2015年8月28日金曜日

47都道府県を食べるレストラン

47都道府県を食べるレストランでご当地食材を満喫
 「根室食堂」「佐賀県三瀬村ふもと赤鶏」など、狭い地域の名産品を売りにする「ピンポイント産直居酒屋」が増えている。そんななか 、日本全国の食の魅力の発見をテーマにしたレストラン「食べる47都道府県47DINING(ヨンナナダイニング)」が20157月、東京・池袋にオープンした。

 運営会社の47PLANNING(東京都渋谷区)の鈴木賢治社長によると、同店は日本全国のおいしい食材を掘り起こし、各地の魅力を伝える「食の発信基地型レストラン」。地方の生産者から直接取り寄せた食材を用いた定番メニュー約30種のほか、季節メニュー約10種、月替わりで特定の市町村と連携した地域メニュー約10種を提供する。好評の地域メニューは順次、定番メニューに加えていくとのこと。
 地域メニューは、7月が鈴木社長の故郷でもある福島県いわき市の夏野菜を中心とした料理だった。8月は宮城県石巻市の素材を使ったものを展開中だ。また通常営業と併行し、同社が従来からプロデュースと運営を行っていた地方自治体の食イベントも継続。「全国の隠れた美味を発掘し、発信していく」(鈴木社長)とのこと。
食の発信基地型レストランとはどのようなものなのか。足を運んで確かめてみた。

■石巻雄勝産のカキ、宮崎県諸塚村産のイノシシ肉に驚がく
 まずは店の顔ともいうべき、定番メニューから見ていこう。
「石巻雄勝産牡蠣の酒蒸し」(1380円、51580円)は、通常のカキの3倍くらいの大きさ。雄勝湾は入り組んだ地形で、養分の豊富な山からの水が湧き水となるため、カキが大きく成長するのだという。大きいが大味ではなく、非常に濃密な味わいだった。
「モロッコハウスの低温調理ローストイノシシ」(宮崎県諸塚村産、880円)は塩とオリーブ油だけのシンプルな味付けでも、臭みが皆無。低温調理のため非常に柔らかく仕上がっている。
 
*店内にはその日の料理に使用されている素材や提供可能な地酒などがプレゼンテーションされている

定番メニューはどれも非常にシンプルな調理法で、素材への自信がうかがえた。またたしかに素材の良さを実感させられる料理が多く、たとえば雄勝産のカキは通常のカキの3倍ほどの大きさで、食べ応えがあるだけでなく、うまみも濃厚だった。宮崎県諸塚村産イノシシ肉のローストは、これまでぼたん鍋などで食べたことのあるイノシシ肉とは別格の味わい。全くクセがなく、絹のようなめらかな肉質、軟らかさで驚いた。全国から質の高い食材を集めていることは実感できた。
 なぜこのような業態を思いついたのか、鈴木社長に聞いてみた。

47パターンがあれば、飽きずにリピート
 同店を運営する47PLANNING2009年、イベント会社出身の鈴木社長が「47都道府県を独自の食と文化を基に活性化する」ことを目的に、28歳で設立した会社。「ただの金儲けではなく、リーマンショックで暗く沈んでいた日本を元気にするような事業をしたいと考えた。日本が元気になるにはまず、地方が元気になることが重要。モノを売るノウハウは持っていたので、それを使って日本各地に埋もれている良質な素材の需要を高めれば、日本の経済全体を活性化する一助になると考えた」(鈴木社長)。

 まず鈴木社長は、地方の食を紹介するプレゼンテーション型イベントを中心に活動を始め、全国の特産物を提供する飲食店の開業も進めていた。しかし、予定していた飲食店のオープン直前に東日本大震災が発生。福島県いわき市の海沿いで製氷業を営んでいた鈴木社長の生家も一瞬で全壊したという。
 そこで、「日本を元気にするよりまず、地元であるいわきを元気にしなければ」(鈴木社長)と、食を通じた地域の再生事業にシフトチェンジ。震災で営業ができなくなった飲食店オーナーを中心に、いわき市駅前に「夜明け市場」を開設。また、検査済みの福島米と県内の素材を使ったお米バーガー「こめてKOMETE」を開発した。味やパッケージデザインが好評を呼び、20143月からは羽田空港の空弁に採用されている。

 さらに「単発のイベントだけではなく継続的な場所が必要」と考え、2011年に東京・高井戸に飲食店「47DINING」をオープン。20146月に閉店し、池袋に新たにオープンさせたのが今回の店だ。震災から4年たった今、「被災地としてだけでなく、47都道府県の一地方として福島県もっと広く知ってほしい」と考えるようになったためだという。

 生産者とお客を直につなぐ活動にも力を入れていて、生産者を招いたイベントも予定。レストランで提供している食材で個人的に注文できるものがあれば、積極的に紹介していくという。復興支援事業では商品企画にも参加したが、そのときの体験で「やはり餅は餅屋。商品企画は生産者が考えたほうが質も効率も高い」(鈴木社長)と実感。食材の魅力を紹介する役回りに徹することに方針を変えたそうだ。2015/8/22 3:30 日経

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