2019年6月29日土曜日

月面着陸から50年、月に残る最も心を打つ記念品は


月面着陸から50年、月に残る最も心を打つ記念品は
持ち帰ったのは382キロの「月の石」


記憶が蘇ってきます。テレビの生中継は、研究室セミナーの時間帯と重なった。我々“悪童“はセミナーをボイコットしTVにかじりついていた。結局話の分かる教授の計らいで、人類の月面一歩の踏み出しを皆で確認するすることができたのでした。鮮明に蘇ってきます。


*月面で採取された玄武岩。「15016」の試料番号が付けられ、窒素ガスを充塡したステンレス容器の中で保管されている。NASA JOHNSON SPACE CENTER

 いまからちょうど50年前、1969年の7月に史上初めて人類が月面を歩いた。ライト兄弟の初飛行からわずか66年後に実現したアポロ11号の成功は、人類の勇気と創造性を遺憾なく示すものだった。現在、月に再び目が向けられている。今後はいかに科学的挑戦を経済活動につなげるかが課題になるだろう。

 人類で初めて宇宙を旅したのは、軍人たちだ。だが初期の宇宙飛行に携わったのは男性だけでも、人類だけでもなかった。ショウジョウバエやサル、イヌ、ウサギ、ネズミなどが、人類に先立って宇宙を飛んでいた。
 19614月に宇宙飛行士のユーリ・ガガーリンが人類初の宇宙飛行を行う3年以上も前、ソ連がイヌを打ち上げたことはよく知られている。そのイヌは初めて地球を周回した動物となったが、飛行中に命を落とした。

 女性も先駆者の列に加わった。そのなかには、数学者のキャサリン・ジョンソンのように舞台裏を支えた人もいる。1962年にジョン・グレンが地球を周回できたのは、彼女が飛行軌道を細かく手計算したからだ。ロシア人のワレンチナ・テレシコワは、1963年に女性として初めて軌道上を周回。米国人女性として初めてサリー・ライドが宇宙に到達したのは、その20年後のことだった。

人類が月に残してきたもの
 米航空宇宙局(NASA)は月面着陸という格好の機会を最大限に生かしたいと、着陸地点を選んだ。1969年から72年にかけて、アポロは月面の6地点に着陸。これらの地点はそれぞれ異なる科学的な目標に沿って選ばれたものだったが、いずれも月の表側だったアポロの乗組員たちは4年間に重さ382キロほどの月の石を持ち帰った。

*しかし、最も意味深い記念品は、宇宙から撮影された地球の姿だろう。アポロ8号に搭乗したウィリアム・アンダースは、1968年のクリスマスイブに象徴的な写真を撮った。それはクレーターだらけの月の地平線の向こうで、青い地球が暗闇にぽっかりと浮かぶ光景「地球の出」だ。

 飛行士たちはさまざまな品を宇宙へ持っていってもいる。ジェミニ3号のジョン・ヤングがコンビーフ・サンドイッチをこっそり機内に持ち込んで、同乗者のガス・グリソムと分け合ったことは有名だ。
 アポロ11号のバズ・オルドリンはワインとパンと聖杯を持っていき、月面で聖餐式を行った。アポロ14号のアラン・シェパードは6番アイアンのヘッドを持参し、サンプル採取用の道具に取り付けて月面でゴルフボールを打った。そして、アポロ16号のチャールズ・デュークは家族の写真を着陸地点に置いてきた。
 月面に残る最も心を打つ記念品は、アポロ15号のデビッド・スコットが残した小さなアルミニウム製の人形かもしれない。宇宙開発において命を落とした米ソの14人の飛行士を追悼するもので、すぐそばに名前を記したプレートも置かれている。2019.06.28 ナショジオ

2019年6月20日木曜日

ナスカ地上絵、鳥はペリカンとハチドリの仲間


ナスカ地上絵、鳥はペリカンとハチドリの仲間…北大准教授ら特定
*南米ペルーの世界文化遺産「ナスカの地上絵」に描かれた3点の鳥が、ペリカンとハチドリの仲間だと、鳥類形態学による分析で分かった。北海道大の江田真毅准教授(動物考古学)らの研究チームが論文にまとめ、国際的な考古学術誌「ジャーナル・オブ・アルケオロジカル・サイエンス・リポーツ」電子版に20日掲載された。
 地上絵は、ペルー南部の海岸から内陸約50キロ・メートルの砂漠台地にあり、直線や図形を中心に約2000点が確認されている。このうち鳥類は16点あり、江田准教授らが嘴(くちばし)や冠羽、趾(あしゆび)、尾羽などを基に分析した。
 これまで、地元でグアノの鳥(カツオドリ類やウ類など)とされていた地上絵は嘴や突き出た胸から、単に鳥類とされていた絵は冠羽と嘴などから、いずれもカッショクペリカンの仲間であり、ハチドリとされていた絵は長い尾羽や嘴などからユミハシハチドリの仲間と、それぞれ同定した。

 鳥の絵はこれまで考古学と鳥類形態学の隙間にあって誰も同定していなかった。ペリカンもハチドリも砂漠にはいない鳥で、なぜ描かれたのかという謎は依然残る。江田准教授は「鳥の種類が同定されたことで描いた目的を探る手がかりの一つになると思う。周辺遺跡から発掘された鳥の骨も詳しく調べ、謎の解明を進められれば」と話した。
620日(木)1737分 読売新聞

2019年6月18日火曜日

合体する銀河…「最遠」


合体する銀河…「最遠」の131億光年先 電波望遠鏡キャッチ
*地球から131億光年先で合体する二つの銀河の想像図(国立天文台提供)
 地球から131億光年離れた宇宙で2つの銀河が合体している証拠をとらえたと、国立天文台などの研究チームが17日、発表した。宇宙の果てから飛んでくる電波を観測するアルマ望遠鏡(チリ)を用いた成果で、観測された銀河の合体としては最も遠い。

 観測した天体は、ろくぶんぎ座の方向にある「B14-65666」。この天体にある酸素や炭素、小さな粒子(ちり)が放出した電波をキャッチ。天体にある2つの銀河は地球からの距離がほぼ同じと分かった。私たちが住む天の川銀河よりずっと小さいが、約100倍も盛んに星を生んでいることも判明した。
 銀河が衝突、合体すると活発に星が生まれることが知られており、この天体では、隣り合う2つの銀河が合体しつつあるとみられるという。2019.6.18 00:00 産経

2019年6月14日金曜日

月の裏側の地下に謎の超巨大物体が


月の裏側の地下に謎の超巨大物体が、研究
地下300km超に高密度の塊、「とにかく謎だらけ」と研究者

NASAのルナー・リコネサンス・オービターが撮影した月の画像。月の裏側が無数のくぼみで覆われているのがわかる。中央の青い部分は、南極エイトケン盆地。直径約2500キロで、太陽系で知られている限り最古かつ最大の衝突クレーターだ。(PHOTOGRAPH BY NASA/GODDARD
 月の裏側の地下に、何やら巨大な物体が潜んでいるらしい。質量がハワイ島の5倍もある金属の塊のようだという。
 学術誌「Geophysical Research Letters」に最近発表された論文によると、その物体は南極エイトケン盆地の地下300キロよりも深い場所にある。南極エイトケン盆地は、数十億年前、月の表面がまだ高温の溶岩に覆われていたときに、隕石が衝突してできた巨大クレーターだ。月面が完全に冷え固まる少し前に形成されたため、今も痕跡が残っている。

 調査チームは、NASAの月探査機グレイルのデータとルナー・リコネサンス・オービターによる地形図を組み合わせ、クレーターの地殻の厚さとマントルの密度をより詳しく計算した。
 こうして発見された物体は、クレーターの形成と何らかの関りがあるとみられている。論文の筆頭著者で米ベイラー大学のピーター・ジェームズ氏は、古代に衝突した隕石が持っていた金属核の名残ではないかと推測する。物体は直接は見えないが、その影響なのか、クレーターの表面にはほぼ卵型の奇妙なくぼみが確認できる(次ページの写真)。くぼみの底は、周囲よりもさらに800メートル以上も深い。

 NASAゴダード宇宙飛行センターの月地質学者ダニエル・モリアーティ氏は、「大変重要な研究結果です。月の内部で何が起こっているのかを知る手がかりになるでしょう」と話す。
 南極エイトケン・クレーターは、その表面の組成や大きさから、これまでも多くの関心を集めてきた。
 ジェームス氏によると、「今も残るクレーターとしては太陽系で最大」だそうだ。そのうえ、地下に謎の物体が潜んでいるとなると、ますます興味をそそられる。特に、このクレーターとその縁にある南極点は、今後予定されているいくつもの月ミッションで探査機の着陸候補地に挙げられていることもあって、関心は高い。

 この物体を早く研究したくてたまらないという科学者は多い。クレーターを作った巨大隕石の衝突についてだけでなく、月や他の天体がどのように成長するのかを理解する助けにもなるかもしれない。
「私は隕石の衝突モデルを研究しているので、この結果にはとてもわくわくしています」と、米ブラウン大学の惑星科学者ブランドン・ジョンソン氏は言う。「できるなら、私も早く研究を始めたいです」。なお氏は今回の研究に関わっていない。

*月の裏側の地形を示した着色画像。高い部分は明るい色、低い部分は暗い色に塗られている。点線で囲まれた部分が、南極エイトケン盆地の地下に巨大な物質があるとされるところだ。(IMAGE BY NASA/GODDARD SPACE FLIGHT CENTER/UNIVERSITY OF ARIZONA

「マスコン」が見られない
 2011年に打ち上げられた2機のグレイル探査機「エブ」と「フロー」は、1年近く月を周回し、月の重力場の違いを克明に記録した。このデータを使って、これまでで最も解像度の高い重力場地図が作られた。
 この地図は、月面の表面と地下で何が起こっているのかを大まかに示している。高い地形や密度の濃い岩石など、質量の多い場所では重力が強くなる。すると、南極エイトケン盆地には月の他の巨大クレーターとは異なる点があることが明らかになった。

 月の巨大クレーターには、重力が異常に集中しているマスコン(mass concentration)と呼ばれる場所がある。1968年にNASAのジェット推進研究所の科学者らによって発見されたマスコンは、重力地図上にダーツの的のような円形になって現れる。円の中心は重力が強く、それを取り巻く輪の部分は重力が弱い。さらにその外側の輪は、重力が再び強くなっている。隕石が衝突した後、低密度の地殻と高密度のマントルが混じり合うため、このような模様になる。
 ところが、南極エイトケン盆地にはマスコンが見られない。そこで、地下がどうなっているのかを調べようと、重力の働きをより正確に想定したモデルを作成したところ、月の上部マントルに高密度の巨大な物体が居座っていることを突き止めた。

由来は隕石?マグマオーシャン?
 研究チームは、物体の正体に関してふたつの仮説を挙げている。第一は、月がまだマグマの海に覆われていたその昔に、冷却の最終段階で形成された密度の高い酸化物の名残ではないかというもの。だが、それがどうやって、しかも盆地の下に形成されるのか、正確なメカニズムについてはわかっていない。

「なぜ他の場所ではなく、ここにあるのでしょうか」と、ジェームス氏は問う。
 一方、はるか昔に起きた隕石衝突の名残だという説もある。これだけの大きさの盆地をえぐり取った隕石は、相当な大きさだったに違いない。ということは、他の多くの惑星と同様、その内部には硬い金属の核とそれを覆う岩石質の層があっただろう。
 それが月に衝突したとき、衝撃で月面が深くえぐられてお椀形のクレーターが形成され、隕石の金属核が地面深くに潜り込んだ。やがてその上を溶岩が覆い、核は地下に閉じ込められたが、次第に溶けて、今は痕跡がわずかに残っているだけなのではないだろうか。(参考記事:「月面の磁気異常、原因は小惑星衝突?」)
「私ならこちらの説の方に賭けますね」と、ジェームス氏。
 ジョンソン氏も2番目の説に同意して、「確かに、何かがあると確信させる論文です」と話した。「これを読んでいる間中、この研究結果を検証する別の方法や、物体ができた原因を探ろうかとあれこれ考えていました」

ますます興味をそそる研究対象に
 今回の論文ではほかにも、盆地の内縁の境界線が引き直され、クレーターの大きさがこれまで考えられていたよりも約65キロ大きいことが示された。これも、ここを探査機の着陸地点の候補にしているNASAや他の宇宙機関には重要な情報だ。過去のデータを使った地図では、盆地の南に空白部分があった。しかし、今回はより完全なルナー・リコネサンス・オービターとグレイルのデータを使っている。

 全体として、この調査で南極エイトケン盆地への好奇心はますます深まった。
 カナダにあるウェスタン大学惑星科学探査センターのサラ・マズルーイ氏は、研究には参加していないが、「とにかく謎だらけです」とコメントした。この物体の正体が少しでもわかれば、太陽系の他の天体形成についても理解が深まるかもしれないと、期待がかかる。

「太陽系の惑星はどれも、小さな物体が衝突しあって大きくなりました」と、モリアーティ氏。
 地球上では、プレート運動によって地表が常に循環しているため、古い地表はとうの昔に消え去り、地球誕生初期の隕石衝突の記録も残っていない。だが、月には数十億年前の地表が今も残り、南極エイトケン盆地が生まれた経緯も含め、太陽系誕生の頃何が起こっていたかを探るうえで貴重な情報をもたらしてくれる。
 南極エイトケン盆地に関しては、「まだその形成過程がほとんどわかっていません。現在研究はされていますが、とてつもなく広い分野です」と、モリアーティ氏は語った。2019.06.13 ナショジオ