こんな研究をやっています2/4
~アルツハイマー症への貢献と体内宅急便を目指して~
これは昨年xx大学薬学部「公開講座」の際に用意した講演要旨です。4回に分けて掲載します。2回目です。
そこで我々は先ずAbを構成するアミノ酸の並びのうち、どの部分が凝集に関係するのかを蛍光分析法により調べました。するとAbの16~20残基に相当するLysLeuValPhePhe (KLVFF) 配列同士の結合が顕著にあらわれました。
Abの脳内発現・凝集がAD発症のおよそ2-30年前から始まっていると言われることなどを考慮し、凝集を阻害する薬剤、または線維化したAbの溶解や分解を促進する薬剤の開発に着手しました。
Ab凝集体が主に疎水性相互作用により形成されることからAb凝集体に水和殻を導入できれば凝集を阻害、もしくは凝集体を分解できるのではないかと考えました (図1) 。 そこで、このKLVFF配列を分子認識部位とし、これに親水性化合物や電荷を持つアミノ酸を結合させた凝集阻害剤を設計し、合成しました。
この戦略に基づいた一連の化合物は目論み通りAb凝集に対し顕著な阻害作用を発揮し、さらにAbによる細胞毒性を軽減することを見出しました。
より優れた効果を持つ化合物の設計・開発を目指し、関連研究を鋭意続行しています。
現在わが国でADに臨床適用されている薬剤は、基本的にアセチルコリンエステラーゼ阻害薬であるDonepezilのみであると言えます。
AD患者の脳では、神経細胞の変性・脱落に伴い、多作動系にわたる神経伝達機能が障害されています。そのなかでも特にアセチルコリン系神経の障害が強いので、アセチルコリンを分解する酵素の働きを阻害することにより脳内アセチルコリン濃度を高めることを目的としているわけです。
この薬剤は副作用という面では安全でありますが、神経変性の進行と共に効果は減弱してくるため、効果面で限界があります。また作用機構の面から根本治療薬とはなり得ないので、他の薬剤の開発が望まれています。
ワクチン療法や、APP(アミロイド前駆体タンパク質)からのAbの切り出しを阻害する薬剤、また、Abの凝集を抑制する薬剤などが盛んに研究されています。
そのようななか、我々が合成した上記阻害剤化合物群は、ひと度形成されたAb凝集体・線維体を解消する性質を持つことが示されており、ADの根本治療薬開発の可能性を秘めています。現在病態小動物を用いる活性テストへと研究を展開中であります(共同研究)。
(2007.10記)
3回目につづく
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