣・神経研究所室長ら日英の研究チームの動物細胞などを使った実験で分かった。物質が小さいほど細胞に吸収されやすいとする従来の考え方を覆す成果で、青木室長は「さまざまな医薬品への応用が可能で、薬の作り方を根底から変えるかもしれない」と話す。【藤野基文】

 チームは、筋肉が徐々に衰えていく難病「デュシェンヌ型筋ジストロフィー」の新薬候補を開発し、臨床試験を進めている。この新薬候補は一定の効果が確認されているが、点滴で投与しても多くが尿として体外へ排出されてしまい、細胞への取り込み効率の改善が課題になっている。
 新薬候補の分子一つの大きさは約4.5ナノメートル(ナノは10億分の1)だが、青木室長らは血液中で分子が集まって塊になることを発見した。

 そこで、分子を多数集積させ、大きさや構造を変えて試したところ、直径約40ナノメートルのきれいな球状の粒子にすると最も吸収効率が高く、マウスの筋細胞などを使った実験では最大50倍も細胞に取り込まれやすくなった。細胞にとって最も認識しやすいサイズと考えられるという。
 薬の吸収効率が上がれば投与量を減らせるメリットがある。また、薬の分子は体内で絡まって不規則な形を作り有害となる場合があるが、きれいな球状にすると、これも避けられる。

青木室長は「人でも同様の効果があるか研究を進め、数年後には薬への応用可能性を実証したい」と話す。毎日新聞 20150809日 0915

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