2014年9月13日土曜日

iPS 世界初移植

iPS 世界初移植 目の難病 70代女性に 理研チーム
 
理化学研究所発生・再生科学総合研究センターと先端医療センター病院(神戸市)は十二日、人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作った目の網膜細胞を人に移植する世界初の手術を実施した。京都大の山中伸弥教授がマウスで初めて作製してから八年。細胞が副作用なく定着し安全性が確認されれば、STAP細胞問題で停滞ムードが漂う日本の再生医療は、研究段階から実際の治療へ大きく前進する。
 患者は網膜で重要な役割を果たす細胞に異常が起こって視力が低下し、失明の恐れがある難病「加齢黄斑変性」を患う兵庫県在住の七十代の女性。昨年八月、理研が開始した臨床研究の患者募集に応じた。

 iPS細胞は体中の細胞に変化でき、再生医療で最も有望視されているが、体内でがん細胞などに変化することがないとは言い切れない。初臨床の対象として、がんになりにくい上、治療する範囲が狭いため必要とするiPS細胞が少なくて済む目の細胞が選ばれた。今後四年間は検査を続けて異常がないかを確認する。
 理研の高橋政代プロジェクトリーダーが中心となり女性から昨年十一月に腕の皮膚の細胞を採取。さまざまな細胞に変化できるiPS細胞を作製し、網膜の細胞に変化させた。今月完成した移植細胞はシート状で縦一・三ミリ、横三ミリに約五万個の細胞を含んでいる。
 手術は先端医療センター病院で午後二時二十分に始まり、二時間後に無事終了した。右目のみで実施し、眼球に直径一ミリ程度の穴を開けて病気の原因となっている網膜色素上皮という細胞を取り除き、細胞シートを入れた。
 これまで女性は薬剤を注射する対症療法を十回以上繰り返したが、悪化を続けていた。今回の移植はiPS細胞の安全性確認に重点を置いており、視力の大幅な回復は見込めないが、症状の進行を止められる可能性があるという。
 手術後に会見した高橋リーダーは「皆さんが治療できるようになって初めて治療と呼べる。十年以上かかると思うが、前向きに進んでいきたい」と語った。

◆努力のたまもの敬意
<京都大iPS細胞研究所の山中伸弥教授(52)の話> 人のiPS細胞ができて七年という短い時間で大きな一歩を踏み出せたのは、これまでの努力のたまもので、敬意を表する。担当した移植細胞の品質の解析では、リスクをこれ以上小さくできないところまで小さくした。実際の患者でどうなるかは臨床研究をしなければ分からず、これからが本番だ。


<加齢黄斑変性> 黄斑は網膜の中心で、物を見るのに最も重要な部分。光を受け取る視細胞などの神経細胞と、その土台で視細胞に栄養を送る色素上皮細胞からなる。加齢黄斑変性は高齢者に多く、色素上皮細胞に老廃物がたまって異常な血管ができ、視力が低下したりゆがんで見える。現在は注射で新生血管を抑える対症療法しかない。日本でも高齢化の進行で患者が増えており、現在の患者数は推計70万人。2014913 0700分(東京新聞)

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