2014年11月28日金曜日

iPS細胞による遺伝子治療

iPS細胞による遺伝子治療
 
京都大iPS細胞研究所の堀田秋津助教(遺伝子工学)らのグループは、遺伝子の変異が原因で発症する筋ジストロフィーの患者の皮膚から人工多能性幹細胞(iPS細胞)を作製し、遺伝子を修復することに成功したと発表した。米科学誌「ステム・セル・リポーツ」のオンライン版に、27日掲載される。

 修復した細胞を患者に移植することで症状を改善できる可能性があるといい、iPS細胞を活用した遺伝子治療の実現につながることが期待される。
 堀田助教らは、遺伝子の変異が原因で筋肉が衰弱する「デュシェンヌ型筋ジストロフィー」の患者の皮膚からiPS細胞を作製。このiPS細胞は患者と同じ遺伝子の変異を持つが、狙いを定めたDNA配列を操作できる最先端の技術を使い、遺伝子を修復することに成功した。さらに、修復したiPS細胞を筋細胞に分化させたところ、正常な筋肉と同じようにタンパク質を作ることができたという。
 デュシェンヌ型筋ジストロフィーは、国内に数千人の患者がいる。筋肉が衰弱して手足が動かなくなり、30代までに亡くなるケースが多いという。

 堀田助教は「修復した細胞の移植など課題もあるが将来の遺伝子治療に向けた一歩になる」と話している。2014.11.27 08:45 産経ニュース

南天の願いの井戸

南天の願いの井戸、NGC 3532
 
りゅうこつ座の方向約1300光年先にある明るい散開星団、NGC 3532。チリのアタカマ砂漠北部、標高約2400メートルの高山にあるラ・シヤ天文台のMPG/ESO 2.2メートル望遠鏡で撮影された(1126日公開)。

 井戸の底に願いを込めて投げられた多数のコインのように見えることから「願いの井戸星団(Wishing Well Cluster)」とも呼ばれるNGC 3532は、南半球では肉眼でも観測可能で、18世紀フランスの天文学者ニコラ・ルイ・ド・ラカーユがケープタウンで観測し記載した。


 星団の形成から3億年程度たっていると考えられ、一般の散開星団からすると“中年”の部類に入る。青白く輝いているのは中規模サイズの恒星、オレンジ色に見えるのは大質量星で、エネルギー源の水素を使い果たして赤色巨星となったものだ。これらより質量の小さな星は寿命が長く、黄色から赤色でやや弱い光を放っている。星団NGC 3532は、約400個の恒星から成っている。National Geographic News, November 27, 2014

エウロパの表面画像

木星衛星エウロパ、詳細な表面画像
 
木星の衛星エウロパの高精細画像。NASAの探査機ガリレオが1990年代後半に撮影したアーカイブデータを人間の目に見える状態に近い着色を施し、モザイク合成している(1124日公開)。


 縦横に交差して走る線は、表層の水の氷殻が解けて固まる時にできたと考えられている。青白い部分の氷は純水に比較的近く、赤茶けた色は氷殻の下の海から塩や硫酸などが混じり込んだためと見られる。National Geographic News, November 25, 2014

動物たちの奇妙な嗅覚

動物たちの奇妙な嗅覚
 タコやチョウには人間のような鼻がない。別の方法で、ときには奇妙な方法で、周囲の世界を感じ取っている。ノースカロライナ大学の博士課程を修了した生物学の研究者リンジー・ウォルドロップ(Lindsay Waldrop)氏は、「ほとんどの動物にとって、嗅覚は極めて重要だ」と話す。


◆においをかぐ歯ブラシ
「われわれは鼻でにおいをかぐが、カニも同じことをしている」とウォルドロップ氏は説明する。「ただし、カニの場合、高密度の歯ブラシのような毛を使っている」。
 歯ブラシのような毛が生えているのは、口の近くにある触覚だ。においをかぐときは水中でこの触覚を動かす。

 触角を素早く振り下ろすと密集した毛が開き、水とにおい物質の分子が入り込む。触覚をゆっくり振り上げると毛が閉じ、化学感覚を受容する細胞ににおいが閉じ込められる。こうして周囲にあるもののにおいをかいでいる。
 イギリス王立協会が発行する「Interface」誌で発表された論文によれば、カニはこの感覚器を使って見通しの悪い場所で餌を探したり、交尾の相手を見つけたり、捕食者から身を守ったりしているという。

◆ヘビは舌でにおいをかぐ
 ヘビの場合、鼻はあるものの、はるかに多くの感覚情報を舌で受け取っている。
 ヘビが舌を出して動かすのは、カニと同様、におい物質の分子を捕らえるためだ。舌を引っ込めると、フォーク状の先端が口蓋に開いた2つの穴にぴったり納まり、鋤鼻器(じょびき)またはヤコブソン器官と呼ばれる感覚器に分子が運ばれる。
 フォーク状の舌はちょっとした空間情報も与えてくれる。「このおいしそうなリスは左側にいる」といった情報だ。

◆足で味見
 ハエの場合は唇弁(昆虫の唇にあたる)と附節(足に相当)に化学感覚を受容する毛が生えている。サンドイッチに止まったハエは単にひと休みしているわけではなく、昼食の試食をしているのだ。
 チョウも足で試食するが、理由は別にある。チョウのメスは幼虫が何か食べられるよう、植物の下側に卵を産み付ける。試食の目的は毒のある植物を避けることだ。
 四肢で味見をするのは昆虫だけではない。タコの8本の脚は1800もの吸盤で覆われており、その一つ一つに化学物質の受容体が内蔵されている。

◆全身で味わう
 最も奇妙な方法で、しかも徹底的に周囲の世界を味わっているのはおそらくナマズの仲間イエロー・ブルヘッド(学名Ictalurus natalis)だろう。長いぬるぬるした体全体が1つの舌と言っても過言ではない。

 口の周りに生えた“ひげ”を中心に、頭から尾まで175000以上の味蕾(みらい)が分布している。通常、人間の舌にある味蕾は20008000程度だ。 Jason Bittel, National Geographic News, November 26, 2014

2014年11月24日月曜日

無知の知

無知の知
多数派はいつも間違える(生田耕作)

なるべくおいしく食べ、なるべくおいしく飲み、なるべく快適に暮らし、なるべくあちこち歩き回り、なるべく心地よく眠り、なるべくよい人にめぐり逢うようにしていれば、我々は毎日を悦楽的に過ごせるのだから(松山猛)

失敗はもう一度挑戦する機会にほかならない。しかも、つぎはもっと賢く挑むことができる(フォード)

不思議なことに、アイディアというのはだれかにチャンスの手を差し伸べられるまで、取るに足りない存在でしかない。

ストレートにいうのは野暮だよ(天野祐吉)


無知の知【知ってることといえば、自分は何も知らないということぐらいだ】(ソクラテス)

2014年11月21日金曜日

限りない好奇心

限りない好奇心
過去をより遠くまで振り返れば振り返るほど、未来も遠くまで見渡せるだろう(チャーチル)

自分の研究は、まだ解明されていない真理の大海を前にして、小さな貝殻や美しい小石を取り上げて調べているようなものだ(ダーウィン) 

早急に第一印象を必ず書き留めておきたまえ。いいかね、第一印象というものは霧のように儚い。いったん消えてしまえば、二度と君のもとに戻ってくることはないだろう。しかし、今後、君がこの国で経験するであろう、いかなる異国情緒とくらべても、この第一印象以上に魅惑的なものはないのだ(チェンバレン)

死に臨んだとき、わたしの最後の瞬間を支えてくれるものは、この先になにがあるのかという限りない好奇心だろうね(オットー・ペッテルソン)

日本で暮らすなら、これだけは覚えておこう

日本で暮らすなら、これだけは覚えておこう:
歌舞伎は歌舞伎町ではやっていない
作家とサッカーの違いは大きい

「納豆は平気ですか」と30回は聞かれる
血液型と靴のサイズは調べておけ

日本の「パブ」はパブではない
結婚式には招待されないようにしよう
電車が遅れていると思う前に、君の時計を疑え

こうなれば君は日本で暮らしていける:
電話を切るとき、思わずお辞儀をしてしまう
「お忙しいところすみませんが」と前置きして喋る
ゴミの分別に、異常に執着してしまう

シャツにプリントされたヘンな英語を読まなくなる
英国の友人に納豆や梅干しを食べさせたくなる

マスクをつけた人と笑わずに会話できるようになる
居酒屋で「お通し」が出てくると、ホッとする
お土産に味噌とスルメを持ち帰る

 以上、日本在住英国紙記者ジョイス「ニッポン社会入門」より

人工光合成

東芝 人工光合成、世界最高の変換効率1.5%達成
 東芝は太陽光と二酸化炭素(CO2)などから燃料をつくる次世代技術「人工光合成」で、世界最高の変換効率を達成する材料を開発した。変換効率は1.5%で、実用化に近づいた。火力発電所などが大量に排出するCO2をそのまま利用して、工場や自動車などの燃料が生産できる。同社は2020年をメドに実用化を目指す。
表面に付けた金の触媒で光合成を進める(東芝提供)
 光合成は太陽光で水から酸素を作ったうえ、CO2から糖などのエネルギーを得る植物の働き。温暖化ガスであるCO2を原料にして人工的に燃料が得られる。

 東芝が開発した技術は、半導体と金の触媒を組み合わせた。半導体に太陽光を当てて水から酸素と水素イオンをつくり、触媒でCO2と水素イオンから一酸化炭素(CO)を得る。COを処理すればメタノールなどの燃料が作れるという。太陽光エネルギーを燃料エネルギーに変換する効率は1.5%で植物の藻類に匹敵する。これまではパナソニックの電子材料が0.3%で最高だった。


 実用化には10%の変換効率が必要だが、東芝は改良を進めれば実現できるという。長期間使っても効率を保つよう耐久性も克服する。成果は2428日に兵庫県淡路市で開く人工光合成の国際学会で発表する。2014/11/21 2:00日本経済新聞 

2014年11月18日火曜日

彗星大気から有機物

彗星大気から有機物…「ロゼッタ」着陸機が検出
 
欧州宇宙機関(ESA)の彗星探査機「ロゼッタ」の小型着陸機が降下した彗星で、有機物が検出されたと、小型機を管制するドイツ航空宇宙センターが発表した。
 彗星から吹き出したちりから有機物が見つかった例はあるが、今回は初めて彗星の大気から検出された。彗星は惑星をつくる原材料と考えられており、有機物の種類が分かれば、生命の起源を探る手がかりが得られる可能性がある。

 小型機「フィラエ」は13日未明に「チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星」に着陸したが、15日に内蔵電池が切れて休眠状態になった。しかし、この間に地表や大気の初期観測は終えており、ロゼッタ経由でデータを地球に送信した。解析の結果、彗星の地表付近にわずかに存在する濃度の薄い大気から有機物が検出された。センターで有機物の種類を分析している。


 過去の観測では、米航空宇宙局(NASA)の探査機「スターダスト」が2006年に持ち帰った「ビルト2彗星」のちりから、アミノ酸が見つかっている。20141118 2029分 読売

2014年11月17日月曜日

「頭を悪くする」ウイルス

ヒトに感染し「頭を悪くする」ウイルス、発見される
 
ジョンズ・ホプキンズ大学医学部等の研究者チームが、通常は藻に感染するウイルスが、人間やマウスの脳に感染する場合があることを発見した。感染すると、有意で「認知能力が低下する」ことも明らかになった。

PNAS誌に発表された研究論文によると、まったく別の研究(精神疾患に影響を与えるウイルスの研究)で人間の喉に存在する微生物を調べていた際に、偶然にこのウイルスを発見した。
健康な被験者の咽頭から発見されたDNAを調査したところ、通常は緑藻に感染するウイルス「ATCV-1」のDNAと一致した。研究チームが発見したこの藻類ウイルスは、これまで人間には害を及ぼさないと考えられていた。ところがこのウイルスは、人間の認知能力、たとえば空間認識や視覚処理に関する能力に影響を与えることが明らかになった。

研究チームが被験者92人の咽頭を調べたところ、44%の人からATCV-1ウイルスが見つかった。そして、ウイルスが見つかった被験者は、見つからなかった被験者に比べ、空間認識や視覚処理を評価するテストの成績が低かった(差は10%ほどで、それほど大きいものではないが、有意な差だった。影響を及ぼしそうな喫煙、学力、収入、性別、出身地、人種等の因子では有意な差は無かったという)。
この研究結果から、人間の身体には無害でも、認知能力を低下させるウイルスが存在することが明らかになった。ただし、ATCV-1ウイルスが人間に感染する経路はまだはっきりしておらず、緑藻の生える淡水や湖などを避ける必要はないとのことだ。

※リリース等によれば、感染させたマウスは迷路を解くのに時間がかかったり、新しい入り口などが設置されても気付かない、といった影響が見られた。感染したマウスを調べたところ、このウイルスは、(記憶や空間認識と関連した)海馬における遺伝子の発現に影響を与えることが明らかになったという。2014.11.16 16:30 産経ニュース

2014年11月11日火曜日

巨大銀河の衝突

巨大銀河の衝突、超大型望遠鏡が撮影
 
ヨーロッパ南天天文台(ESO)の超大型望遠鏡VLTに設置された計測機器が、巨大な銀河衝突の、これまでで最も鮮明な画像を捉えた。ESO 137-001という銀河が、巨大な銀河団(左下)に突入する模様が撮影されている。

 この衝突により、ESO 137-001からガスが筋状に噴出しているのがわかる。明るい青色の筋は、観測者がいる地球の方向に動いているガス、赤い筋は地球から離れる方向に動いているガスだ。
 左側に見える白い渦巻き状の物体は、ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した銀河団の画像を、ESOが撮影した画像に重ね合わせたもの。Jane J. Lee, National Geographic News, November 11, 2014


火星に開いた2つの穴

火星に開いた2つの穴、キュリオシティ
 
NASAの火星探査車キュリオシティが火星のシャープ山のふもとに2つの穴を開けた模様が確認された。これはおそらく史上最も多額の費用がかかった掘削作業と言えるだろう。

 この試験的な掘削により、火星上空からの観測による、この一帯の鉱物組成に関する推定が正しかったことが確認された。キュリオシティがこれまで分析した岩石や土壌と比べても、赤鉄鉱の含有率が最も高かったのだ。

 キュリオシティ・チームでは今後の調査目標としている露出した岩石から、かつて火星に生物が生息可能な状況が広く存在していたかどうかが判明するはずだと考えているが、今回の分析結果はこうした推測を改めて裏付けるものだ。それゆえ、今回キュリオシティが穴を開けた平たい岩は、「コンフィデンス・ヒルズ(自信の丘)」と名付けられている。Jane J. Lee, National Geographic News, November 11, 2014

魚竜の祖先、水陸両生の化石を発見

魚竜の祖先、水陸両生の化石を発見
 
恐竜時代の海生爬虫類の新種が中国で発掘された。幻の存在だった水陸両生の“海の怪物”だ。
 5日に発表されたこの新種は魚竜の進化の大きな穴を埋める存在だ。魚竜はイルカに似た捕食動物で、約2億年 ~14500万年前のジュラ紀の海で繁栄した。大きいものは全長20メートルに達する。
 魚竜が陸生から海生に進化したことはすでに知られていた。陸に暮らす祖先の化石が発見されているためだ。 海に暮らす魚竜は泳ぎが速く、“海の怪物”という愛称を持つ。

 そのため、古生物学者たちは陸生と海生の間を埋める種が存在するに違いないと考えてきた。例えば、クジラ や同じく古代の海生爬虫類である首長竜も陸生から海生へと進化しており、それを証明する水陸両生の種の化石 が発掘されている。
 そして最近、中国、安徽省で発掘作業を行う研究チームが探し求めていたものをついに見つけ出した。24800 年前、三畳紀の初期に生きていた全長0.5メートルの動物の化石だ。

Nature」誌に発表された研究論文によれば、カートリンカス・レンティカーパス(Cartorhynchus lenticarpus)と名付けられたこの生き物は短いくちばしと重い体、異常に大きな水かきを持ち、陸と海の両方に 適しているという。
 先史時代の海生爬虫類の専門家で、今回の研究を率いたカリフォルニア大学デービス校の藻谷亮介氏は、「魚 竜の進化の記録はなぜか水陸両生の動物が抜け落ちていた。この種はその穴にぴったりはまる存在だ」と説明す る。

◆陸に上がった魚
 カートリンカスの水かきと手首は柔らかく、アザラシのように陸上をはうことができる形状だ。また、ずんぐ りした肢とがっしりした肋骨は沿岸の荒波をものともしない力強い泳ぎを可能にする。
 とても短いくちばしは陸生の祖先から受け継いだもので、後の時代の魚竜が持つ長いくちばしとは大きく異な る。魚竜は長いくちばしのおかげで、魚やイカといった動きの速い獲物を捕まえることができたと、藻谷氏は説 明する。

 体形や大きな水かきを見る限り、カートリンカスの泳ぎは決して速くなかったと、藻谷氏は推測している。当 時は熱帯の群島だったあの場所で、海底に暮らすエビなどを探し回っていた可能性が高いという。
 さらに、頭蓋骨の構造は、軟体動物を吸い込むように食べていたことを示唆している。周囲から獲物となる動 物の化石が見つからなかったことも、化石にならない軟体動物が餌だったという説を裏付けている。

◆大量絶滅からの復活
 藻谷氏らが発見した化石は、二畳紀から三畳紀にかけての大量絶滅の後、魚竜に何が起きたかのヒントも与え てくれる。25200万年前、海洋生物種の90%以上が姿を消した。 この壊滅的な出来事の後、動植物が復活するまでにどれくらいかかったかは長年の疑問だった。


 カートリンカスの化石が発見されたことで、後に世界中に拡大した魚竜が中国で復活を遂げるまでに400万年を 要したことがはっきりした。Christine Dell'Amore, National Geographic News, November 6, 2014

青い瞳の系外惑星

青い瞳の系外惑星
 
NASA/ESAのハッブル宇宙望遠鏡が、太陽系外惑星が誕生した後の光景を捉えた。恒星の周囲を円盤状に取り囲むデブリの雲が見える。

 これらの雲は、惑星が形成される時期の後に、惑星になれなかった小惑星や彗星、小型の天体が衝突することで発生すると考えられている。ただし、この写真で青い目のように見える円盤状のデブリははっきりとした特徴を持ち、車輪のスポーク状やさざ波、くぼみのような模様が等間隔に入っている点が、天文学者を驚かせている。ハッブルの観察によって明らかになった、こうした構造や複雑な模様から、この円盤状のデブリの形成には見えない力が働いていることがうかがえる。


 研究者たちは、中央の恒星の周りをめぐる見えない太陽系外惑星の重力が、円盤状のデブリに影響を及ぼし、このような形を作っているのではないかと推測している。もう1つの可能性としては、中央にある恒星が恒星間空間を移動しており、その中でデブリの重力場が変化を起こしているとも考えられる。Jane J. Lee, National Geographic News, November 10, 2014

2014年11月7日金曜日

惑星誕生の現場

惑星誕生の現場、捉えた…世界最高性能の望遠鏡
 
若い恒星の周りで惑星が作られる様子を、日米欧が共同でチリに建設した世界最高性能の電波望遠鏡「ALMA(アルマ)」が捉えたと、国立天文台が6日、発表した。

 恒星の周りに広がるちりの円盤は、従来の望遠鏡ではぼんやりとしか見えなかったが、アルマの観測データを画像化した結果、円盤の内部の形まで鮮明に分かり、多数の暗い隙間が見えた。それぞれの隙間では、もともとあったちりが集まり、惑星を作っているとみられている。


 この恒星は、地球から450光年先にある「おうし座HL星」で、誕生後100万年とみられる。茨城大の百瀬宗武教授(電波天文学)は「惑星ができるまで短くても数百万年かかるという従来の理論を覆すかもしれない」と話している。20141107 0909分 読売

2014年11月5日水曜日

火星、クレーターから流れ出た溶岩の謎

火星、クレーターから流れ出た溶岩の謎
 
NASAの火星探査機マーズ・リコナイサンス・オービタが1029日に撮影した火星の衝突クレーター。この画像から、ある謎が浮かび上がってきた。

 エリシウム平原にあるこのクレーター、写真を見るかぎり、どうやら北側の縁(画像左上)から溶岩が流れ出したようだ。ところが、クレーター内の溶岩層はそこよりはるかに低い位置にある。となると、溶岩はどうやって坂を上り、縁を超えて外に流れ出たのか。


 研究者によると、おそらく最初に北側から溶岩がクレーター内に流れ込んで溜まり、ちょうど焼き型に入れたケーキ生地が膨らむように、徐々に膨張していったのではないかということだ。高さが上昇するに連れ、一部の溶岩が再び北側に溢れ出す。やがて温度が下がると、クレーターの溶岩ドームはスフレがしぼむのと同じように収縮し、後には跡のついたクレーターだけが謎として残されたというわけだ。 Dan Vergano,  National Geographic News November 5, 2014

2014年11月1日土曜日

地球の水の起源

地球の水の起源、誕生当時から存在?
 
アポロ宇宙飛行士から「ブルーマーブル」と称えられた、青く美しい地球。1030日に発表された古代隕石の最新研究によると、その壮麗な姿の源である「水」は地球の誕生当時から存在していたという。

 地球の海は、いつどこから来たのだろうか? アメリカ、マサチューセッツ州ウッズホールにあるウッズホール海洋研究所(WHOI)の研究チームは、従来の説よりもかなり早い時期に地球に到来していた可能性を発見した。
 それは約46億年前、内太陽系のすべての天体がまだ形成中の時代だ。地球の水の起源を何億年も巻き戻すことになる。

 従来の仮説は次のような内容だ。形成当時の地球は乾燥しており、その後、高エネルギーの衝突によって表面は溶けた状態になった。水がもたらされたのは、水分を多量に含む彗星や小惑星の衝突が頻繁に起こったかなり後の時代…。 「地球の形成時に存在した水分子は、蒸発または宇宙に吹き飛ばされたという仮説がある。現在、海として表面を覆う水は、何億年も後にやって来たと考えられていた」と語る。

◆古代の隕石に着目
 しかし確証は得られていない。水が到来した正確な時期を突き止めるため、研究チームは太陽系の歴史の中で異なる時期に形成された複数の隕石の分析に取りかかった。 最古の隕石は炭素質コンドライトで、どの惑星よりも古く、太陽系創世当時の物質に関する手掛かりが含まれている。

 チームは、大型の小惑星ベスタに由来するとされる隕石にも注目。ベスタは太陽系の誕生から約1400万年後に地球と同じ地域で形成されたという。「共に原始的な隕石で、太陽系と同じ組成を多く留めている。中に大量の水を含み、以前から地球の水の起源として有力候補だった」と話す。

◆水の起源は?
 ベスタ由来の隕石の化学組成は、炭素質コンドライトや地球上で見つかる岩石と同じだった。つまり、炭素質コンドライトが水の共通の起源である可能性が高い。 「地球上の水は、これらの岩石と同時に降着した可能性が高い。つまり、形成当時から表面に水を湛えた惑星だったことになる」。
現在の地球の70%を覆う水の一部が後から到来したという可能性を否定しているわけではない。従来の説よりも早い時期から、既に生命の誕生に十分な水が存在していたという点を強調している。

「初期の内太陽系に水が存在していたとすると、地球型惑星(水星、金星、火星)にも可能性がある。現在は厳しい環境だが、初期には水分が多く、生命が進化していたのかもしれない」とニールセン氏は説明する。

◆小惑星ベスタを観測してみよう
 2番目に大きな小惑星ベスタは、火星と木星の間の小惑星帯で太陽を巡っており、古びた表面には多数のクレーターが存在する。 明るさは7.8等級で、双眼鏡で眼を凝らすとぼんやりとした星に似た形が見える。日没後の南西の空低く、明るいオレンジ色の恒星アンタレスの約6度上に姿を表す。

 今回の研究結果は、1031日発行の「Science」誌に載されている。 Andrew Fazekas  for National Geographic News  October 31, 2014