2016年12月29日木曜日

地球の地下「超高温ジェット噴流」を確認

地球の地下3000mで発生する「超高温ジェット噴流」を確認 欧州宇宙機関と欧州の大学研究チーム
*自転車などの発電機(ダイナモ)の回転する導体と同じように、外核を移動する鉄などの流体が電流を発生させる。これが地球の磁界を生み出すと考えられている。IMAGE COURTESY OF ESAAOES MEDIALAB

欧州宇宙機関(ESA)と欧州の大学研究チームは、地球の地下深くに高速で動くジェット噴流が生じていることを確認した。地球の外核には「超高温の流体である鉄の海」があり、その旋回によって磁界が生じると考えられている(外核は地下約3,000kmにあり、その温度は、最も外側の部分で摂氏4,400度、最も内核に近い部分で6,100度とされる)。自転車などの発電機(ダイナモ)の回転する導体と同じように、移動する鉄などの流体が電流を発生させ、これが地球の磁界を生み出すわけだ。

Nature Geoscience』に発表された今回の研究は、英リーズ大学のフィル・リヴァモア率いる研究チームと、デンマーク工科大学の研究者たちが、ESAの地磁気観測衛星「SWARM」を使用して行ったものだ。201311月に3基が打ち上げられたこの観測衛星は、地球の核、マントル、地殻、海、電離圏、磁気圏から生じるさまざまな磁界の測定を行っている。これらの磁界が集合的に形成する地球全体の磁界が、宇宙線から地球を保護しており、太陽風の際などに荷電粒子が地球に飛び込むのを防いでいる。磁界を調査することは、地球内部を解明できる方法のひとつだ。

「人類は、地球のことより太陽のことの方がよくわかっているのです。太陽は地球と違って、3,000kmもの岩盤で遮られていないからです」と、デンマーク工科大学のクリス・フィンレーはリリースで語っている。
磁界の変化を追跡すれば、核の鉄がどのように動いているのかがわかる。SWARM衛星から得られる正確な測定値を利用することで、さまざまな磁気発生源を分析することができ、核から生じる磁気がより明確になる。

特徴のひとつが「フラックス・パッチ」(flux patches)というパターンだ、ほとんどが北半球、特にアラスカとシベリアの地下で見られるこの現象は、磁力が大きく、その変動もわかりやすいスポットで、外核の中の流体状態の物質の「ジェット噴流」が生じていると考えられている。(SWARMが観測したジェット噴流は年40km以上という速さであり、これは一般的な外核の動きの3倍、プレートの動きの数十万倍に相当するという)。

外核の内部になんらかの境界があり、この境界が流体と接触することによってジェット噴流が生じると考えられている。「もちろん、流体を境界に向かって動かすには力が必要です。この力は、浮力から来ているか、あるいは、核内の磁界の変化から生じている可能性が高いと考えられます」とリーズ大学教授のレイナー・ホラーバッチは述べている。2016.12.29 14:39 WIRED

2016年12月28日水曜日

真珠湾を和解の象徴として記憶

「真珠湾を和解の象徴として記憶」 首相、日米開戦の地で演説
 【ホノルル=生島章弘】米ハワイ訪問中の安倍晋三首相は二十七日午前(日本時間二十八日朝)、七十五年前に日米開戦の舞台となった真珠湾をオバマ米大統領とともに訪れた。旧日本軍の奇襲攻撃によって撃沈された戦艦の上に立つ追悼施設アリゾナ記念館で、先の大戦の犠牲者を慰霊。首相はこの後の演説で、かつて敵国同士だった日米両国が「和解の力」で強固な同盟関係を築いたと強調し、真珠湾を「和解の象徴だ」と語った。「不戦の誓い」は「不動の方針」とする一方、先の大戦に対する謝罪の言葉は盛り込まなかった。

 首相は演説で、真珠湾攻撃を機に始まった戦争の犠牲者全てに「日本国首相として、永劫(えいごう)の、哀悼の誠を捧(ささ)げる」と述べた。「戦争の惨禍は二度と繰り返してはならない」として、戦後の日本が堅持した不戦の誓いや平和国家としての歩みは「これからも貫いていく」と強調した。

 首相に続いて演説したオバマ氏は首相の真珠湾訪問を「和解の力を示すものだ」と評価。両首脳の演説後、首相は真珠湾攻撃を生き延びた元米兵と抱き合った。

 これに先立ち、両首脳はアリゾナ記念館で、命を落とした米軍兵士らの名前を刻む大理石の慰霊碑に献花し、海に向かって花を投じた。20161228 1400分 東京新聞

2016年12月20日火曜日

「反物質」測定に成功

「反物質」測定に成功、宇宙解明に向け第一歩
 日本などの研究者が参加する欧州合同原子核研究機関(CERN(セルン))の国際研究チームは、反物質の性質を精密に測定することに成功した、と発表した。19日付の英科学誌ネイチャーに論文が掲載される。
 
宇宙の誕生時、物質と反物質は同数あったと考えられる。しかし現在の宇宙には物質が大量にあり、反物質はほとんど存在しない。「消えた反物質」は物理学の謎で、物質と反物質には「電気以外に異なる性質がある」という説があるが、反物質は物質と触れると消滅するため検証が困難だった。

 研究チームは、水素の反物質「反水素」を人工的に作り、磁場の中に高い効率で閉じこめる技術を開発。反水素にレーザー光を当てる方法で、反水素のエネルギーが変化する様子を、精密に測ることに成功した。チームの石田明・東京大助教は「『物質優勢の宇宙』の解明に向け、第一歩を踏み出せた」と話している。読売新聞 12/20() 14:53配信

反物質「反ヘリウム」を宇宙空間で検出か

ISSのアルファ磁気分光器、反物質「反ヘリウム」を宇宙空間で検出か
欧州原子核研究機構(CERN)などの国際研究チームは8日、国際宇宙ステーション(ISS)に設置したアルファ磁気分光器(AMS)の分析結果から、ヘリウムの反物質である「反ヘリウム」を宇宙空間で検出した可能性があると発表した。宇宙の始まりに関する謎を解明するカギになるとみられる。

AMSは、2011年にISSに設置され、宇宙空間を飛び交うさまざまな粒子の検出を行ってきた。それらの観測データは、「宇宙の始まりに存在していたはずの反物質はどうなったのか?」「ダークマターの正体は何か?」といった宇宙の謎の解明に手がかりを与えるものと期待されている。

これまでの5年間に、900億回以上の宇宙線事象の観測(粒子検出)を行い、このうちヘリウム粒子の検出は37億回あった。そのほとんどはプラスの電荷を持つ通常のヘリウム原子核だったが、そのほかにマイナスの電荷を持つ反ヘリウム粒子(ヘリウムの反物質)と思われるデータが数個だけ含まれていたという。反ヘリウムは、反陽子2個と反中性子1個で構成される反物質。物質と反物質が接触すると巨大なエネルギーを放出して対消滅する。これまで反水素原子を人工的に作り出す実験などは成功しているが、自然界で反物質が見つかった例はない。       
ISSに設置されたアルファ磁気分光器AMS-02(出所: AMS Collaboration)

宇宙のどこかに「反物質の領域」が存在する?
宇宙の始まりを説明するビッグバン理論では、宇宙誕生時には物質と反物質が同じ量だけ存在していたと考えられている。しかし、陽電子(電子の反粒子)や反陽子(陽子の反粒子)などを除くと、自然の宇宙に反物質は見当たらない。この理由を説明するのが、宇宙の初期に反物質は物質と接触して対消滅し、物質だけが残ったとするバリオジェネシス理論である。

反物質が消滅するときには同量の物質も消滅してしまうので、今ある物質で構成された宇宙ができあがるためには反物質よりも物質のほうが多い状態になっていなければならない。反物質よりも物質のほうが多くなる理由は、粒子の「対称性の破れ」で説明される。ただし、バリオジェネシス理論が成り立つためには、これまで実験的に確認されている「CP対称性の破れ」だけでは不十分であり、「強い対称性の破れ」や「陽子崩壊」といった現象が必要とされる。

問題なのは、世界中の研究機関が実験を続けているにもかかわらず、「強い対称性の破れ」も「陽子崩壊」も未だ確認されていないということである。そこでもうひとつ別の可能性として、反物質は完全に消えてしまったわけではなく、「反物質で構成された領域が宇宙のどこかに残っているのではないか」と考えることもできる。

宇宙空間での反ヘリウム検出は、宇宙のなかに反物質領域が今も大量に残っている根拠となる可能性があり、本当であれば非常に重要な発見になる。研究チームは今後、より多くのデータ蓄積と詳しい解析を進め、検出された粒子が本当に反ヘリウムであるのかどうか検証していくとしている。
自然界での反ヘリウムは、20042008年、高エネルギー加速器研究機構(KEK)などの日米共同チームが南極上空を周回する高高度気球による宇宙線観測実験で検出を試みた例があるが、このときは検出できなかった。

ダークマターの存在を示唆するデータも
宇宙の質量・エネルギーの27%程度を占めるとされる未知の重力源ダークマターに関しても、AMSの観測から興味深いデータが得られている。粒子状のダークマター同士が衝突すると、陽電子や反陽子などの粒子が生成されると考えられており、この理論を検証するための陽電子・反陽子の観測が続けられてきた。
*陽電子フラックスの観測データと理論モデルの比較(出所: AMS Collaboration)

陽電子フラックス(流束)の解析結果のグラフでは、8GeV(キガ電子ボルト)くらいのエネルギースペクトルからフラックスが増大し、高エネルギー領域で急激に低下する曲線が見られた。この曲線は、宇宙線と星間物質の衝突による陽電子生成モデルとは異なるものであり、質量1TeV(テラ電子ボルト)のダークマターを想定した理論モデルとよく一致していた。


また、反陽子のデータも、ダークマターの存在を示唆している。宇宙空間に存在する反陽子の数は極めて少なく、その割合は陽子の1万分の1程度とされる。AMSでは5年間に349000個の反陽子を検出し、このなかから100GeV以上のエネルギーを持った反陽子2200個を特定した。これらの分析の結果、実際の反陽子の数は予想より多く、パルサー由来ではうまく説明できないことがわかった。過剰な反陽子を説明するには、ダークマター粒子の衝突によるとするか、あるいは未知の天文学的モデルを作る必要があるという。[2016/12/13] マイナビニュース

2016年12月13日火曜日

大隅さん

大隅さん「家族と一緒に過ごせ、面白い経験」
*メダルを手にする大隅良典・東京工業大栄誉教授(12日午前、ストックホルムで)=代表撮影
 【ストックホルム=三井誠】ノーベル生理学・医学賞の授賞式に出席するなど、スウェーデン国内での関連行事をほぼ終えた大隅良典・東京工業大栄誉教授(71)が12日朝(日本時間12日夕)、滞在中のストックホルム市内のホテルでインタビューに応じた。

 6日にストックホルムに到着後、記念講演や晩さん会などの様々な行事をこなした大隅さんは、「(ノーベル賞は)100年続いており、ほかの賞にはない国を挙げてのイベントだと感じた」と語った。多忙な日程になったが、「孫も含めて家族と一緒に過ごせ、日本でもなかなかない面白い経験ができた」と、喜んでいた。20161212 2219分 読売

2016年12月10日土曜日

羽毛の生えた恐竜の尾

羽毛の生えた恐竜の尾、琥珀の中から発見 体色など解明へ
*琥珀に閉じ込められた状態の恐竜の尾を科学者らが分析
(CNN) 9900万年前に生息していた恐竜の尾が、琥珀(こはく)の中に閉じ込められているのが見つかったとして、中国やカナダの研究者が生物学会誌の12月号に発表した。恐竜の色や姿を解明する手がかりになると期待されている。
琥珀は干しアンズほどの大きさで、中国の古生物学者シン・リダ氏が中国との国境に近いミャンマー北部の琥珀市場で見付けた。過去には恐竜時代の鳥類の羽の断片が琥珀の中から見つかったことはある。しかしミイラ化した恐竜の骨格の一部が発見されたのはこれが初めてだという。

琥珀の中の尾は、ベロキラプトルやティラノサウルスといった肉食恐竜と同じ仲間のコエルロサウルスの若い個体のものと分かった。コエルロサウルスはスズメほどの大きさの手に乗るサイズの恐竜で、重さ6.5グラムの琥珀の中に、骨格の断片と羽毛が残っていた。これは多くの恐竜がうろこではなく、原始的な羽毛を持っていたことを裏付ける。
*肉食でありながらスズメほどの大きさだったというコエルロサウルス

コエルロサウルスの尾はネズミのしっぽのような形に鳥のような羽毛が生えていたとマケラー氏は推定する。
地層で圧縮された化石と違って、琥珀の標本からはある程度正確に恐竜の姿を推定できる。
琥珀の中の羽毛を顕微鏡で観察した結果、この恐竜の色は栗色と白だったことがうかがえるという。

これまでの研究で恐竜がどんな色をしていたかを調べるためには、羽毛の中のメラノソームと呼ばれる細胞小器官から情報を取り出して、鳥の羽と比較する複雑な作業が必要だった。2016.12.09 Fri posted at 12:02 JST

2016年12月8日木曜日

伊達直人 私の名は河村正剛

伊達直人
私の名は河村正剛、43歳…「普通の人」
*顔を公表し、初代タイガーマスクの前であいさつする河村正剛さん=東京都文京区の後楽園ホールで2016年12月7日午後8時20分、小出洋平撮影

「タイガーマスク運動」の先駆け 後楽園ホールで公表
 「伊達直人」の名でランドセルを児童養護施設などに贈る「タイガーマスク運動」の先駆けとなった男性が7日、東京・後楽園ホール(文京区)であったプロレスラー「初代タイガーマスク」の35周年記念イベントで名前や顔を公表した。男性は群馬県在住の会社員、河村正剛(まさたけ)さん(43)。「伊達直人」コールの中、河村さんは「子どもたちは抱きしめられるため、周りの人を笑顔にするために生まれてきた。この思いを胸に活動を続けていきたい」と訴えた。

 河村さんは幼少時に母と死別、ランドセルが買えず手提げ袋で小学校に通った。「自分のような経験をさせたくない」と2010年のクリスマス、前橋市の児童相談所にランドセル10個を届けた。漫画「タイガーマスク」の主人公、伊達直人の名でメッセージを添えて話題になり、運動が全国に広がった。


 河村さんはイベント後の記者会見で「顔が見える方が子どもの励みになるし、支援しているのは『ヒーロー』ではなく『普通の人』と知ってほしかった」と素性を明かした理由を語った。「施設を出た後の子どもに支援が届くようになってほしいが個人や企業、団体では限界がある。行政も巻き込みたい」と今後への意欲も新たにしていた。【鈴木敦子】毎日新聞2016127 2256

2016年11月30日水曜日

小惑星衝突の「タイムライン」が明らかに

6,500万年前に恐竜を滅ぼした小惑星衝突の「タイムライン」が明らかに
*メキシコのユカタン半島に確認できる「チクシュルーブ・クレーター」。写真の左上の地上から海にかけて続いていることが確認できるその直径は、約170kmにも及ぶ。

6,500万年前、ユカタン半島に衝突した直径約12kmの小惑星(火星の衛星ダイモスと同じ大きさだ)は、恐竜絶滅の大きな原因のひとつとされている。その衝突は非常に破壊的なもので、19万ギガトンの核爆発に匹敵するエネルギーを放出したという。参考までに挙げると、これまでに製造された最も強力な爆弾「ツァーリ・ボンバ」の爆発力ですら、わずか20分の1ギガトンだった。
小惑星が衝突したことが最も明白なものとして残る痕跡が「チクシュルーブ・クレーター」だ。ロンドン・インペリアル・カレッジの地球物理学者たちの調査隊はこのクレーターを調査し、地球の様相を変え新しい生態系の発生を促したこの大災害がどのように起きたかを明かしている。

テキサス大学オースティン校のショーン・ギューリックの率いる調査隊は、海面下にまで及ぶクレーターのさまざまな深さにおいてボーリング調査(地下の岩石標本の抽出)を実施した。
深さ506メートルから採取された標本は、小惑星が衝突したのちの非常に長い時間、5,600万年~3,400万年の年月をかけて沈殿した堆積物だと判明した。調査隊が掘り進めば進むほど、地殻の奥底に由来する花崗岩によって構成される結晶質基盤の存在がより多く発見された。
「これは、小惑星の衝突が文字通り、地殻をすべて逆さまにひっくり返すくらい強力だっただろうことを示しています」と、調査隊のメンバーの1人、ジョアナ・モーガンは語る。

研究者たちのチームは、さまざまな深さで岩石の構成を詳細に分析し、衝突の厳密なタイムラインを再構成することに成功した。
まず、小惑星は地殻のほとんどすべてを貫通して、そのとき岩石は約10分間、25kmの高さまで上昇したという。その後、形成されたばかりの新しいクレーターの縁には、ヒマラヤ山脈よりも高い岩石層が隆起した。そして、わずか3分間でその場に再び崩れ落ち、地層の中にピークリングと呼ばれる結晶質基盤の輪を残した。同じように、クレーターの中央では岩石の頂上が天に向かって飛び出して、その後、再び地表へと崩れ落ちた。コーヒーカップの中に角砂糖を入れたときと同じような現象だ。10分後に岩石は安定した。
「そのとき岩石が液体のように振舞ったといっても、決して完全に溶解したわけではありません」と、ギューリックは語る。「どのようにして起きたのかわかりませんが、おそらく、衝撃波が岩石を結びつけていた結びつきを破壊して密集状態を失わせ、塊が一時的とはいえ液体であるかのように振る舞うことを可能にしたのでしょう」

さらに、衝突によって放出された信じられないほどの力は惑星全体を横断する衝撃波を呼び起こし、マグニチュード10に達する地震を次々に引き起こした。その力はどんな断層が生み出すよりも破壊的なもので、地表を滅茶苦茶にした。

「わたしたちの発見は、惑星の内部がどのようになっているかについて手がかりを与えてくれる最高のものです」と、モーガンは続ける。「さらに、この大災害は地上の生命を根本的な変える、大きな転換点となりました。衝突が原因で変形した岩石だけをとって考えても、形成された割れ目や穴からは水がより流れやすくなるようになり、それまで地上に見られなかった、新しい生命形態の発達のために理想的だったであろう生息環境をつくり出したのです」2016.11.30 12:52 産経

生まれ年から鳥インフルの重症化リスクを予測?

生まれ年から鳥インフルエンザの重症化リスクを予測可能?
 動物からヒトに感染するインフルエンザウイルスに感染したときに重症化したり死亡したりするリスクを予測する際には、生まれ年が役立つ可能性があることが、「Science1111日号に掲載された研究で示唆された。米アリゾナ大学(ツーソン)生態・進化生物学部長のMichael Worobey 氏らの研究。
 インフルエンザウイルスの感染歴は、新しい動物由来のインフルエンザウイルスに対する防御には全くまたはほとんど影響しないと考えられてきた。しかし、鳥インフルエンザウイルスH5N1およびH7N9によるこれまでの重症例・死亡例を全て分析した結果、小児期の初回のインフルエンザウイルス感染が、将来、どの新しい鳥インフルエンザウイルスに対して防御効果をもつのかを予測するのに役立つことがわかった。

 Worobey 氏らによれば、生まれ年によって小児期に初めて感染するインフルエンザウイルスの種類は異なり、これによって身体で異なる種類の抗体がつくられるという。初回感染したものと同じグループに属する鳥インフルエンザウイルスに感染した場合、重症化に対する防御効果は75%、死亡に対する防御効果は80%と推定された。今回の結果は、インフルエンザが大流行するリスクを抑える新しい方法につながる可能性がある。


 Worobey氏は、「初めて遭遇したインフルエンザ株に対しても、初回の感染歴が防御の成否に大きく影響する因子だとわかったことは朗報である。ただし、このような大きな防御効果を与える刷り込みをワクチンで変えることは難しい可能性もある」と述べている。 2016/11/30ケアネットHealthDay News

2016年11月28日月曜日

「兵糧攻め」で細菌撃退

「兵糧攻め」で細菌撃退、植物の防御の仕組み解明 京大
 細菌に侵入された植物は、栄養となる糖分が細菌に取り込まれないように「兵糧攻め」にして撃退することを、京都大の高野義孝教授(植物病理学)らが解明した。作物の病気を減らす農薬の開発につながる可能性があるという。25日、米科学誌サイエンス電子版に発表した。

 細菌などが侵入すると、植物は抗菌物質を作って攻撃したり、細胞が自ら死んで感染拡大を抑えたりすることが知られている。「兵糧攻め」は新たに確認された防御法となる。
 葉には光合成によって作られた糖分がたまっている。研究チームは、シロイヌナズナの葉の細胞同士の間にたまっている糖分を、植物細胞内に取り込む役割のたんぱく質に着目。細菌の感染を察知すると、このたんぱく質が細胞内に積極的に糖分を取り込んだ。植物に侵入した細菌は糖分を栄養にするので、取り込めないと増殖できない。


 逆に、このたんぱく質が働かないようにした植物では、細菌が10倍以上に増え、葉の広範囲に感染が広がった。 高野教授は「植物の糖の吸収を高める化合物が見つかれば、植物の病気に有効な薬の開発につながる」としている。(西川迅)201611250918分 朝日

ビールの苦味、認知症予防

ビールの苦味、認知症予防…蓄積たんぱく質除去
 ビールやノンアルコール飲料に含まれるホップ由来の苦み成分に、アルツハイマー病の予防効果があることを、飲料大手のキリンと東京大、学習院大の共同研究チームが明らかにした。

 厚生労働省によると、認知症の人は国内に約462万人(2012年)おり、このうち約7割をアルツハイマー型が占めると推計される。加齢に伴い、脳内にたんぱく質の「アミロイドβ」が蓄積することが原因とされる。

 キリンや東京大の中山裕之教授らの実験で、ホップ由来の苦み成分である「イソα酸」に、脳内の免疫細胞である「ミクログリア」を活性化させ、アミロイドβを除去する作用がみられた。イソα酸を含むえさを食べたマウスは、そうでないマウスに比べ、アミロイドβが約5割減少し、認知機能も向上したという。20161128 0738分 読売

2016年11月12日土曜日

筋電義手テクノロジーのいま

最先端技術と企業努力によって義手・義足の未来は変わる!
筋電義手テクノロジーのいま
人間が筋肉を動かす時、脳からの生体信号が筋肉に届きます。筋電義肢はその生体信号をキャッチすることで動くというわけです。
しかし従来の筋電義肢では思うように扱うのは難しいとされてきました。例えば手首を欠損した人の上腕に筋電義手のセンサーを取り付けた場合、手首を「内側に曲げる、外側に反らす」を意識します。すると上腕の筋肉は反応しますから、センサーが信号をキャッチ。しかし、こうして実際に動く筋電義手は「手のひらを開く・閉じる」なのです。つまり、思うように義手を動かすというよりは、義手が動くためのパターンを理解して、それに呼応するように上腕の筋肉を動かす必要があるわけです。使いこなすためには訓練が必要であることがお分かりでしょう。

しかし、メルティンMMIというベンチャー企業が開発した筋電義手は直感的に義手を操作することが可能です。
*実際の手と同じように義手が動きます。

一般人が手に入れるには問題点が
一般人がアスリートのように、自由自在に身体を動かすためには筋電義肢が必要であること、またそのための技術的な問題はほぼクリアしていることが分かりました。
しかし、一番のネックとなるのがコスト面。いくら、技術が発展しても我々に手の届かないほど高価なものだったら意味がありません。ちなみに現在一般に普及している筋電義手は一本150万円します。

exiiiという企業が開発した筋電義手はその点問題ではありません。こちらでは、筋電義手作成のデータを公表しており、3Dプリンターさえ用いればおよそ3万円の材料費で自分専用の筋電義手が手に入ります。

筋電義肢の未来は?

このように、技術面の発展、またコストの問題も解決する手段があることが分かりました。これら二つの企業が手を取り合えば、パラリンピック出場選手以外の身体障害者の方でも自由自在に身体を動かせることが可能です。筋電義肢が身近になる未来はそう遠くないかもしれません。2016.09.23  ロボットノート

2016年11月6日日曜日

3000年前の木棺、ほぼ原形で

3000年前の木棺、ほぼ原形で 日本のエジプト調査団
 エジプト中部のアコリス遺跡の集落跡から、第21王朝期(紀元前11世紀~同10世紀ごろ)の木棺をほぼ原形のまま、日本の調査団が発掘したことが5日、分かった。これまでに発見された同時代の木棺と比べても保存状態が極めて良く、女性とみられるミイラも納められていた。

*エジプト中部のアコリス遺跡の集落跡からほぼ原形のまま発掘された、3千年前の木棺(8月)=アコリス調査団提供・共同
 遺跡を30年以上調べているアコリス調査団が8月に発掘した。団長の川西宏幸筑波大名誉教授は「3千年前の木棺が全く腐敗せずに原形をとどめているのは驚異的だ」と指摘。来年の調査でミイラをエックス線分析し、さらに解明を進める。
 川西名誉教授によると、木棺は長さ約1.9メートル、幅約55センチ、高さ約29センチで、古代の民衆の居住地域跡から出土した。材質はイチジクで、くぎはナツメ製。発掘例としては珍しい白木の状態で、高貴な人物の木棺に通常みられるしっくいや文字がなかった。

 ミイラは亜麻布の袋に入れられ、四角い形状の護符らしき首飾りをしていた。木棺のふたに刻まれた手の形が開いていることから成人女性とみられる。木棺の底面下の地中には、ヤギ革製と植物製のサンダルが1足ずつ見つかった。

 調査に加わった国学院大の和田浩一郎非常勤講師(エジプト学)は「裕福ではない庶民がお金をかけず、工夫して埋葬していた様子が分かる」と話している。〔共同〕2016/11/5 20:49 日経

2016年10月26日水曜日

人間と植物の細胞融合

人間と植物の細胞融合、世界で初めて成功 「進化の謎を解く手がかりに」
人間と植物の部分的な細胞融合に世界で初めて成功したと、大阪大学が1024日に発表した。植物の染色体が、ヒト細胞環境下で維持されることを解明した。アメリカの科学誌「ACS Synthetic Biology」のオンライン版にも掲載されている。
■「進化の謎を解く一つの手掛かりになる」


*ヒトと植物の融合細胞(大阪大学の発表より)

1976年以降、人間と植物双方の染色体を持つ融合細胞を作製する実験が行われたが、実際に増殖可能な融合細胞の作製に成功した報告は皆無だった。
しかし、大阪大学大学院の和田直樹特任助教らの研究グループは、シロイヌナズナという植物の細胞とヒト細胞を融合を試みた結果、部分的にではあるが、世界で初めて人間と植物の融合細胞の獲得に成功したという。
研究グループによると、ヒト染色体を維持する仕組みが植物染色体にも働くことが判明。共通祖先から分岐して約16億年を経ても、人間と植物の間で遺伝子発現の仕組みが保存されていたという。

植物と動物は、お互いの機能がどの程度保存されているか不明だった。大阪大学によると、動物と植物の両者で保存されている機能は、生物にとって極めて重要かつ根本的なものであることが予想され、「進化の謎を解く一つの手掛かりになる」と期待を込めている。20161026 1315 JST The Huffington Post 安藤健二  
(注:林 紘司氏の情報から)

2016年10月22日土曜日

北斎の肉筆画と判明

北斎の肉筆画と判明 「作者不明」水彩画風の6枚 [長崎県]
*葛飾北斎が洋画の技法を取り入れて江戸の日本橋を描いた肉筆画(ライデン国立民族学博物館所蔵)
 オランダのライデン国立民族学博物館所蔵で、長く作者不明とされてきた6枚の絵が、江戸時代後期の浮世絵師、葛飾北斎(1760~1849)の肉筆画であることが、同博物館の調査で分かった。西欧の水彩画の技法をまねた、北斎としては異色の絵。親交があったドイツ人医師シーボルトらから影響を受けた作品群とみられる。長崎市で開催中の国際学会「シーボルトコレクション会議」で22日に報告される。

 6枚は江戸の街並みを描いた風景画。タイトルはないが「日本橋」「両国橋」「品川」などを題材に川や人々、橋を描いている。空を大胆に取り入れた構図などに西洋画の特色が表れている。輪郭を黒く縁取りした後に色付けしていた当時の日本画と違い、縁取りがない点も西洋画の影響が見て取れる。

 江戸期の絵師たちの間には、外国人から絵を受注できるのは、長崎の出島出入り絵師として認められた川原慶賀(1786~1860)だけと認識され、ひそかに受注した場合は、落款を押さず「作者不明」として描いていたという。
 6枚に落款はなく、これまで慶賀や助手らの作と考えられてきたが、調査した同博物館シニア研究員のマティ・フォラー氏は、シーボルト直筆の目録にある「北斎がわれわれ(欧州)のスタイルで描いたもの」などの記述から、6枚は北斎が描き、シーボルトの手に渡った絵であることを突き止めた。フォラー氏は「新たな技法を習得しようと努めた北斎が、シーボルトらとの交流で知った西洋風の描き方に挑んだ作品群だろう」と分析する。


 長崎のオランダ商館で働いていたシーボルトは1826年に江戸に上った際、北斎らと面会したことが分かっている。同博物館には、この6枚とは別に、北斎の肉筆画と認められた11枚が伝わっている。=2016/10/22付 西日本新聞朝刊=

2016年10月15日土曜日

認知症になる仕組みの一端解明

認知症になる仕組みの一端解明…京大チーム
 様々な細胞に変化できるiPS細胞(人工多能性幹細胞)と、遺伝子を自在に改変できる技術「ゲノム編集」を利用し、認知症の一種が発症する仕組みの一端を解明したと、京都大iPS細胞研究所の井上治久教授(幹細胞医学)らのチームが発表した。予防薬の開発につながる可能性がある。論文が英電子版科学誌サイエンティフィック・リポーツに掲載された。

 この認知症は、「前頭側頭葉変性症」と呼ばれ、患者には「タウ」というたんぱく質の遺伝子に変異があると報告されているが、詳しいメカニズムは不明だった。
 チームは、患者2人から作製したiPS細胞を、脳の神経細胞に変化させて病態を再現。そのうち一つの細胞について、ゲノム編集でタウの遺伝子変異を修復し、病気の細胞と比べたところ、修復した細胞では異常なタウの蓄積が減った。
 異常なタウが蓄積すると、細胞内で神経活動に関わるカルシウム量を調節する機能が低下し、発症につながるとみられる。井上教授は「他の認知症でも共通の仕組みがあるかどうか調べたい」と話す。


前頭側頭葉変性症 脳の前頭葉や側頭葉が萎縮し、同じ行動を繰り返すなどの症状が出る。国内の推定患者数は約1万2000人。65歳以下の認知症では、記憶障害が起こるアルツハイマー病の次に多いとされる。 20161015日 読売

新種アンモナイトを発見

新種アンモナイトを発見 北海道、他地域から移入か
 
*北海道浦河町で見つかった新種のアンモナイト「ディディモセラス・ヒダケンゼ」の化石 
 北海道浦河町は14日、同町にある約7600万~約7400万年前の白亜紀後期の地層から、新種のアンモナイトの化石が見つかったと発表した。国内で多く見つかっている日本周辺固有の種ではなく、世界的に分布する種の近縁といい、他地域の種が次第に移入してきた様子を示す、重要な発見という。

 国立科学博物館の重田康成地学研究部グループ長(古生物学)らが2005年から調査。浦河町の地層で見つかった化石65点のうち15点を新種と認定した。合わせて、北米西岸やアフリカに分布する別の種のアンモナイトも、国内で初めて確認した。

 新種はばね状の貝殻が特徴で、最大のもので高さ約20センチ。近い種が、北米など世界的に分布している。浦河町のある日高地方にちなみ「ディディモセラス・ヒダケンゼ」と学名が付いた。2016.10.14 産経

2016年10月8日土曜日

父島で「グリーンフラッシュ」

父島で「グリーンフラッシュ」…観光客らが歓声
*8日午後5時11分、東京都小笠原村父島で
 小笠原諸島・父島の高台にある三日月山展望台で8日夕、太陽が沈む直前に緑色に輝く「グリーンフラッシュ」という珍しい現象が見られた。
 この日は澄みきった青空が広がり、夕焼けを見に多くの観光客らが展望台に詰めかけていた。水平線に太陽が沈む瞬間、緑の閃光せんこうが見え、高台は歓声に包まれた。

 水平線に沈んでいく太陽の光は、色により屈折率が違う。まず赤い光が届かなくなり、その後、青い光が大気で弱められると、中間の緑だけが一瞬残ることがある。国立天文台の家正則名誉教授は「珍しい現象で、見ることができるのはとても幸運だ」と話している。
 父島は、グリーンフラッシュが比較的観測しやすい場所として旅行ガイドなどで紹介されている。20161008 2047Yomiuri Shimbun

2016年10月4日火曜日

ノーベル医学生理学賞に大隅良典氏

ノーベル医学生理学賞に大隅良典氏 「オートファジー」のメカニズム解明
*ノーベル医学生理学賞を受賞した東京工業大の大隅良典栄誉教授
(CNN) スウェーデンのカロリンスカ医科大は3日、2016年のノーベル医学生理学賞を、東京工業大の大隅良典栄誉教授に贈ると発表した。
細胞組成の分解とリサイクルの基礎的なプロセスである「オートファジー」のメカニズムの発見と解明が評価された。
オートファジーの機能自体は1960年代ごろから研究者の間で知られていたものの、それがどのような仕組みで行われるのかはほとんど分かっていなかった。大隅氏は1990年代に酵母を使った実験でそのメカニズムを解明。オートファジーに不可欠な遺伝子も特定した。
オートファジーの機能障害はパーキンソン病や2型糖尿病、その他とりわけ高齢者がかかりやすい疾患の発症と関係があるとみられている。2016.10.03 Mon posted at 19:47 JST

2016年9月30日金曜日

1m超、恐竜足跡の化石発見

1m超、恐竜足跡の化石発見 モンゴル・ゴビ砂漠
*モンゴルのゴビ砂漠南東部で見つかった、長さ106センチ、幅77センチの恐竜の足跡化石と、岡山理科大の石垣忍教授=8月21日
 岡山理科大(岡山市)とモンゴル科学アカデミー古生物学地質学研究所の共同調査隊が30日までに、モンゴルのゴビ砂漠南東部で長さ106センチ、幅77センチの恐竜の足跡の化石を発掘した。調査隊によると、1メートルを超える足跡の化石は世界でも発見例が少なく、恐竜の生態や当時の様子を解明する上で貴重な資料という。
 岡山理科大によると、化石は約7千万~9千万年前の白亜紀後期の地層から、8月21日に発見した。形状などから植物を主食にする大型恐竜「竜脚類」の一種、ティタノサウルス類の左後ろ足とみられる。(共同) 2016930 1111分 東京

2016年9月27日火曜日

木星衛星、水噴き出す

木星衛星、水噴き出す 生物探しの手掛かりに
*氷の表面から水とみられるものを噴き出すエウロパの想像図。奥に見えるのは木星(NASA提供・共同)
【ワシントン共同】米航空宇宙局(NASA)は26日、木星の衛星エウロパを覆う氷の表面から、水とみられるものが高さ200キロまで噴き出しているのをハッブル宇宙望遠鏡で観測したと発表した。液体の水がある環境は、生物が存在できる可能性があるとされ、生物探しの手掛かりになりそうだ。
 エウロパの表面にある厚さ数キロの氷の下には、深さ数十キロの海が広がっているとされる。観測を率いた米宇宙望遠鏡科学研究所のスパークス氏は「海から上昇してきたのだろう。氷を掘らなくても噴き出す水を採取できれば、有機物や生物の痕跡が見つけられるかもしれない」と話した。他にも土星の衛星エンケラドスが水を噴出することで知られている。

 エウロパの表面からの噴出は、2012年にもNASAの別のチームが観測。水かどうかは18年に打ち上げるジェームズ・ウェブ宇宙望遠鏡による観測で確定させる。2016.9.27 10:07 産経

炭化した古代巻物を開かず解読

炭化した古代巻物を開かず解読、歴史の空白埋める
イスラエルの「エン・ゲディ文書」、年代も新たに判明
*バーチャルに開かれたエン・ゲディ文書(左)と、科学者がスキャンした炭化した状態の巻物(右)。サイズの比較用に置いてあるのは1セント銅貨。 (PHOTOGRAPH COURTESY SEALES ET AL. SCI. ADV. 2016; 2 : E1601247

 今から1500年前ほどに、死海の西岸にあるオアシスで大火事が起きた。荒れ狂う炎は、何百年も前から栄えていたユダヤ人の街を焼き尽くしたが、シナゴーグと呼ばれる礼拝所の聖櫃は焼け残った。聖櫃の中には動物の皮でできた巻物がおさめられていたが、熱で炭化し、もろくなってしまった。
 この巻物は1970年に発見され、エン・ゲディ文書と名付けられた。無理に開こうとすると粉々になってしまうおそれがあるため、イスラエル考古学庁はそのままの状態で何十年も慎重に保管してきた。しかし昨年、科学者チームはこの巻物をスキャンしてバーチャルに「開き」、中に隠れていた文章を解読することに成功したと発表した。今回、その詳細が正式な科学論文として発表された。

 論文の著者である米ケンタッキー大学のブレント・シールズ氏は、デジタル技術を駆使して損傷した文書を解読する専門家だ。「私は20年前から、この技術の開発に取り組んできましたが、今こそエン・ゲディ文書を『開く』ときだと確信できたのです。今回解読が成功し、損傷した文書のいくつかの文字とか言葉を読み解くというレベルでなく、テキスト全体を復元しうることが裏付けられました」
 2015年、シールズ氏らのチームは予備スキャンの結果として、エン・ゲディ文書が6世紀の聖書の写本で、レビ記の一部を記した部分が含まれていると発表していた。しかし、2016921日にオンラインの学術論文誌『Science Advances』に発表された完全なCTスキャンからは、さらに興味深い事実が明らかになった。

歴史の空白を埋める
 明らかになったことの一つは、エン・ゲディ文書には文章がもう一段含まれていたこと。そこにはレビ記の最初の2章が書かれていることが裏付けられた(皮肉なことに、レビ記は、祭壇でいけにえを焼いて神に捧げる「燔祭」についての記述から始まる)。そしてもう一つ、放射性炭素年代測定を行ったところ、巻物がこれまで考えられていたより少なくとも200年は古く、17001800年前のものかもしれないとの結果が出た。実際、この文書の独特な筆跡は紀元12世紀のもので、そうなると、当初推定されていたより500年近くも前のものということになる。

炭化した巻物をバーチャルに「開く」方法:科学者たちは、最先端のスキャン技術を駆使してエン・ゲディ文書をバーチャルに開くことに成功した。まず3Dスキャンをかけて巻物の層を認識し、一層ずつ細かい部分に分けてスキャンし、画像を平たく開くように修正して最後に全部をつなぎ合わせる。(音声は英語です)

 学者たちを驚かせたのは、このテキストがレビ記の一節であったことではない。英ケンブリッジ大学の講師ジェームズ・エイトケン氏は2015年の発表時に、「レビ記の一節が記されていたこと自体は、特に意外ではありませんでした。聖書のほかの部分と比べると、この部分が記された文書はたくさんあるはずです。レビ記のヘブライ語は文体が単純で反復が多いため、子供たちの書き取りの練習に使われていましたから」と説明している。
 一方、エン・ゲディ文書の推定年代は驚きをもって迎えられた。研究チームが主張するように、この文書が死海文書とカイロ・ゲニザ文書(ゲニザとは中世のヘブライ語文書の保管庫のこと)の中間の時代のものであるなら、聖書のテキストの歴史にあいていた数世紀分の空白を埋めることができるからだ。

 論文の共著者である、エルサレム・ヘブライ大学の聖書学者マイケル・シーガル氏は、「全ての死海文書について発表された約10年前以降では、エン・ゲディ文書のレビ記は、現代によみがえった古代の聖書の写本の中で最も広範囲を扱ったもので、かつ重要なものだと言ってよいでしょう」と言う。
 同じく論文の共著者で、エルサレム・ヘブライ大学の聖書学者であるエマニュエル・トブ氏は、エン・ゲディ文書は、「マソラ本文」と呼ばれる権威あるヘブライ語聖書が成立するまでの経緯を解明する助けになるだろうと期待している。「エン・ゲディ文書を見ると、伝統が受け継がれていることがはっきり分かります」とトブ氏。「6世紀に火事にあったエン・ゲディのシナゴーグにおさめられていた巻物が、中世のテキストと完全に一致していたのは偶然ではありません。レビ記の巻物を使っていたユダヤ教信仰は、これほど古い時代から印刷技術が発明される中世後期まで、脈々と続いていたのです」

次なる目標
 研究者たちは、今回の研究により非侵襲画像技術の進歩を知らしめたが、課題は残っている。エン・ゲディ文書の巻物に書かれた文字が見えたのは、おそらくそれが鉄か鉛を含む濃いインクで書かれていたからだ。しかし、その他の古代インクはカーボン(炭素)をベースにしているため、炭化した巻物の表面と区別するのは難しい。紀元79年に起きたベスビオ火山の噴火によりポンペイの街とともに埋没したヘルクラネウムという街の書庫から大量の巻物が発掘されているが、やはり解読は困難だ。

 「まだ開かれていない大量のヘルクラネウムの巻物をどうにか解読したいものですね」とシールズ氏。「それが今の目標です」2016.09.27 ナショジオ

最古の玄奘訳の般若心経か

最古の玄奘訳の般若心経か、中国 北京の雲居寺が保管
*雲居寺の「般若心経」の拓本(共同)
 【北京共同】中国北京の古寺、雲居寺は、同寺が保管していた石に刻まれた般若心経が、唐代の中国の僧で、「西遊記」の三蔵法師として知られる玄奘三蔵による現存する最古の漢訳であることが分かったと発表した。西暦661年に刻まれたとしている。中国メディアが27日までに伝えた。
 般若心経は大乗仏教の教典の一つで、般若経典のエッセンスを簡潔にまとめたもの。原文はサンスクリットで書かれ多様な漢訳があり、日本を含め玄奘による漢訳が最も普及しているとされる。
 般若心経が刻まれた石は雲居寺の石室で保存されていた。専門家は題字などから、玄奘の訳に違いないとしている。2016927 0840分 東京

勝連城跡からローマ帝国時代コイン

勝連城跡からローマ帝国時代コイン オスマン帝国時代も出土
*ローマ帝国時代のコイン
 【うるま】うるま市教育委員会は26日午後1時半から市役所で会見を開き、市勝連にある世界遺産「勝連城跡」内で、ローマ帝国とオスマン帝国時代のコインが発見されたと発表した。市教育委員会は「中世から近世初期の遺跡からは、国内初になるものだろう」とし、日本史だけでなく世界史研究などに大きく寄与すると分析している。

 調査はエックス線検査や専門家らによる鑑定などの方法で行われた。コインにはローマ文字やアラビア文字、人物像があることが確認された。
 コインが持ち込まれた経緯や使用方法などについては、今後の研究課題としている。

 発見されたコインは鋳造製の銅貨計10枚。そのうち4枚は3~4世紀代のローマ帝国時代、1枚は1669~79年に製造されたオスマン帝国時代のコインと推測される。そのほか5枚の年代については調査が進められている。
 確認されたコインのうち、ローマ帝国時代のコインは直径最大2センチ、重さ3・6グラム。一方、オスマン帝国時代のコイン直径は2センチ、重さ1・2グラム。

 市教育委の横尾昌樹主任主事は「勝連城が西洋との接点があったことは確かだ。勝連城の廃城後の歴史は分からないことが多々あり、今後の解明につながる貴重な資料になる」とした

 会見に出席した島袋俊夫市長は「沖縄のグスク時代における勝連の流通、交易を考える上で重要な資料。世界史研究全般の研究に大きく寄与する発見となる」と研究の成果を評価した。【琉球新報電子版】2016926 17:19

2016年9月26日月曜日

新種の人類ホモ・ナレディ発見

新種の人類ホモ・ナレディ発見、その舞台裏は<1> 洞窟の探索に悪戦苦闘
*南アフリカのライジングスター洞窟で見つかった「ホモ・ナレディ」の頭部化石=ESF
(CNN) 南アフリカのライジングスター洞窟の奥深くで3年前、子どもや成人、未成年者ら15人分の骨格が発見された。いずれも今まで知られていなかった新種の人類の祖先のものだった。「ホモ・ナレディ」と名付けられたこれらの新種の発見は、「人類の定義の再考を迫るもの」として大きな議論を呼んでいる。
古生物学の世界では、全身骨格1体を発見するだけでも宝くじを当てるのに等しい幸運とされる。だがこの洞窟からは1500点以上の骨化石が出土した。アフリカ大陸で発見されたヒト族の骨格としては過去最多の規模になる。
発見したのは南アフリカ・ウィットウォーターズランド大学の古人類学者、リー・バーガー氏。バーガー氏は2013年、これらの骨格を発見する寸前のところまで迫っていた。だが、洞窟唯一の出入り口から出土現場に通じる細い通路に行く手を阻まれた。「スーパーマンズ・クロール」の異名をとるこの通路は極端に幅が狭く、バーガー氏の体格で通り抜けるのはほぼ不可能だった。
しかしバーガー氏はフェイスブックで細身の洞窟探検家を募集。ウィットウォーターズランド大学の自身の研究チームに加わるよう求めた。こうして集められたメンバーとともに、人類の系統樹に新たな種を付け加える発見が実現した。
 (中略)
こうして発見された新種は、ライジングスター洞窟にちなんでホモ・ナレディと名付けられた。「ナレディ」は現地のソト語で「星」を意味する。
ホモ・ナレディは人類に似た足や、長距離を歩くのに適した細い長い脚を持っている。一方で指が湾曲しているほか肩も類人猿のものに近く、木に登ってぶら下がるために使われた可能性もある。
頭部も現代的な要素と原始的な特徴が混在している。頭蓋骨(ずがいこつ)の形状は人類によく似ているが、脳は小さく現生人類の半分以下の大きさしかない。

ホモ・ナレディが人類に似た足と湾曲した指を兼ね備えていることについては、研究チーム内でも驚きと不安の念が広がった。バーガー氏は人類と原始人の特徴を併せ持つホモ・ナレディについて、「クレージーな生き物」と形容する。2016.09.25 Sun posted at 09:40 JST

2016年9月23日金曜日

「脳が大きくなったから」だけではない

ヒトが賢く進化したのは「脳が大きくなったから」だけではない
*ヒトが賢く進化したのは「脳が大きくなったから」だけではないのイメージ
 長年にわたり、「ヒトの知性が進化したのは脳が大きくなったからである」という理論が支持されてきたが、新たな研究報告で、知能の進歩には脳の血流の多さのほうが密接に関連していることが示唆された。

 アデレード大学(オーストラリア)生態・環境学のRoger Seymour氏らは、今回の研究で、化石の頭蓋底にある2つの穴の大きさを分析した。この穴は脳につながる動脈を通すために開いているもので、分析することにより300万年間にわたるヒトの知能向上の痕跡を辿ることができた。
 その結果、ヒトの進化の過程で、脳の容量は約350%大きくなったが、脳への血流は600%も増加したことが判明したという。この変化により神経細胞間の接続を活性化するための脳内の需要を満たせるようになった可能性があり、それにより複雑な思考・学習ができるように進化することが可能になったと、同氏らは考えている。

 高い知能を発揮するために、ヒトの脳は血液からの酸素と栄養の供給を常に必要とする。Seymour氏は、「脳の代謝活性が高くなるほど、より多くの血液を必要とするため、血液を供給する動脈は太くなる。化石の頭蓋底にある穴は、動脈の太さの正確な指標であった」と話す。研究結果は「Open Science831日号に掲載された。

 共著者の1人は、「進化を通して、われわれの脳機能の進歩は、小児期から脱するまでの期間が長くなることと関連しているようである。また、狩猟における家族の協力、領地の防衛、子どもの世話などにも関連する。これらの特徴は、脳の血液とエネルギーの必要性が増大した結果として生じたようだ」とコメントしている。HealthDay News 公開日:2016/09/23印刷ボタン Roger S. Seymour, et al. open sci. 2016 Aug 31. [Epub ahead of print]

2016年9月20日火曜日

世界最古の釣り針、沖縄の洞窟で発見

世界最古の釣り針、沖縄の洞窟で発見
*巻貝から作られた釣り針Image copyrightNATIONAL ACADEMY OF SCIENCES
沖縄の洞窟で、世界最古とみられる釣り針2個が発見された。報告論文が16日、米科学アカデミー紀要(PNAS)された。巻貝から作られた釣り針は、約23000年前のものとみられる。ほかにも貝で作った珠や道具類に加えて、カニや貝を食べた跡が見つかったという。
沖縄県立博物館・美術館などの専門家からなる調査グループは、沖縄県南城市のサキタリ洞窟で発掘作業を行っていた。この周辺では少なくとも3万年前から、人間が住んでいたとみられている。
釣り針の発見によって、これまで考えられていたより広範囲で、初期の海洋技術が使われていたと推測できるという。論文は、こうした技術が大西洋西岸沿いに北から中央緯度の地域にまで広がっていたことがうかがえると書いている。
これまで見つかった最古の釣り針は、少なくとも16000年前のチモールの釣り針と、少なくとも約18000年前のパプアニューギニアの釣り針。
大陸から離れた海洋諸島に人類が移動し始めたのは約5万年前からで、人類の居住範囲の拡大につながったと考えられている。
論文を発表した調査グループは、サキタリ洞窟に釣り針などを残した人々は、季節ごとに定期的に洞窟を訪れていたかもしれないと指摘。特に、モクズガニなどを食べた跡が大量に残っていることから、このカニが「最もおいしい」時期に合わせて移動していた可能性も指摘している。20160919日 BBCWorld's oldest fish hooks found in Japanese island cave

2016年9月5日月曜日

実は地球由来だった?

「高度な文明から届いた信号」、実は地球由来だった?
ロシアのゼレンチュクスカヤ展望台がとらえた信号は地球由来?
(CNN) 地球から約94光年離れた恒星系から届いた謎の信号は、地球外生命体が発信したわけではないらしい――。ロシアの天文学者が31日、そんな見解を発表した。
問題の信号はヘルクレス座にある恒星「HD164595」の周辺から発信され、ロシアの展望台が2015年5月に検知。人類を超える高度な文明から発信された可能性もあるとして、地球外知的生命体の探査活動(SETI)に参加する天文学者らが大きな関心を寄せていた。
しかし天文学者のユリア・ソトニコワ氏は31日、ロシア科学アカデミー特別天体物理観測所を通じて声明を出し、この信号について「地球に由来している可能性が最も大きいことが分かった」と発表した。

ロシア国営タス通信によると、ソトニコワ氏は信号の発信源については明らかにしなかったが、「地球のじょう乱」に起因する可能性が大きいと話している。2016.09.01 Thu posted at 12:20 JST

2016年9月1日木曜日

アルツハイマー病新薬

アルツハイマー病新薬、脳のたんぱく質除去に効果 英誌
*バイオジェン社の新薬について、有害タンパク質の脳への蓄積を防止する効果がみられた
(CNN) 米バイオ医薬バイオジェン社が開発したアルツハイマー病の新薬「アデュカヌマブ」の臨床試験で、初期のアルツハイマー病患者の脳内にある有害なたんぱく質を除去する効果があるとの研究結果がこのほど、英科学誌ネイチャーで発表された。このたんぱく質は、脳の細胞内のプロセスの妨害や、神経細胞間の連絡遮断に大きな役割を果たしている。
高齢者の脳にはたいてい、このたんぱく質が蓄積されているものだが、アルツハイマー病の患者では非常に多い傾向があることが知られている。現在、アルツハイマー病の認知症状を緩和する薬はあるが、根治する薬はない。
今回の試験の主な目的は脳に及ぼす効果を見きわめることではなく、安全性について調べることだった。ところが、新薬の投与を受けた患者の一部では、偽薬を投与された患者に比べて症状が軽減された。
この研究では165人の患者を2つのグループに分け、月に1回のペースで片方のグループにはアデュカヌマブを、もう1つのグループには偽薬を54週間にわたって投与した。
患者の脳をスキャンして調べたところ、アデュカヌマブを投与されたグループでは、投与量にかかわらず有害なたんぱく質の減少がみられた。また、減少が最も多かったのは、アデュカヌマブの投与量が最も多かったグループだった。

ただし、今回の試験では被験者40人が治療を中断している。ほとんどのケースでは脳のたんぱく質の除去に伴う脳浮腫などの副作用が原因だった。新薬の効果を実証するには、もっと大きな規模の臨床試験が必要となると専門家は指摘している。2016.09.01 Thu posted at 17:08 JST

最古の生命活動の跡発見

最古の生命活動の跡発見 37億年前、グリーンランド
*グリーンランド西部イスアの岩の中から発見された、37億年前の生命活動の痕跡とみられる構造(中央にある三角形)(オーストラリアのウーロンゴン大提供・共同)  
 【ワシントン共同】グリーンランド西部イスアで、37億年前の岩の中に生物の活動の跡とみられる構造を発見したと、オーストラリアのウーロンゴン大などのチームが31日付の英科学誌ネイチャー電子版に発表した。最古の生命活動の痕跡とみられる。
 最古の化石は、オーストラリア西部ピルバラ地区の35億年前の岩から発見されているが、これより2億年ほど前に地球上に生命が誕生していたことになる。46億年前に地球ができた後、最初に生命が生まれたのがいつかはまだ不明。

 発見したのは、光合成を行うシアノバクテリアという細菌の活動でできる「ストロマトライト」と呼ばれる岩の痕跡。  201691 0202分 東京

2016年8月31日水曜日

94光年のかなたに高度な文明?

94光年のかなたに高度な文明? 「非常に強い信号」を観測
(CNN) ロシアの天体望遠鏡が最近、地球から約94光年離れた恒星系で発信されたとみられる「非常に強い信号」をとらえていたことが分かり、地球外知的生命体の探査活動(SETI)に参加する天文学者らが大きな関心を寄せている。
信号は昨年5月に観測された。太陽とよく似た「HD164595」という恒星の近くから届いたとされる。研究者の国際チームが発信源の特定を急いでいる。
地球外生命体との交信を目的とするNPO(非営利組織)「METIインターナショナル」のトップ、ダグラス・バコッチ氏は「興味深い信号だ」と指摘。「人工的な信号だとしたら、その強さからみて明らかに、人類を超える技術を持った文明が発したことになる」と話す。
宇宙旅行の実現に向けて研究を進める「タウ・ゼロ財団」のポール・ギルスター氏も同様に、高度な文明からの信号だった可能性を指摘する。
ロシアの天文学者、ニコライ・カルダシェフ氏が文明の進歩のレベルを測る指標として提示した「カルダシェフの尺度」によると、信号を発した文明は、全3段階中の第2段階に達している可能性が高い。
人類は現在、自分の住む惑星である地球から得られるエネルギーを全て活用できる「第1段階」付近に位置している。第2段階は、その惑星を含む恒星系の全エネルギーを活用できるレベルと定義される。

一方、地球外生命体の発見をめざす「SETI研究所」の上級研究員、セス・ショスタック氏は、こうした文明が存在するとした場合、「どうして我々の太陽系へ向けて強い信号を送ろうとしたのか、その理由は理解しがたい」と話す。発信源とされる恒星系は地球から遠く離れていることから、「地球の文明を示すテレビやレーダーの存在も把握されていないはずだ」という。
バコッチ氏によると、METIインターナショナルは今後、パナマの天文台からレーザーを使ってこの恒星を観測する予定。SETI研究所も米カリフォルニア州の電波望遠鏡網を使って恒星を調べている。
信号の観測は今のところ1回限りで、その後確認されていない。このためバコッチ氏は、技術的な干渉か、あるいは惑星などの背後から来る信号が重力で増幅される現象だった可能性もあるとの見方を示す。

ショスタック氏も「信号が地球外文明から送られたと考えることももちろんできる」としたうえで、現段階で言えるのは「興味深い」という感想にとどまると話している。2016.08.30 Tue posted at 18:53 JST

猿人「ルーシー」の300万年前の死因が明らかに

猿人「ルーシー」の300万年前の死因が明らかに「彼女の人間味がより増してきた」
エチオピアで発見され、「ルーシー」と名付けられた約318万年前のアファール猿人の化石人骨調査をテキサス大学の研究グループが、300万年以上前に生存し亡くなった人類の先祖の標本の代表である「ルーシー」の死因を明らかにしたと発表した。

ルーシーは、小さな二足歩行の動物であり、学名「アウストラロピテクス・アファレンシス」で、絶滅種に属している小柄な二足歩行の猿人の化石だ。アリゾナ州立大学ヒト起源研究所のウェブサイトによると、ルーシーは1974年にエチオピアで発見され、その名前はビートルズの「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズ」に由来している。
雑誌「ネイチャー」に829日発表された論文によると、研究グループはルーシーの右上腕骨(肩から肘まで通る長い骨)に骨折の跡があり、これは彼女が「地面に向かって垂直に落下したとき、腕を骨折した結果」亡くなったことを示しているという。 つまり、かなり高い場所から落下したとみられる。

■ ルーシーはどのように木から落ちたのか
研究グループが長い間議論してきたのは、ルーシーが木の上と地上の両方で過ごしていたのかどうか。ネイチャーに発表した論文の主要執筆者が述べているポイントだ。
「皮肉なのは、樹上生活が人類の進化上どのような役割を果たしてきたのかという議論の中心にある化石が、おそらく木から落ちた負傷により死亡したということだ」と、テキサス大学オースティン校の人類学と地質学のジョン・カッペルマン教授は述べた。

*ルーシーが木の上から落下した時の予想図
ルーシーはどのように木から落ちたのか。研究グループの仮説によると、彼女はまず足で着地し、体は右側に向けて前に投げ出されたという。

この研究において、カッペルマン教授と地質学のリチャード・ケッチャム教授はCTスキャナーを使用し、ルーシーの化石化した骨格を35000以上の断面にスキャンし、記録を作成した。
断面の解析から、ルーシーの右上腕骨の端に見受けられる鋭いはっきりとした損傷が明らかになった。研究グループが言うように、落下したけが人に見られる骨の損傷と似ている。

テキサス大の研究グループは、これらと彼女の骨格の他の損傷からみて、ルーシーはおよそ3フィート6インチ(114cm)の身長、60ポンド(27kg)の体重だと推定した。
研究グループは、ルーシーが高さ約12メートルの木から落下したと考察。地面に落ちた時の速さは時速約11メートルだったと推定した。まず、足から落ちて自分をかばうために腕を使ったが、衝撃の強さが大きすぎたために助からなかったと考えている。

この分析は理にかなっているが、少しむごい。しかし、他の科学者たちは疑念を抱いている。
アフリカのケープタウン大学で考古学者を務めるレベッカ・アッカーマン博士はワシントンポストの取材に対し、「今回の研究ではルーシーの骨折に対する他の説を覆すまでには至らない」と語った。しかし、アッカーマン博士は調査結果自体を否定していない。

「個人的には、科学的に見ても歴史的に見ても、人類の進化を理解する上で重要な役割を果たしたルーシーに関する興味深い話を教えてくれる、いい研究だと思います」と、アッカーマン博士は語った。

■ 懐疑的な見方も
しかし、新しい説をより厳しく評価する研究者もいる。
「説明のつく骨折の原因は数え切れないほどある」と、ルーシーを発見した研究者の1人で、人類起源研究所長のドナルド・C・ヨハンソン博士はガーディアン紙に語った。「ルーシーが木から落ちたという説は、立証も反証もできない、ただその通りの話なので確証がありません」
ヨハンソン博士はニューヨークタイムズに、「ルーシーの骨折は死後かなり経過してから起こった可能性が高く、象の骨やカバの肋骨も似たような損傷を起こすし、そのような動物が木から落ちる可能性は低い」と述べた。

これに対し、カッぺルマン教授はハフポストUS版に「新たな研究では骨折のごく一部分に焦点を当てており、それは骨と骨の間に起こる高エネルギーの衝撃と一致し、さらには骨化化石によく見られる類の損傷とは異なっている」「これらの骨折は死戦期(死亡時あるいはその近辺)に起こったと考えられます」と説明した。

いずれにせよ、ルーシーの化石に新しい視点をもたらしたことは、彼女をより人間らしくした。少なくともカップルマン教授はそう考えている。教授はハフポストUS版に次のように語った。

「我々の仮説では、ルーシーの上腕の骨折は落下の衝撃を和らげようと、死に物狂いで両腕を伸ばした時に起こったものです。我々も、転ぶ時には同じようなことをしています。彼女の死因がわかった瞬間、そして彼女が経験したことをそのまま同じように体験できた瞬間、感情移入してしまったのです。彼女の死因がわかって、人間味が増したのです」 20160830 1610 JST  The Huffington Post

2016年8月25日木曜日

地球に似た惑星発見

地球に似た惑星発見、水も存在か 太陽系から4光年先
*新たに発見された惑星プロキシマbの地表イメージ。岩石で覆われ、水が存在する可能性がある。太陽系から約4光年先にあるプロキシマ・ケンタウリ(奥)を周回している

 太陽系に最も近い恒星の周りで、地球に似た惑星が見つかった。岩石でできており、水が存在する可能性もあるという。英ロンドン大などの研究者らが25日付の英科学誌ネイチャーに発表する。
 8カ国による研究グループはチリにある天文台などで、地球から約4光年離れた「プロキシマ・ケンタウリ」という恒星を周回する惑星を新たに発見。「プロキシマb」と名付けた。重さは地球の1・3倍以上で、約11日で公転している。

 研究者らによると、この星では水分が生まれ、現在も残っている可能性がある。地表温度は液体の水が存在できる範囲とみられる。太陽系外で水がある可能性を持つ星としては、今回の惑星が太陽系に最も近いという。ただ、恒星からの距離が近く、X線が地球の400倍にあたることもわかっている。

 研究者は「次に目指すのは、大気や生命が存在するかどうかの調査だ」としている。(山崎啓介)20168250206分 朝日