2008年6月28日土曜日

6年前に書いたものです (1/4)


6年前に同窓会誌用に書いたものです。少し長文ですので4回に分けて紹介します。1回目です。ご笑覧頂ければ有り難く存じます。コメント頂ければなお感謝です。


時の過ぎ行くままに! (1/4) 

XX(同窓会誌名)52号が登場する頃にはもはや旧聞になっているか、果てまた、本号でも多くの方が言及しているかも知れませんが、何はともあれ今この話題に触れないわけにはいかない気分であります。本稿をしたためている時点は、2002年ノーベル賞の発表があり日本人の物理学(小柴昌俊東大名誉教授)と化学(島津製作所・田中耕一氏)分野でのダブル受賞と、3年連続の化学賞に沸いています。稀に見る素晴らしい出来事で、もろ手を挙げて慶びたい誠にめでたい快挙であります。このところ落日の感深い日本経済金融問題等とかく明るい話題が少ないなか、久し振りにニッポン国じゅうが元気を取り戻す良いニュースです。

大変興味深いことに奇しくも、両者は極めて対照的・対極的な事例としても印象的でした。心密やかに大きな衝撃を受けた大先生方が多かったのかも知れません。意外性ゆえか若さか人間性ゆえか、とかく後者が脚光を浴び勝ちに見えます。

すなわち、片や当然の理論武装のもとに税金と人脈、人材をふんだんに使い(浜ホト晝間社長が半分はオレにくれと息巻いていたのは、かなりの部分本音だろう)、十数年待ち続けたうえでの大御所リーダー・ゴッドファーザーの受賞であり、関係者一同の安堵感と言うか喜びもひとしおであろう。

ところがもう一方は、どうしたことか再び日本の学界、マスコミはほとんどノーマーク、税金使用度も恐らくゼロ、戸惑いを隠せない学士企業研究者の単独行、真に青天の霹靂とはこのことか。何人かの企業研究者の感想を聞く限り異口同音、誰かがどこかで見ていてくれる、特に若い研究者にはすごく励みになると言って感激していた(積年の思いがあるのかも)――正確を期すため日本特許成立日に遡り、オリジナリティー確認作業をしたとのこと、科学分野ではダントツの信頼と尊敬、そして権威を維持し続けている当該財団の見識の一端を示したものと言えるのでありましょう。

幸いにも、これまで世界各地で開催される生理活性物質関連分野の国際会議に発表・参加する機会を得てきた〈既にストックホルムも訪れ、会場の下見は済ませているのだが??〉。このところ強く感ずるのは、欧米企業からの研究発表内容が質、量ともに際立って高度だと思われる点である。基礎的考察と作用機構を踏まえてターゲットを明確にし、合成、新規評価法の確立、応用への橋渡し、そして、開発段階の部と一連の流れを完結した話が多い。

もとより、各種DBが使え、目標や研究体制の違いが最大要因とは言え、近々に独立行政法人化を迎える大学の研究室や、既に一足早く独法化を果たした我々が属する旧国立研のチンマリとした、一弱小研究室の今後のあり方を問わずにいられないプレッシャーがある。残念ながら、通常そうやすやすと方向性を律するような成果発信に結びつく現状にはない。

日本で弱いとされるトランスレーショナル・リサーチまで考慮すべきなのか?また一般的な感想ではあるが、我らがハラカラの発表は押しなべて、どちらかと言えばデータ開陳に留まるきらいがあり、より広い視野に立って、十分に説得力を持った効果的なプレゼンテーション方法訓練の必要性も痛感している。さらには、「評価、評価――」と叫ばれる昨今ゆえに、大所高所からもきちんとした、正当な評価ができる人材の育成と体制確立も急務であり、ユニークな顔を持った出る杭を早い段階で見つけ出し、引っ張り挙げ、時機を逸することなく支援することがますます重要になっている。


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