飲み込める超小型カプセルで健康管理が可能に?
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遠い未来に実現するだろうと考えられてきた技術が現実味を帯びてきた。米マサチューセッツ工科大学(MIT)のグループは、体内で健康データをモニタリングできるセンサーを搭載した経口摂取可能なカプセルを開発したと「Advanced Materials Technologies」12月13日号に発表した。飲み込んだカプセルのセンサーで測定したデータは、ブルートゥース・ワイヤレスの技術を用いて、スマートフォンなどでモニタリングできるという。
研究グループによれば、この超小型カプセルを飲み込めば、薬剤を体内に運んだり、感染やアレルギー反応といった胃内の状況の変化を検知したりすることも可能だ。異常が検知されると薬剤が放出される仕組みになっている。
研究を主導したMITの元研究員で現在は米ユタ大学に所属するYong Lin Kong氏は「胃の中にとどまる期間を調整でき、経口摂取可能な電子機器の開発」を最終的な目標として掲げている。将来的には、この3Dプリントを用いて作成されるカプセルが、誰でも利用できる個別化された診断法や治療法になるのではないかと展望する。
このデバイスは、飲み込む際には一般的なひし形の錠剤に入った状態だが、胃内に到達するとセンサー機能を搭載したアームが開き、Y字型に変化する。アームの一つには薬剤を格納できるスペースがあり、ここから数日間にわたって薬剤が徐々に放出される。同時に、デバイスのセンサーで心拍数や呼吸レベル、体温などのモニタリングも可能で、データはスマートフォンにも送信できる。ただし、Kong氏によれば、セキュリティ上の問題からデータを受信できるのは腕の長さの範囲にとどまるようになっているという。
現時点ではカプセルは小さなバッテリーで作動するが、「将来的には電源をデバイスから離してリモート(遠隔)の電源としたり、胃酸から得たエネルギーを利用できる可能性もある」とKong氏らは付け加えている。なお、現在このデバイスをブタに使用する試験が進行中で、ヒトを対象とした臨床試験は2年以内に実施される見込みだという。
研究には関与していない、米レノックス・ヒル病院の消化器専門医であるDavid Robbins氏は「このデバイスは胃酸の中に数週間にわたりとどまっても腐食されないばかりか、正確な用量の薬剤を投与することもでき、全ての操作がスマートフォンで可能だ」と称賛する。さらに、「薬剤を投与するだけでなく、消化管の鏡視下手術にも活用できる可能性もある」と期待を示している。
MITのグループも、このテクノロジーにはさまざまな用途が考えられると強調している。例えば、厳格な服薬管理が求められるHIV感染者などでは必要に応じて薬剤を放出するこのデバイスが役立つ一方、化学療法を受けている患者や免疫抑制薬を服用している患者などの高リスク患者にこのデバイスを用いることで、感染を早期に察知することができるとしている。2019/01/08 ケアネット